my way of life   作:桜舞

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146話『助けて…お兄ちゃん…』

しないし、君以外いらないのに。

 

僕はユエの腕を外し、二人に頭を下げた。

 

「ユーリおじさん、カヅキおばさん。ユエを、僕にください。精一杯、彼女を愛し、守り、慈しみます」

「さっきも言ったけど、お気持ち表明だけだと困るんだよグンジョウ君? それで魔王が倒せればいいよね、二人とも?」

 

パパっ!!

とユエはまた怒鳴るが、僕は頭を上げず言う。

 

「おじさんが言う事もわかります。ですが、僕は強い者だろうと、屈するつもりはありません。僕はユエを、みんなを守りたい。それが、ユーリおじさんには表面上の話だと見えてしまったとしても。僕の決意は揺るぎません。魔王は必ず討伐します。命になんて変えない、絶対みんなで生還します」

「裕里、子供を信じ見守るのも、教育者の務めと思わないか? まぁ、グンジョウが未熟なのは私も認めるが」

 

顔を上げていないから、カヅキおばさんの表情が分からないが、絶対面白そうに僕を見ている事だろう。

あと未熟なのはわかってます。

 

「まぁ、カヅキに免じてこれくらいにしておいてあげるよ。グンジョウ君、成長してもらわないと困るから言っておくけど。常に冷静にね」

 

二人の足音が遠ざかっていく。

ユエが僕の腕を軽く叩いて、漸く僕は顔を上げた。

 

「シャナ、口を出さず黙っててくれてありがとう。あと、煩かったかな…ごめんね?」

「…いや、ごめん。あんなに怒ってるグンジョウ、初めて感じたから。ユエちゃん連れて来たら何とかなるかと…。余計なお世話だったかな」

 

姉の言葉に、僕は首を横に振る。

微笑もうとしたが、体調が万全でない上で戦闘をし、尚且つこの炎天下で僕は立ちくらみがし、その場に蹲った。

 

「アオ?! パパ、マジ許さん…っ!!」

「グンジョウ、立ちくらみ? 日陰作るから、少し休んだら動けそう? 水飲む? ユエちゃん、今はそっちいいからこっち手伝って」

 

ユーリおじさんが去って行った方向を睨みつけるユエと、僕を心配して色々やってくれるシャナ。

あと、珍しくシャナがユエを叱責して、彼女は姉の言う通りに動き始めた。

 

「姉上…ごめん、倒れる…」

「良いよ。しばらく眠ってなさい、グンジョウ」

 

本当、こういう時頼りになる姉だよ、シャナは。

 

僕はそう思いつつ、シャナに抱かれながら瞼を閉じ、意識を手放した。

 

◆◆◆

 

次に目を覚ますと夜だった。

時刻を携帯で確認すると午前1時で、僕は起き上がる。

 

少し散歩してから、お風呂入ってもう一回寝よう…。

 

そう思った僕はゆっくり扉を開けて、廊下に出た。

そのまま外へ繋がる扉を開けて、裏手の門の所で寝ずの番をしている親衛隊に声をかけ、門を開けてもらう。

少し散歩してくるだけで、すぐ戻る事を伝え屋敷の裏にある森の遊歩道を歩く。

 

「涼しいな…」

 

昼間のあの熱気が嘘のように、夜はとても涼しく過ごしやすい。

森林浴とでもいうのか、空気が心地よく感じ、僕は深呼吸をした。

月も出ているので、歩くのは難しくない。

 

「月か…」

 

確か、ユエの名前を生前の母様の国である、日本で使われていた漢字という言語にすると、月と書くらしい。

その名前の通りだと、僕は思った。

 

彼女の美しさは月のように、涼やかで冷たい印象を与えてくるが、それでも慈悲深く暗い道を照らしてくれるような、導いてくれるような、そんな女性だ。

 

「ユエ…」

 

僕は月を見上げながら手を伸ばす。

届きそうで、届かない。

 

彼女がもし、僕から離れてしまったのなら。

この月のような距離に、行ってしまったのなら。

僕はこの気持ちのまま、生きていかなければならないのだろうか。

 

「ユエ、会いたい…」

 

ポツリと、そんな事を呟いてしまう。

 

今彼女は、屋敷の寝室で眠っているだろう。

会いたいと思えば会いに行けるし、日が登れば起き出して僕に会いにきてくれる。

 

こんな切ない気持ちになるなんて、ナンセンスだ。

 

それに、彼女が僕から離れるなど有り得ない。

僕も彼女も、共依存に陥っていると、ここに来てから気付いたのだから。

お互いに必要で、大切で、離れ難く、なくてはならない存在。

それが、今の僕とユエの関係だ。

 

くっ、と自嘲して僕は月から目の前に視線を戻す。

 

暗闇の中、少し発光しながら一人の少女が立っていた。

今まで、誰もいなかったのに。

 

しかしその姿を認めた瞬間、僕はブランシュとノワールを呼び出す。

薄ピンクの髪に、白いワンピース、靴は履いておらず、素足のまま。

 

「桃華、何故ここにいる」

 

僕の問いかけに、桃華は俯き答えない。

一体何を企んでいるんだ、と警戒していると、彼女が顔を上げた。

その表情に、僕はギョッとする。

 

大粒の涙を流し、虚ろな目で桃華は僕を見つめていたのだ。

 

「桃華…?」

「……助けて…お兄ちゃん……助けテ……助ケ…テ……オ……兄……ちゃ……ン……」

 

助けて、お兄ちゃん?

何を言ってるんだこいつは。

なんで僕が、お前を助けなくちゃいけないんだ。

 

僕から、雪那を奪った。

今は魔王の手先として、僕を、ユエを、みんなを。

害そうとしているお前を。

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