my way of life   作:桜舞

142 / 408
142話『生命力まで使ったわね?』

彼女の方を本能的に追おうとし、首元にグリードが噛み付いているせいで追えず、バーゲストは吠えた。

 

「…ったく…うるさいな…獣風情が」

 

僕は体内の魔力回路を高速で回す。

ユエの魔力もほんの少しだけ使わせてもらい、僕は片手をバーゲストへ向けた。

 

「僕の女を食い殺そうとするな、駄犬。それを許す僕ではないぞ。それに、僕を誰だと思っている……ナズナ・エキザカム・ブリリアントと、シャルロット・マリアライト・ブリリアントの息子だ!! 貴様なんぞに、負ける僕ではないっ!!」

 

魔法陣が僕の周りに浮かび上がる。

魔力回路が軋み出したが、構うものか。

 

四重元素(フォースエレメント)四重奏(カルテット)狂想曲(カプリチオ)!! 発射(フォイア)!!」

 

四大元素が魔法陣から放たれ、バーゲストに当たっていく。

シャナがリブロを従えた時に見た魔法、それを模倣してみたのだ。

流石に無属性魔法は仕組みがよくわからなかったから、使えはしないが。

 

ゴフッ、と僕は吐血する。

魔力量が少なく、無理に魔力回路を回した反動が来たのだろう。

だが、あともう少しだけ。

シャナが到着するか、もしくはシンクが起きるまで保たせなければ。

 

こいつを、ユエの所に行かせてなるものか。

その一心で、僕は魔法を撃ち続ける。

 

〔おい、我が主。我にも当たっているのだが〕

「それは…っ、申し訳、ないね! だが、気にしている余裕…こちらには、なくて…っ!」

 

僕の魔法が当たり、グリードが苦言を言ってくるが、それも気にしている暇などない。

 

「我が呼び声に応えよ! 開け闇の扉!! 我が敵を貫け闇剣(ダークネスソード)!!」

 

そんな時だった。

僕の背後から聞き慣れた声が魔法を唱え、バーゲストの体を黒色の巨大な剣が刺し貫いた。

それでも藻搔いていたバーゲストだったが、グリードの歯がやっと奴の喉元に到達出来たようで、ゴキィッと派手な音がし、バーゲストはそれで息絶えたようだった。

 

僕は魔法陣を消し、体の力が抜けて倒れかけるが、その声の主が抱き止めてくれる。

 

「グンジョウ!! なんて無茶すんの、あんたは!!」

「……姉上…来てくれて、助かったよ…ユエ、間に合ったんだね…」

 

シャナが回復魔法(ヒール)をかけてくれるが、魔力回路が傷付いてしまったようで僕は一歩も動けそうになかった。

 

「ごめん、姉上…役立たず、で…」

「もう喋るな! あぁ、もう!! ユエちゃん、ユタカちゃんに連絡!! 撤退するよ!」

 

姉が指示を出し始め、僕はユエを見る。

 

「…ユエ、ごめん…」

 

僕はそこで、意識を暗転させた。

 

◆◆◆

 

次に目を開けるとベッドの上で、母様が回復魔法をかけてくれている。

魔力回路も全体強化のダメージも修復されつつあり、こんなに魔法を使ったら母様の駆体が保たないのではないかと、寝起きの頭で思った。

 

「起きたわね、グンジョウ? 全くナズナの奴…何が引き際よ、やっぱり無茶したじゃないの、この子」

「ごめん、母様…。でも、相手がバーゲストだった…から。逃げたら、ここも危ないと…思って」

 

母様は仕方ないと笑い、僕の頭を撫でる。

それが心地良くて、僕は目を閉じた。

 

「本当に、責任感が強い子ねグンジョウ。でも、カヅキも言っていたでしょう? まず、生き残る事を考えなさいって。自分の力を過信しちゃダメ。グリードも召喚していたのですってね? それも、ほんの少しだけユエちゃんから魔力を貰っただけで、あとは自分の魔力だけで回してたって。貴方…生命力まで使ったわね? だから血を吐くのよ、お馬鹿」

「…ごめんなさい」

 

僕は薄目を開けて、ため息をついた母様を見る。

 

「あたしに謝らず、ユエちゃんに謝りなさい。シャナから聞いたけど、ユエちゃん泣きながらシャナに助けを求めていたそうよ。アオが死んでしまう、助けてシャナちゃん、って。うちの男ども、惚れた女に心配かけさせる癖でもあるのかしら」

「………はい、すみません」

 

耳が痛すぎる。

これ、ユーリおじさんの耳にも入ってるだろうなぁ…。

婚約破棄目前ですか、これ?

 

「馬鹿な事考えてないで療養しなさい。明日は、貴方を抜かしたメンバーで行くそうよ」

「それは…っ! う…ぐ…っ!!」

 

驚いて身を起こしかけ、激痛で胸を押さえる。

ペシリ、と母様から頭を軽く叩かれた。

 

「魔力回路が損傷しなくて良かったわね、グンジョウ。良いから、休んでなさい。あと、ユエちゃんが来たらちゃんと謝るのよ? …いたた」

 

母様が立ち上がり扉の方へ歩いて行く際、少しだけ腹部を押さえていた。

それを見て、生身で僕の治療をしてくれていたのだと、察する。

 

「母様、ごめんなさい。ありがとう」

「…あたしの可愛い子供だもの。心配にはなるけど、親が先回りして子供が成長するのを、潰してはダメだと思うのよ。だから、いくらでもあたし達に心配をかけさせなさいグンジョウ。それが親の務めですもの」

 

僕の方を見て微笑んだ後、母様は扉を開けた。

そして少し動きを止め、僕を再度振り返って苦笑いをする。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。