「ちょっとプライベートな話だから、付いて来なくて良いんだけど…」
「私はアオちゃんの専属護衛なんだよ? なんで、護衛対象から離れるって選択肢があると思うの?」
ごもっとも。
僕は軽くため息をついて、携帯を取り出し母様にかける。
数度のコールの後、電話口から母様の声が聞こえた。
『はーい? どうしたの、グンジョウ? 私用回線にかけてくるなんて、珍しいわね?』
「ごめん母様、忙しい所。シャナが見た夢について、母様の意見を聞きたい」
僕は今日合った事、そしてさっきシャナが話した夢の内容を母様に話す。
側にいたユエにはジェスチャーで、黙っててねと釘を刺しておいた。
『………っ!!』
母様が息を呑む声が聞こえ、次いで受話器を落としたのかすごい音が鼓膜を破る勢いで響いたので、思わず携帯を耳から離す。
「ちょ、母様? 母様?」
『グンジョウ、今の話本当か?』
電話口からカヅキおばさんの声が聞こえた。
おばさんは四人に分裂する魔法が使えるらしく、一人は今学校に、一人は領主の仕事、一人は自分の研究に没頭し、そしてもう一人は母様の護衛兼補佐をしている。
おばさんの声は怒気を纏っていて、何か怒らせる話をしただろうかと首を傾げた。
「え、えぇ。シャナは青ざめてはいましたが…」
『ちっ! ナツキ、お前の事じゃない。落ち着け。お前と似た境遇の奴かもしれないだろ? シャナは宮塚じゃない。私が魂を破壊したんだ、あいつが記憶を持って転生するはずが…あー、くそ! カナリア! ナズナ連れて来い! 至急だ!!』
どうやら、母様のトラウマを踏んだらしい。
カヅキおばさんが焦ってる声が聞こえてくる。
これ、電話切った方がいいかなぁ…。
通話を切ろうとしたが、カヅキおばさんがドスの聞いた声で、
『お前、後で城に来い』
と言って、向こうから切られてしまった。
携帯をポケットにしまい、僕は困ったようにユエへ笑いかける。
「僕、転移する魔力ないのに、どうやって城に行ったら良いんだろうね?」
「今の声、ママ? ここにいるママに聞いたら良いんじゃない?」
それはそうなんだけど、会うのが少し怖い気がした。
むしろ、会った瞬間殴られそう。
そうも言ってられないか、と僕は職員室に向かう。
「失礼しまーす…」
職員室の奥側、カヅキおばさんは少し不機嫌そうに僕らを見ていた。
そんな顔されても、相談しただけなのにという感情がないでもない。
「あの、立花先生…」
「お前ら、今日の午後の授業は免除してやる。あとで個人的に行け。シャナに城まで連れて行ってもらえ、いやむしろシャナも連れてこい。確認する事がある」
そう言って、さっさと出てけというジェスチャーをされる。
一体何なんだ、と僕らはシャナ達の所に戻り、先程の出来事を伝え、城に戻る事も伝えた。
「なんであたしの夢の話で、そんな大事になってるの? 心配して相談してくれたのはありがたいけど、ちょっとあたしに話してからにしてくれない?」
「それはごめん。でも、僕もなんでこんな事になってるかわかんない…」
姉弟二人して、首を捻る。
ツェリが心配そうに僕らを見ているが、エミル君が妹の肩を叩く。
「ツェリ、これは俺らが聞いて良い話じゃなさそうだ。教室に帰ろうぜ」
「え、で、でも、お、お兄ちゃん…」
エミル君はツェリの腕を引っ張り、この場から離れてくれた。
僕は二人にごめんね、と背後から声をかける。
二人は気にするなとでも言うように、手を振り返してくれた。
◆◆◆
午後の授業が始まる前、僕とユエは何も食べてない事を思い出し、サンドイッチの包みを購買で買ってから半分こする。
そこら辺で食べてからシャナ達と合流し、城に戻ったら。
「なんか、慌ただしくない…?」
城のメイドや、侍従達が慌ただしく走り回っている。
一体何があったのかと、メイドの一人を捕まえて聞いてみると、
「お、王妃様がお倒れに…! その際魔力暴走もなさったようで、部屋一室吹き飛んだんです! 立花卿のお力で人的被害はございませんが、陛下も大層お怒りのようで…」
そう返答が返ってきた。
それを聞いた瞬間、僕は青ざめる。
完璧に、父様が怒っている事がわかってしまったからだ。
母様に害をなす者は、誰であろうと容赦はしない。
カヅキおばさんもだが、父様も母様が大切過ぎて若干過保護気味である。
そんな母様が倒れる出来事を、僕がもたらしてしまった。
これは僕、怒られるだけでは済まないだろうな…。
まずは、カヅキおばさんに相談するべきだった…。
メイドに礼を言い、僕は憂鬱になりながら父様の執務室へ足を運ぶ。
その後をシャナと立花姉妹が続くが、誰も僕に声をかけようとしない。
父様の執務室前には、ルルとレイラが立っていた。
二人とも、僕を見た瞬間苦笑いを浮かべる。
やはり、僕の予想は当たっていたらしい。
僕は父様に取り次ぎをお願いし、しばらくして入室を許可される。
二人が開けてくれた扉を潜って、僕は部屋へ足を踏み入れた。
途端、僕に向けて殺気が放たれ足が止まってしまう。