my way of life   作:桜舞

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147話『なんか吹っ切れてね?』

だが、昼間にユーリおじさんに言われた事を思い出し、僕は深呼吸する。

 

「桃華。何を助けて欲しいというんだ」

 

一応の対話。

冷静に、情報を引き出せ僕。

 

「オ…兄…ちゃ……ごめんな、サい……あたし、ガ……ゼン、ブ……悪、カっタ…ノ……うう…っ!」

 

桃華は頭を押さえ、ガタガタ震えながら、言葉を僕に伝えようと、必死に紡いでいく。

 

「オ…にい…ちゃ…取ら…レた…思っ……ダカ…ラ…セツ……コロ……ゴメ……お兄…チャ……殺して……アタシ、を…殺…て……オ……兄……」

 

そこまで言って、桃華は動かなくなった。

途切れ途切れだったが、彼女の言い分はこうだ。

 

『お兄ちゃん、ごめんなさい。あたしが全部悪かったの。お兄ちゃんを取られたと思った。だから、雪那を殺した。ごめんなさい、お兄ちゃん。殺して、あたしを殺してお兄ちゃん』

 

だから何だというのか。

 

僕を取られた?

だから殺した?

 

ふざけるのも大概にして欲しい。

 

「桃華。僕を取られたからと人を殺すのはどうかと思う。それに、僕は今、君の兄ではない」

 

僕の言葉に肩を揺らし、桃華はそこから刀を取り出した。

戦闘に入るかと身構えた僕だったが、彼女はそれを自分の腹部に突き立てる。

グチャリと中で掻き回したようで、そんな不快な音が僕の耳に届いた。

 

「……そうだね。でも、あたしのお兄ちゃんは、グンジョウだけなんだよ。ごめんなさい、お兄ちゃん。あたし、お兄ちゃんが大好きだったの。小さい頃から、鈍臭いあたしを、よく面倒を見てくれて優しくしてくれて…お兄ちゃんが雪那と付き合った時も、優しいお兄ちゃんがいなくなってしまったと…思って…それを取った雪那が、嫌いで…。子供だったの、あたし。ちゃんと、お兄ちゃんは…お兄ちゃんだったのに…」

 

口の端から血を流し、桃華は寂しげに笑う。

涙も、流しながら。

 

「あたし、今…魔王の、武器庫に…されてて…正気のうちに、お兄ちゃんに…伝えたかった。ごめんなさい…って。あたしを、憎んで…お兄ちゃん。それで、殺して…お兄ちゃんにしか、頼めないから…」

「僕にしかって…どういう…」

 

尋ねた瞬間、桃華が闇の球体に包まれた。

フン、と低い男の声がし、球体の後ろからその姿を現す。

 

「武器の貯蔵体が、許しもなく出歩くなど…貴様、復讐の為に我に落ちたはずだぞ、神無月桃華。まぁ、良い。今度こそ、貴様も使って王家を根絶やしにしてやる」

「… ハイクロッカス・ド・ヴァンデルゼンセン…」

 

初代魔王の名前を口にする。

魔王は、ほう? と僕を見た。

 

「我の名は、ここまで綿々と語り継がれてきたのだな。今代の王子、愚王に伝えよ。貴様の一族郎党、全て根絶やしにする。まずは、貴様の伴侶が衰弱死するのを指を咥えて見ているがいい、とな」

 

宮塚麻人の顔で、魔王は笑う。

だが、僕はそれに嘲笑を返した。

 

「母様が…シャルロット・マリアライト・ブリリアントが、衰弱死? そんな事はあり得ない。母様は、この世界最強の転生者だ。魔王、お前…とんでもない人に手を出したな」

「……」

 

魔王は僕を見て目を細め、何も言わずその場から姿を消す。

桃華が入った球体と共に。

 

僕は暫くその場を見つめ、踵を返して屋敷への道を歩き出した。

明日の朝、父様達に報告する事が出来たな、と思いつつ。

 

◆◆◆

 

「シャルが衰弱死? それをさせない為に、カヅキが動いているのだろうに。魔王の奴め…。グンジョウ、報告ご苦労だった。下がっていいぞ」

 

早朝、父様の執務室の扉をノックすると、返答が返ってきたので僕は中に入り、昨夜の事を報告した。

今日はメンバーに復帰して、共に遺跡探索に行く予定なのでこんな時間に訪室してしまったのだが、父様は快く迎え入れてくれた。

 

「…ちょっと怒ってたなぁ、父様。まぁ、当たり前だけど」

 

父様の執務室から退室して、廊下を歩きながら僕は呟く。

 

母様が腹部を刺され、躯体になったあの日。

父様は憔悴し、母様を見ながら泣いていた。

 

今朝見かけた母様は躯体に戻っていたようで、僕のせいで寿命を縮めてしまったのではと、大変申し訳なくなった。

 

「グンジョウ、この野郎!」

 

廊下を進んでいたのだが、廊下の陰から僕目掛けて腕が振り下ろされたので、それを見ずに受け止める。

振り下ろしてきた人物を見て、僕は呆れた目を向けた。

 

「何やってんの、シンク。てか、いきなり何」

「心配かけさせたお前に、お仕置きをしようと思ってだな…なんでそんな冷たい目で見んだよぉ。じゃれ合いだろうが、おにーさま」

 

僕から手を退け、ブーブー文句を言うシンクへため息をつき、僕は拳を突き出す。

 

「心配かけさせてごめん。もう大丈夫だから、司令塔よろしくなシンク」

「おう…おう? お前、なんか吹っ切れてね?」

 

僕に拳を合わせて来たシンクが、首を傾げた。

昨日の騒動、ユタカから聞いてないのか。

 

「吹っ切れる、か。そうだな。少しは、お行儀悪くても許されるかもって、思っただけだよ」

 

ニッ、と笑ってみせると、シンクも同じように笑う。

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