痛む頭を押さえ、僕は謝罪する。
僕らより先に頭を叩かれたシャナが復活して、カヅキおばさんに挙手して尋ねた。
「じゃあ人的被害が出なくて、建物にも被害が出ないってどうしたら良いんですか?」
「結界張れよ。その脳みそも無くなったか、シャナ」
おばさんはやれやれ、と首を振るが、二重三重にシャナが結界を張れないから困ってるんだ、と推測するんだけど。
「じゃあ、おばさん。爆弾の用途とか色々教えてもらえません? 覚えて応用しますんで」
「良いだろう。ではまず…」
シンクに嬉々として爆弾講座をし始めたおばさんを見て、僕は立ち上がってシャナの所に行く。
「大丈夫?」
「いやぁ、痛かったぁ…。でも、上手くやれば魔王にも対抗出来そうだね。うんうん、お姉ちゃん頑張るよ」
ニコリと笑んだシャナだったが、僕の後ろから駆け寄ってきたツルギに抱きしめられて固まった。
「え、あの、ツルギ君…どうし」
「怪我してないか?! 凄い音だったが、耳やられてないか?! シャナ…あまり心配させないでくれ…」
仲がよろしい事で。
僕は肩を竦め、訓練場から去る。
姉の様子を見て、ユエに会いたくなったから。
それにあの音を聞いて、多分驚いてるだろうから説明しなくては。
◆◆◆
「驚いたけど、あれその音だったんだ。近くで魔法師団が訓練してるのかと思った」
「衝撃がこちらに来なかったのは、カヅキおばさんの結界が城を覆っていたからだろうね。つくづく転生者って奴はすごいなぁ…と、ごめんねユタカ。シンクじゃなくて」
ドレスのフィッティングルーム。
ユエに会いたくてメイドに行き先を尋ねたら、ここだと教えられたので、少し躊躇しながらもノックしてみる。
出てきたのはここの専属であるメイドだが、待合室的な所で待機するよう言われ、ここで待つ事数分。
ユエではなくユタカが、緑色のドレスを着て出てきたので先ほどの経緯を説明していた所だった。
ううん、とユタカは首を横に振る。
「シンク、ママから…何だっけ、シャナちゃんが考案した爆弾? の作り方とか、やり方とか教えてもらってるんでしょ? シンクね、将来研究職に付きたいって言ってたの。私は、何するかまだ決めてないんだけど…シンクと一緒に大学に行って、彼を支えたいなって、そう思ったんだ。まぁ、大学受かる頭してるかって言われたら、そうじゃないんだけど」
てへへ、と笑うユタカに、僕は笑いかける。
「ユタカは努力出来る子だから。好きな人の為に、全力で頑張れる子。だから、ちゃんと受かるよ。分からない所があったら、僕も教えるから」
「グンちゃん…ありがと。でも、他の人にもその笑顔向けたらユエが嫉妬するから、あまり笑いかけない方がいいよ」
鋭い視線を感じ、僕はそちらの方に顔を向ける。
ユエがドアの隙間から、僕らを睨んでいた。
「アオ…」
「浮気じゃない! 浮気じゃないから!! あぁ、もう!! いい加減にしろ、ユエ!! 何で疑うんだ、お前は?! 良い加減抱き潰すぞ!!」
そう怒鳴ると、ユエは顔を真っ赤にして無言で扉を閉める。
グンちゃん、とユタカが少し困ったような声を出したのでそちらを振り向いた。
「その発言、ママに聞かれてると思うよ…?」
「ユエとヤってないのはカヅキおばさんも知ってるから…いや、うん。感情に任せて怒鳴ったのは悪かったけどさぁ…もうこの痴話喧嘩何回目だよ…。あぁ言われてさぁ…もう言われたくないんだけど…」
カヅキおばさんとユーリおじさんに許可もらって、一回ヤった方が…いや、親に許可取るって何?
僕は自分の顔を覆って俯いてしまう。
そんな僕の頭を、ユタカは苦笑しながら撫でてくれた。
「グンちゃん格好良いからねぇ。ユエも気が気じゃないんだよ」
「ユエ以外の女なんて、目に入るわけなくない? 何、そんなに僕って浮気者とか思われてるわけ? うわー…死ねるわ…僕凡人だからさ、体も結構一般人並みなんだよね…城の上階から飛び降りてやろうかこの野郎…」
ユタカが慌ててユエを呼びにいく。
そんな時ちょうど、カヅキおばさんの講義が終わったらしいシンクと、一緒についてきたシャナとツルギが僕の様子を見てギョッとなっていた。
「え、グンジョウ、またユエちゃんと喧嘩した?」
僕を抱きしめつつ、シャナが頭を撫でてくる。
あぁ、幼児返りしたい…。
オギャりたい…。
「だってさぁ…浮気者扱いされてさぁ…」
「いじけ虫なってら…おい、ユエ。もうそろそろ良い加減にしろよ。お前、この状態のグンジョウとパーティー出るつもりか?」
ユタカに連れられてきたユエは、道中ユタカに怒られでもしたのか若干涙目になっていた。
みんなからの白い目に、ユエは怒鳴る。
「だって、アオがユタカとイチャついてるように見えたんだもん! アオは私の婚約者なのに!」
「世間話してただけだろ?! なんでそんな発想になるんだよ!!」
どうどう、と僕はシャナ、ユエはユタカに宥められる。