バタン、と大きく扉が開く音がして、僕ら三人はそちらに目を向ける。
肩で大きく息をしてるシャナと、姉の隣には珍しくユタカがいた。
シャナの隣にツルギがいないのが、本当に珍しい。
何処行ってるんだ、ツルギの奴?
「シャナ? どうし」
「そんなに待てなーいっ!! あたし、母様達にお願いして婚姻結ぶように言ってくる!!」
尋ねた矢先、姉が大きな声で叫ぶ。
あまりの大きさに僕らは耳を塞いだ。
「シャナちゃん待って待って!! ユエの時と一緒で、まだ婚姻結べないって!! ツルギ、いったい誕生日いつ?!」
「ノーム2の月の5日! もう誕生日迎えてるもん!!」
僕らの話を立ち聞きしていたシャナが錯乱して、止めてるユタカを引っ張り、その場から去ろうとしていた。
僕はシンクと目配せして立ち上がると、シャナを二人で両側から持ち上げる。
「離せ、弟共!!」
足が地についていない宙吊りの状態で、シャナはジタバタと暴れた。
足とかが当たって痛いけど、離すわけにはいかない。
「姉ちゃん、落ち着けって」
「そうだよ、姉君。来年にならないと、ツルギと婚姻結べないって。今ツルギ17でしょ? あと、ツルギの事も考えなよ。シャナの事一番大事に想ってくれてるの、ツルギなんだから」
僕のその言葉に、シャナは見るからにシュンとなった。
取り敢えず落ち着いてくれたようで、僕らはシャナを離す。
「分かってるけど…それでも長いよ…」
「ただの予想だから。実際なるかはツルギ次第じゃん。というか、ツルギ何処行ってんの? シャナの隣にいないなんて珍しい」
尋ねると、シャナがムッとなった。
ツルギの事でこんな表情するとは、今日は珍しいものが連続して見れる日なのだろうか。
「…ツルギ君…騎士団で訓練してる。父様がツルギ君の歳の頃、そうやってたって聞いたらしくて。見に行ったけど、楽しそうで声かけられなくて…」
「ママから、お城で誕生日パーティーしてくれるって話聞いたから、ドレスとかの打ち合わせとかしなきゃと思って、ユエ呼びに来た途中でシャナちゃんに会ってね。こんな状態だから連れてきたんだけど…」
僕らの話が耳に入って、あんな事になったと。
成程成程。
「シャナ、少し我慢しようよ。ツルギだって、シャナの為に頑張ってんじゃん」
「うー…」
納得いっていない様子の姉に苦笑する。
まぁ、それはそうだろう。
堅物のツルギは、一回もシャナとデートしていないらしいとシンクから聞いた事がある。
むしろ、前世でも女性と付き合った事がないから、そんな事も知らないんじゃないか、なんて言ってはいたけれど。
シャナとしては、ツルギとの時間をもっと作りたかったのだろう。
それがアレである。
不満を抱こうというものか。
「アオ、私達パーティーの打ち合わせとかあるっぽいから、シャナちゃん連れてどっか遊びに行ったら?」
「そういえばシャナちゃん、遺跡で特大パフェをグンちゃんに奢ってもらうって話してたよね? シンクも一緒に着いていって? グンちゃんじゃ、シャナちゃんがお腹壊した時治せないから」
えー、と僕らは自分達の恋人を見る。
シャナと遊ぶよりは、恋人のドレス選びとか色々やってた方が楽しいのだが。
「お願い。ね、アオ?」
「シンク。私達の誕生日パーティーの時、髪の色戻して欲しいな。目も。私の恋人は、グンちゃんよりも格好良いんだって見せ付けたいの」
いや、どっちも僕だから顔の作りとか色々変わらないとは思うんだけど。
とは思ったのだが、それがユエには気に食わなかったらしい。
「はぁ? アオの方が格好良いですけど?」
「シンクはグンちゃんより、大人びてるじゃない。顔じゃなくて、中身の話してるの私は」
「中身も格好良いわよ、アオは!!」
ユタカの言葉にユエが噛みつき始め、姉妹喧嘩が勃発する。
シンクも楽しそうにクックッと笑い始めたが、止めろよお前。
◆◆◆
学園都市の一角、結構人気があるアミューズメントパーク内のお店に、その特大パフェがあった。
僕ら弟を引き連れ、シャナはウキウキでそのパフェを頼み、届いたそれのあまりの大きさに、携帯で写真を撮り始める。
ちなみに僕とシンクはコーヒーのみだ。
「うげ…甘そう…」
大きなグラスの中に、コーンフレークとか、アイスとか色んな味のソースとかがあって、上の飾り付けのフルーツも多種多様。
プリンも乗ってる。
それを見た瞬間、僕は顔を背けてしまった。
「そんな嫌な顔すんなよ、グンジョウ。大体、お前は食わなくてもいいけど、シャナが食えないってなった時の補助要員だぞ、俺は。お前より俺が嫌な顔してぇよ」
「ちょっとー、今から食べる人の横でそんな会話しないでよー」
ぷくー、と頬を少し膨らませて、シャナが抗議してくるが、僕が甘いの得意じゃないのわかってて連れてきてるのだから、少しくらい文句を言っても良い気がする。
というか、文句言わせろアホ。
僕はシンクをチラリと見る。
ユタカから、もう髪色を戻しても良いと言われた弟は、髪の色も目の色も青になっていた。