それをノワールで受け止める。
ギシリと音がして、拮抗していた。
「お気持ち表明は別に良いんだよ。君は自分の責任の重さってやつを、理解してなさすぎじゃ無いかい? それで王太子? もうその座は降りた方が、君のためじゃない?」
「誰が降りてやるかよ…っ! この座は、誰にも渡さねぇ…っ!! 父様や母様が、僕に出来ると信じてくれたからこそ、座らせてくれてるんだ!! 二人の信頼に、応えてなんぼだろぉがぁっ!!」
ブランシュとノワールに炎を纏わせ、ユーリおじさんに斬りかかる。
身体強化も同時に使い、斬るスピードを上げていった。
それすらもこの人は、余裕で受け止めている。
腹立たしい。
ユエの父親だからって、年上だからって、偉そうにしやがって。
僕は足を使ってユーリおじさんを蹴り上げた。
魔力を付与して、重さを足したものを。
クリーンヒットしたはずなのに、おじさんは余裕そうに笑っている。
「そこまでだ、裕里。グンジョウ、お前頭に血が昇り過ぎて口が悪くなってるぞ。まぁ、それがお前の本心だろうし? ナツキも笑って観戦してたから、別にそちらでも構わないんじゃないか?」
「……そういうわけにも、いかないでしょカヅキおばさん。ユエが怖がるかもしれないじゃないですか。別に、猫被ってるわけじゃないし…って、母様笑って見てた?!」
一体どこから、と辺りを見渡すと2階の寝室からにこやかにこちらへ手を振っていた。
やっべぇ…口汚い所見られた…。
あんま表に出さないようにしてたのに…。
僕はブランシュを後ろに掲げる。
そこへユーリおじさんが竹刀を振り下ろしてきた。
「おや、もうわかるようになったのかい?」
「そんな隠しきれない殺気で、わからないはずねぇだろ。何、そんなに僕を叩き伏せてぇのか、てめぇは…っ!!」
折角カヅキおばさんが止めに入ってくれたというのに、この人は…っ!!
「アオっ!! パパっ!! 何やってるの?! っていうか絶対、これパパが原因でしょ?! いい加減にしてよ!! そんな事ばっかしてるんなら、私もうお嫁にいくからね?!」
遺跡探索に行っているはずのユエが、転移でこの場に現れる。
一体なんで、と思ったら傍にシャナがいたので、僕の無意識がシャナに伝わった結果だと悟った。
「ユエ、君のためなんだよ? こんな弱い男が君を守れるはずないじゃないか」
煩い、とユエは怒鳴る。
実の父親、しかも転生者である自分の父親に、彼女は怒鳴りつけたのだ。
僕のために。
「アオは弱くない!! そう思うのは、パパ達が強すぎるだけだよ!! 確かに、ママや王妃様に鍛えられる前は弱かったかもしれない。でも、今は違う!! ちゃんと自分で考えて、みんなの力も借りて、前に進もうって頑張ってる!! 私だって、アオの力になりたいから、訓練だって妃教育だって頑張ってるんだよ?! アオが頑張ってるの否定しないでよ、
パパ!!」
「否定はしてないよ。でも、それにしては弱すぎると言っているだけだ」
ユエが俯き、肩を振るわせる。
彼女に声をかけようとした瞬間、ユエは顔を上げた。
そして、カヅキおばさんの所に行き、尋ねる。
「ねぇ、ママ。婚姻って何歳からだっけ」
「男は18、女は16からだな。それも両親や保護者の了承を貰って、婚姻届に署名を貰って教会に提出する…が手順だが? ユエ、お前の考えてる事はわかるが、残念だったな? グンジョウは高等部三年生の一月にならんと、18にはならんぞ」
ちっ、と盛大にユエは舌打ちする。
ごめんね、ユエ。
早生まれで。
それについては、うちの両親に文句言って欲しいけど。
「じゃあ、アオと住む。もう立花邸には戻らないから!!」
僕の腕に抱きつき、ユエはユーリおじさんを睨みつけた。
確かに婚約者なんだけど、それは僕の理性が保たないんだってば…。
それにそんな事、君の両親が許すはずないだろうに。
短絡的すぎるよ、ユエ…。
「別に良いぞ。グンジョウ、城にユエの部屋は?」
「え、あ、僕の婚約者になった時点で、もう作られてます。夫婦になったら、そこはユエの執務室になりますけど…」
カヅキおばさんが了承した事に驚き、僕は一瞬答えるのが遅れる。
そして王妃の執務室の件は、王と王妃が寝室別っておかしくね?
というわけで、その時の王太子の婚約者が輿入れし、王妃になった時点でそこは王妃の執務室に変えられるらしい。
母様の時もそうだったらしいし。
だから、王の執務室は一定なのに王妃の執務室はコロコロ変わるのだそうだ。
「良いか、ユエ。そう宣言したという事は、二度とうちの敷居は跨げないという事と同義だ。それでも、お前はグンジョウと共に住むというのか? もしかしたら、グンジョウが浮気をしてお前を捨てたとて、お前には帰る場所がないという事なのだぞ?」
「そんなの覚悟の上だよ。お嫁に行くって、そういう事でしょ? あと、アオは浮気なんてしないから。もし、されて側妃になっても、私はアオを愛しているもの」
なんで僕が浮気する前提で話すの、ユエ。