my way of life   作:桜舞

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135話『褒められていいんじゃないか』

「うん、ごめん。あのさ、ユエ。相談なんだけど。僕もうそろそろ、理性崩壊しそうなんだよ。君と繋がりたくて仕方なくなってきてるんだ。あと一年ちょっと、我慢できるかわからない。だから、ごめんユエ。君も我慢してくれると有難い。じゃなきゃ、君を襲ってユーリおじさんに殺されるしか、僕の道はなくなる」

 

少し体を離して彼女を見た。

ユエは僕を見つめながら、驚いた顔をしている。

 

彼女からしたら、僕は少し子供っぽい所もあるし、欲望を口には出すが、本当に手は出さず紳士的に接してくる同世代の男の子、とでも思っていそうだった。

だから、自分が誘惑した所で揺るがないだろうと、全幅の信頼を置いていたはずだ。

 

そういう事は婚姻を結んでから、とは僕もわかってはいる。

でも、もう保ちそうになかった。

だから、彼女にお願いしたのだ。

 

必ず、了承してくれると信じて。

 

「…アオと死に別れるの…絶対に嫌…。でも、キスもダメ?」

 

上目遣いで首を少し傾けながら聞いてくる彼女に、僕は腕の力を少し強めた。

 

我慢しろ、僕。

いくら可愛くても、彼女を組み敷きたくても、我慢だ。

 

「絶対ダメ。君を押し倒す未来しか見えない…ごめん、欲望に弱くて。だって、君可愛いし魅力的だし、プロポーションは良いし、今胸の谷間見えてるし、これで欲望抑えてる僕、褒められていいんじゃないかなぁ?!」

 

僕の叫びが泡になって上に昇っていく。

そんな僕を見て、ユエはクスクス笑い始めた。

 

「…笑い事じゃないんだよ、ユエ?」

「だって、アオ…そんな風に私を見てたなんて…言われてはいたけど、いまいちそう感じられなくて。本当かなぁ、って思ってたんだ。じゃあ、結婚式までお預けにするから…今してもいいよね?」

 

そう言い、彼女は僕に唇を合わせてくる。

でも、僕を慮って軽めのやつだった。

 

「ユエ…」

「ちゃんと、私を幸せにしてねアオ? 先に死んだら許さないんだから」

 

微笑みながら僕の胸に頬擦りしてくる彼女に、ポツリと、何とは無しに僕は呟いてしまった。

 

「前世では君が先に死んだけどね」

 

その言葉を聞いたユエはピタリとその動作を止め、僕を睨みつける。

彼女の魔力の上昇を感じて、僕は自分が失言した事を悟った。

 

「……本当、アオの馬鹿!! 少しはデリカシーってもの学んだら?!」

 

怒ったユエが魔法を使い、僕は更に深海へと吹っ飛ばされたのだった。

 

◆◆◆

 

「…いってぇ…」

 

先程いた場所から、更に下に500メートル下がった所だろうか。

僕は岩か何かにぶつかり止まった。

そして、自分の発言に頭を抱えてしまう。

 

やっちゃったなぁ…。

もうちょっと考えてから発言するべきだった。

絶対ユエ、みんなに言ってるだろうし。

 

「戻り辛ぇ…」

 

まぁ、自業自得なのでしょうがない。

むしろ、今度こそユエに呆れられたかもしれないと、僕はそちらの方が怖かった。

 

「ユエに捨てられたら…僕どうしよう……ん?」

 

立ち上がって岩を触ると、何かの紋様っぽいものが刻まれているのに気付く。

 

こんな深海で、紋様?

波で削れたにしては、人工物すぎる気が…。

 

僕は上下左右を確認する。

 

上には何もない。

左右は同じ材質のものっぽい、壁のようなものが続いている。

足元は…やっぱり同じ材質のようだ。

 

「こんな所に人工物…経過からして、つい最近のやつじゃない…。カヅキおばさんが趣味で作った…わけないな。こんな深海に作ってどうするんだ」

 

僕は泳いでそれを確認してみる。

結構大きな建物のようで、暫くしてから入り口を見つけたが、そこは僕がぶつかった場所より更に離れた場所、ビーチ側から見えないような位置にあるっぽかった。

 

「…まさかな」

 

魔王の遺物が一瞬頭を過ぎる。

各領に遺物があるかもしれないと報告した後、カヅキおばさんも自分の領であるトリスタン領を魔法を駆使して隈無く探したが、見つからなかったと言っていたのに。

 

僕は入り口から中に入ってみる。

光が途絶え暗い中進む途中、上に向かう道があったのに気付きそこを進んでいくと、水面に出た。

 

「え…空気がある?」

 

真っ暗な空間だったが確かに空気がそこにはあり、

僕は気配を探って登れそうな場所を見つけ、水から上がる。

 

「……はぁ」

 

一息ついて僕は座ると、自分の膝を抱えた。

 

ちょっと、ここに篭りたい。

罪悪感で潰されそう。

ごめん、ユエ。

見捨てないでくれるとありがたいんだけど、今回こそは無理だよなぁ…。

 

更に深いため息をついた途端、ユエから念話がくる。

 

〈アオ、何処? 無事?〉

〈無事だよ。何かあったの?〉

 

ユエがホッとしている気配を感じ取った。

一体なんだろうと思いつつ、彼女に対して罪悪感を抱いていたものだから、僕は自分の膝に顔を埋める。

 

〈もしかして非常事態だった? …ごめんね、ユエ。今度こそ見捨てられてもおかしくない事言った…少し落ち込んでから帰るから…見捨ててくれてもいいよ…〉

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