my way of life   作:桜舞

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153話『あたしが何かしら』

「しないってば。君さぁ…僕が口説いたり、本心を零すと顔真っ赤にして動揺するのに、煽るのなんなの?」

 

コツンと、彼女の額に自分のを合わせて少し抗議した。

だがユエは、ふふふ、と楽しそうに笑う。

一体なんなんだ、と彼女を見つめた。

 

「アオ、襲い受けってジャンルが…」

「あー、うん。聞いた僕が馬鹿だった。帰ろうか、ユエ。多分ユタカ達心配してるだろうから」

 

彼女から手を離し、踵を返して歩き始める。

ちょっと待てコラ、とユエから抗議の声が上がったが無視した。

 

◆◆◆

 

もうそろそろ王都に帰る日が近づいてきた日、僕は屋敷の図書室に籠っていた。

シャナ達は海で遊んでいるらしく、何とも元気だなぁ、なんて思ってしまう。

 

「………」

 

パラリ…パラリ…と本を捲る音だけが、図書室に響く。

僕は本来、こういう時間の方が好きだ。

周りの音など聞かず、本の世界に没頭する。

それは、自分の責任への逃避なのかもしれなかった。

 

今日は誰も邪魔をしに来ない。

邪魔と思ってる時点で、お前は何様なんだとは思うが。

 

「………」

 

ここの図書室には色んなジャンルの本がある。

経済学、経営学、科学の本もあるし、普通にオーシアの言葉で書かれたのもあるから、この屋敷を引き継いだ時に、おばさんが入れた物だろう。

あと、恋愛小説。

 

母様のファンの人が書いた物が棚を全て埋め尽くしていて、見つけた瞬間僕は驚くと同時に苦笑いした。

これはフィクションです、との前書きがあったが、関係者が見ればこれは、父様と母様の話だと分かる。

普通に一巻から読んではいったが、母様無茶苦茶だなぁ、との感想しか出てこない。

記憶喪失で父様と会い、学園に入って貴族令嬢をコテンパンに倒して、なんて。

それも私闘で。

 

「…母様本当に昔から無茶苦茶する人だったんだなぁ…」

「あら、あたしが何かしら」

 

呟いた声に返答があり、僕はそちらの方を見る。

ふぁあ、と欠伸をしながら、母様が図書室の入り口から入ってきた。

傍らにはリーゼを伴って。

 

「これ。読んでの感想」

「あぁ…アンが書いたやつね。それ見つけた時、ナズナは諸手を挙げて喜んでいたわよ? 小さい子供のように」

 

なんで喜ぶ事が出来るのか…。

流石に僕とユエの話を書籍化されたら、やった奴に抗議しに行く自信しかないのに。

父様、愛妻家過ぎて少し頭おかしいんじゃ?

 

「『シャルのやった事があまり皆に認知されていないのは、我慢がならなかったんだ。シャルがやった偉業ばかりに目がいって、シャルの優しさや繊細さが分からん連中が多い。これを見て考えを改めれば良い』とか何とか」

「…それ聞いて、母様なんて返したのさ」

 

リーゼは母様から離れて、何か本を探しに行ったようだ。

夏季休暇の宿題が残っていたのだろうか?

 

「そんなの決まってるでしょう? あたしの上っ面だけしか見ていない連中なんて、放っておきなさい。あたしの事をちゃんと見て、愛してくれる貴方がいれば良いのよって」

「はいはい、ごちそーさまです」

 

両親の惚気やイチャつきなど、小さい頃から腐るほど見てきたので、もうそろそろ年を考えてもらいたい。

いつまで新婚気分でいるんだ、うちの両親は。

 

「ふふ…貴方も、ユエちゃんと結婚したらナズナみたいになるかもよ?」

「ユエの事は好きだし、愛してるけど。ユエは絶対僕から離れないし、僕だって離すつもりはない。母様が美人だからって、他の人に威嚇する父様みたいにはならないよ」

 

別にちょっかいかけられた訳でも、口説かれた訳でもなく、母様が綺麗だから見てた人達に眼光鋭くなる父様みたいには、僕はならないだろうなとは思う。

逆になるのはユエの方だろうか。

 

「お母様、これにします」

「そう。リーゼ、一日で読書感想文書けそう?」

 

大丈夫です、と妹は母様に返す。

何故一日なのだろうと首を傾げると、母様から呆れた目を向けられた。

 

「明日帰るのよ? まさか忘れてたの?」

「…そういえばそうだった。あとで荷造りしないと…シャナの」

 

姉の名前を出すと、母様は苦笑する。

これではどっちが上か分からない、と思っているだろう母様に僕は言う。

 

「ちゃんと姉として敬ってるから、心配しないで母様」

「そこは心配してないわよ。まぁ、仲良くしてくれてる方があたしとしては嬉しいから良いのだけど。リーゼ、行きましょうか。お兄様の読書の邪魔をしてますからね…あぁ、雲行きが怪しいわね。スコールが降りそう」

 

窓に目を向けている母様と同様に僕も目を向ける。

確かに、雨雲が急速にこちらに向かってきていた。

 

母様達が退室して数分後、窓を大粒の雨が叩き始める。

まぁ、シャナ達は海で遊んでいるから濡れたとしても問題はないなと結論付けて、僕は読書に没頭した。

 

「グンジョウー! 濡れたー!」

「うっさいな…何、シャナ。荷造り? シンクに手伝って貰えば?」

 

顔を上げると、タオルを頭に乗せた姉が図書室の入り口からこちらに歩いてきているのが見える。

 

「グンジョウー…」

「…わかった、わかったよ。やるよ…まったく…」

 

姉の部屋に行き、荷造りを手伝う。

まぁ、梱包作業やったの僕なので、同じ手順をやれば良いだけなのだが。

 

その次の日、僕らは王都に帰ったのだった。




終わった、七月の話終わった…
長い、長かったよ…
20話にもなったよぅ…
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