my way of life   作:桜舞

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152話『平気で崖から落ちれるよ?』

「俺は、まだ…平気だもん…。それより、グンジョウ兄さんの話…面白くて…」

 

コクリコクリと船を漕ぎ始めているラゼッタに、僕は苦笑する。

 

「我が王、私はもう眠たいです。お屋敷に帰りましょう?」

「でもさぁ…リオ…」

 

ラゼッタを我が王と言って慕ってくれてるリオンちゃんだったが…ごめん、なんで我が王って呼んでるのか一回聞いてみたいんだけど。

僕、王の器じゃないとか思われてる?

いや、その通りなんだけど。

 

「グンジョウ殿下、別にそう思ってませんわ」

「心読むのやめてもらって良いかな…君達立花の家は、どうなってるの?」

 

若干の抗議を含めて言ってみたけれど、ふふふ、と笑ってはぐらかされてしまった。

 

もしかして、リオンちゃんも転生者?

妙に大人びてるんだよなぁ…。

 

眠くなってしまったラゼッタをシンクが、リオンちゃんをユタカが抱えて帰り道を歩く。

アンナと、一言も言葉を発せずうちの妹を見て、ニコニコ笑っていたスイカ君は手を繋いで歩いていた。

僕とユエは最後尾で、みんなから少し離れた位置にいる。

 

「ねぇ、アオ。織姫と彦星って、本当に一年に一回しか会えなかったのかな。どうにかして会おうとか、考えなかったのかな」

「天の川は激流で、渡ろうとした牛とか、橋桁とかを全て流していってしまったんだったかな。年に一回、神様がかけた橋の上でしか再会出来なかったって話だよ」

 

ユエは僕を見て、寂しそうに笑った。

自分と、僕に置き換えて想像しているようだと気付いた僕は、ユエの額を突つく。

 

「ちゃんと隣にいるだろ、ユエ。それに、織姫と彦星は仕事をしてなかったから、引き裂かれたんだ。僕らはちゃんと役目を務めてるんだから、そんな事になるわけない。あまり悲観的な想像するなよ」

「…アオ…ちょっと変わった? なんか、夕陽君に近いような…」

 

チラリとシンク達の方を見る。

暗いからか、少し僕らが遅れても気づかなさそうだった。

 

僕はユエの腕を引いて、近くの茂みに入る。

木に彼女を押し付け、その唇を奪った。

 

「んっ?!」

 

驚いたユエがそんな声を上げるが、キスを段々深いものにしていくと、甘ったるい声を上げ始める。

僕は唇を離し、ユエの耳元で囁いた。

 

「あまり煽るなよ、ユエ。夕陽の名前は出すなって言ったはずだ。別に、今制約を破ったって良いんだぞ」

 

低い声で言うと、びくりと肩を跳ね上げた彼女はか細い声で、ごめんなさい、と謝ってくる。

僕は彼女から体を離し、頬に手を添えた。

 

「僕だって、嫉妬する生き物なんだよユエ? いくら僕の前世とは言え、他の男の名前を出すなんて…」

「ごめんなさい! 謝るから、許して…っ!!」

 

少し怖がらせてしまったらしい。

涙目で僕を見上げる彼女に苦笑する。

 

「…わかった?」

「わかった、わかったから、お願い…離して…」

 

そう言われて、僕は素直に彼女から手を離した。

怖がらせてごめんね、と言いながら。

 

「落ち着いたら戻っておいで。流石に、今の僕とは一緒にいたくないでしょ、ユエ? じゃあ、また屋敷でね。おやすみ」

 

彼女に笑いかけた後、背を向けて歩く。

 

いやぁ…嫉妬でやるんじゃなかった…。

これ、婚約破棄されてもおかしくないなぁ…。

やばい、涙出そう…。

いや、自業自得だから泣くな僕。

しかも、我慢しようって言った矢先にこれやる僕って…阿呆の子なのかな。

シャナの事言えねぇじゃん。

 

眼鏡を外し、目頭を押さえて俯きながら歩いていると、背中に衝撃がきた。

ちょっと受け身を取り損なって、僕は転ぶ。

 

「いっ…て…何?」

 

カラカラと音を立てて、眼鏡が何処かに行く。

後ろを見ると、僕に馬乗りになっている黒髪が目に映った。

今の時点で、こんな事をするのは一人しか考えられない。

 

「ユエ…? どうしたの?」

「ごめん、アオ…動揺しただけで、アオの事怖いとか思ってないの。むしろその…低い声で囁かれて、ドキッとしたというか…格好いいって思ったというか…惚れ直したというか…」

 

怖がってなかったのなら良いのだが、ちょっと退いてもらえないだろうか。

肘擦りむいてるし、眼鏡どっか行ったし。

 

「ユエ、あの…」

「…あれで攻められたら、私…って、何?」

 

ユエがキョトンとして、首を傾げる。

 

「何じゃなくて、退いてくれない? あと眼鏡どっか行った。探索魔法使って探してもらって良い? 僕、今なら平気で崖から落ちれるよ?」

 

僕の言葉に、ユエは慌てて僕の上から退いた。

まぁ、気配を探る訓練も受け始めてるから、眼鏡がなくても屋敷までだったら帰れるだろうが、それでも自信がない。

ユエが退いてくれたので立ち上がれた僕は、擦りむいてしまった肘に回復魔法をかける。

この程度なら僕だって使えるのだ。

 

「アオ、ごめん! 眼鏡あった!」

 

茂みに飛んでいっていたようで、ユエはすぐ戻ってきた。

立ち上がった僕の手に、眼鏡を握らせてくる。

それをかけ、僕は彼女を抱きしめた。

 

「アオ?」

「本当に怖がってない? さっきの僕、ヤバい奴だと思うんだけど」

 

クスっと笑って、ユエは僕の背に手を添えてくる。

 

「むしろ、襲って欲しかったくらいかな」

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