my way of life   作:桜舞

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140話『倍返しにしてくると思うけど』

昼食を取り、シンクの転移で僕らは遺跡に戻ってくる。

流石に六人を一気に運んで疲れたのか、シンクはユタカに抱きつき、動かなくなった。

 

「シ、シンク…? 大丈夫…?」

 

シンクの背中を軽く撫でながらユタカが尋ねるが、弟は一切口を開かず、黙ってしまっている。

少し困っていた彼女だったが、途中で目を丸くした。

 

「ユタカ?」

「…寝ちゃってる」

 

立ったまま?

本当に?

 

少し聞き耳を立てると、確かにシンクの方から規則正しい寝息が聞こえてくる。

僕ら全員を運ぶのに演算をしたのだろうから、脳が疲れてシャットダウンしたか。

 

そりゃ当たり前か。

最初は自分を含め四人こちらに転移してきて、次に六人屋敷に転移。

昼食をとって、また六人遺跡に転移させればこうなるに決まってる。

 

それを難なくこなして、尚且つ元気に活動出来るのは母様達だけだ。

 

「ユタカ、重いでしょ。引き離すよ」

「大丈夫。でもごめん、グンちゃん。私、ここでシンクと一緒に待ってるね。一人にするわけにもいかないし…」

 

脱力した人間というものは、重心が分散せず相手に全て乗っかってしまう。

だから、シンクを引き離して壁に寄りかからせようと思ったのだが、ユタカは身体強化を使ったようでシンクを軽々と持ち上げてしまった。

 

写真撮って後で見せたら、面白い反応しそうだなぁ。

 

そう思って携帯を取り出そうとしたが、ユエとシャナに止められる。

 

「アオ、やめといた方がいい」

「シンク、倍返しにしてくると思うけど。それでも良いなら撮りな、グンジョウ」

 

僕は大人しく携帯から手を離した。

ユタカも苦笑している事から、三人とも同意見なのだろう。

 

「殿下…どうしますか? 固まって動くか、別れるか…」

「うーん…」

 

今僕達がいるのは、十字になっている通路の真ん中だ。

魔物がいないとも限らないし、もしかしたら僕らの方で動作させた罠が、ユタカ達の所で起こるかもしれない。

シンクという、魔法が使えるメンバーが脱落してるのも痛い。

弟が起きるまで待っていたら、夜になってしまう。

 

今日撤退した所で、明日もこの状態に陥るのは目に見えている。

だからといって、みんなで潜ってここまで来るのも時間がかかってしまうし。

 

どうしたものか…。

 

悩む僕に、ユタカは言った。

 

「グンちゃん、心配しなくても結界張って待ってるから。それに、シンクが起きて動けるようになったら、すぐに念話飛ばして知らせるよ。だから、安心していってらっしゃい」

 

「……うん、わかったよユタカ。ユエ、デバイスは?」

 

ユタカに頷き、僕の彼女に尋ねる。

ポケットから携帯型のデバイスを出して、ユエは微笑んだ。

 

「ちゃんと持ってきてるよ、アオ」

「よし、じゃあ二手に別れようか。シャナとツルギは右、僕らは左に進む。行き止まりならここに戻ってくる事。いいね?」

 

了解とみんなに返され、僕はシャナに近付くと姉を抱きしめる。

 

「シャナ」

「分かってる。非常事態になったら、あたしがみんなを連れて脱出する。勿論グンジョウもだからね」

 

僕の頭を撫で、笑うシャナ。

何も言わなくても分かってくれる、僕の半身。

僕も笑いかけ、姉を離す。

 

「ツルギ、シャナを頼んだ」

「はい、殿下」

 

ツルギの返答を聞き、僕は踵を返した。

 

「行こう、ユエ。ユタカ、危ないと思ったらシンクと一緒に脱出してね。君もデバイス持ってきてるだろ?」

「勿論だよ、グンちゃん。いってらっしゃい」

 

ユタカに見送られながら、僕らは分かれる。

左にずっと進んでいくと、ユエが少しクスリと笑った。

 

「? どうかした?」

「ううん、アオはやっぱり格好いいなって思って」

 

いきなりどうしたんだ。

 

立ち止まってユエの方を振り返ると、彼女は微笑みながら僕を見つめていた。

先程の発言と、その表情に首を傾げる。

 

「ちゃんとリーダーしてるなって。パーティ組んだ直後のアオ、結構オロオロしてたというか」

「…情けなかったでしょ。今もそうだとは思うんだけど」

 

ううん、とユエは首を横に振った。

 

「迷いながら、前に進もうとしてて。ちゃんと成長してるよ、アオ」

「それ誰目線? ユエ、雪那の記憶思い出してから精神年齢上がった? …いや、僕と喧嘩してる時点で、上がったとは言えないか…」

 

ブォン、と風を切る鈍い音がして、ユエが僕を蹴ろうとしているのに気付く。

それを受け止めながら、僕はため息をついた。

 

彼女がスカートじゃなくて、本当に良かった。

絶対中見えてたはずだ、この蹴りの角度から言って。

 

「アオ? 私結構褒めてるんだけど?」

「分かってるよ。でも、こういう喧嘩は帰ってからにしようか。今は何が起こってもおかしくない場所にいるんだから」

 

彼女の足を離して、僕は進行方向に歩き始める。

そうだけどさぁ、とユエは不満そうに言うが、それ以外ないだろうに。

 

暫く進んでいると、開けた場所に出た。

 

「…何ここ」

「闘技場っぽいよね…」

 

コロッセオとでもいうのだろうか。

円形の舞台を見下ろすような形で、観客席がずらりと並んでいる。

 

「行き止まりと見るべきか、否か…」

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