本当、鏡で見たまんまの僕。
違うとしたら髪の長さと、左手に指輪をしてるかどうかと、眼鏡の有無だけだ。
いただきます、と言ってシャナはパフェを食べ始める。
美味しそうに食べるけど、僕は見ただけで胸焼けしそうだったので、顔を背けたままコーヒーを飲んだ。
そしてひそひそ声が聞こえたので、そちらに耳を澄ましてみる。
「何あの子、男の子二人侍らせて」
「どっちも髪色青だから、王族の人だよね。じゃあ、あの子姉弟の人?」
「そんなわけないじゃん。大体、なんで王族の人がここにいるのよ。むしろ、王族を手玉に取る悪女とか? 無垢な顔してこわーい」
そんな声が聞こえて、僕は眉を寄せた。
こわーい、って、君達の考えの方が怖ぇよ。
邪推しすぎ、頭イカれてんのかクソが。
「グンジョウ、先月から沸点低くなってない? いや、普通の男の子は沸点低いもの?」
「なんで俺に聞くの姉ちゃん。いや、グンジョウの気持ちもわかるけど。大事な姉ちゃん馬鹿にされて、不愉快なんだろ。俺もだけど」
僕の様子に困惑気味になったシャナが、シンクに尋ねる。
シンクも先程の話が聞こえてたようで、ニヤリと笑いつつも目が全く笑っていなかった。
「口悪くなっても良いなら言うけど、姉さんの見た目だけ見て自分達の容姿を全く気にしない醜悪な馬鹿どもに、鏡を突きつけながら言ってやりたいね。その顔のどこに、人を貶せる程の自信があるんだ、頭がイカれてるから人生やり直せってね。あと王族がこういう所に来ないって先入観は、謹んでゴミクズに捨てやがれボケが」
僕の声が聞こえてたようで、さっきまでシャナの悪口を言ってた女の人達が、そそくさと席を立って何処かへ行ってしまう。
それを見てたシャナは、僕へ顔を向け困ったように笑った。
「グンジョウ、辛辣すぎ。あと口悪くて、ユエちゃんに見せられないねその姿。でもあたし気にしないのに、ありがとうねグンジョウ。姉想いのいい子だ、うちの弟は」
「えー、姉ちゃん俺はー?」
テーブルに頬杖を付き、シンクが拗ねたように言う。
お前は子供か、その姿ユタカに一回見せてみろ。
「シンクもいい子だよ。あはは…いやぁ、こんなのが姉でごめんね。弟に迷惑ばっかかけてるわ、あたし」
「いや、僕もかけてるし。シャナだけじゃないよ」
「シャナ、あの馬鹿どものせいでアイス溶けてるから、早く食え。ほら、あーん」
シンクがシャナの手からスプーンを取り、アイスを乗せて姉の口に運ぶ。
なんか、シンクと長年一緒にいるような感覚に陥るな。
いや、僕なんだから当たり前なんだけど。
シンクが補助に入るでもなく、特大パフェをシャナは食べ切った。
それどころか、カレーが食べたいとか言い始めて、流石に僕とシンクは止める。
「シャナ。あと1時間くらいしてから食え、な?」
「冷たいものの後に温かいものを食べると、胃が痛くなるよ? 胃の中で油分とかが反応したりしてさ」
必死になって止める僕ら二人に、シャナはクスクス笑い始めた。
「いや、めっちゃ止めるじゃん! 心配性だなぁ、二人共」
「むしろ、なんでそんな食欲旺盛なの…」
すっ、とシャナは手のひらを差し出してくる。
何だろうと僕とシンクはシャナの手を見ると、そこへ急に何かが現れた。
形状は弾丸のようだが、それにしては大きい。
「シャナ、何これ?」
「おばさんが作った攻撃用デバイスのカートリッジ。魔力を込めて保管しておくの。これで魔力なくなって魔法が使えなくなった時も、使えるようになる代物…なんだけどさ。これ、リブロが解析して危ない使い方教えてくれてさ」
危ない使い方?
魔力を貯めるだけの代物に、危ない使い方などあるのだろうか?
シンクが少し考えていたようだったが、ハッとなってシャナを見る。
「シャナ、まさか…」
「うん、そのまさか。ここに魔力を貯める術式が書いてあるんだけどね、付け足すと爆弾になるの。それでも古代語で書かないといけないから、普通の人はそんな応用は出来ないし。古代語が読めたり使える人でも、どんな書き方をすれば良いかわかんないと思う。威力は…ちょっと、実験してないからわかんない。今度の訓練で使っても良い、グンジョウ?」
シャナの手のひらにあるカートリッジを、僕はマジマジと見る。
現代語で書かれている術式しか見えないから、今はそんな危険性はなさそうだった。
「別に良いけど、これ術式刻んでたら危なくない?」
「起爆するには雷の魔法が必要だから、問題ないよ。もし役に立つなら魔王戦で使おうと思う。グンジョウでも使えるように、魔力満たした状態の何個か渡しておくね。で、これに魔力込めてたらお腹すいちゃっててさぁ」
成程、だからいつもより食欲旺盛だったのか。
魔力使ったらお腹減るもんね。
「おばさんには内緒にしててね」
しーっ、と自分の口に人差し指を立て、シャナはニヤリと笑った。
「いや、筒抜けだと思うけど。そのカートリッジって、おばさんから貰ったの?」