my way of life   作:桜舞

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16話『はい、僕ですね』

シャナ達もそれに勘付いたのか、僕と同じく歩みが止まった。

 

「おい、ナズナ。別にグンジョウが悪いわけじゃないだろ。グンジョウはナツキに相談しただけだ。実の息子だからって、そこまで殺気を放つんじゃない。可哀想だろ」

 

先程の様子と違って、カヅキおばさんは冷静に父様に苦言を呈している。

しかし父様は怒り心頭のようで、腕を組み僕を見ていた。

その眼光の鋭い事といったら…それで人を射殺せるのではと思うくらいで、僕も気絶したくなる。

しないし、出来ないけど。

 

「…シャルが倒れたんだ。この怒りは誰にぶつければ良い」

 

はい、僕ですね。

むしろ、僕の人生ここまでかもしれない…。

 

内心合掌していると、シャナが僕の服を掴み恐る恐るといった風に、僕の後ろから父様を見る。

 

「あ、あの…」

「てめぇの娘も怯えてんじゃねぇか。いい加減にしろ、馬鹿!」

 

父様の後ろに控えていたカヅキおばさんが、父様の頭を殴った。

その瞬間、殺気が消え失せる。

 

背後の気配が下に下がったのに気付き、僕はシャナが引っ付いているのとは逆方向に、後ろを見た。

ユエとユタカが、座り込みながら肩で息をしている。

父様の殺気に当てられてしまったようだった。

 

「ユエ、ユタカ、大丈夫?」

「ごめん、グンちゃん…腰抜けた…」

「同じく…」

 

二人の様子を見たカヅキおばさんが、更に父様の頭を殴る。

普通なら不敬罪になる所だが、カヅキおばさんに至ってはそれは不問にされていた。

 

だってやる事成す事、全てカヅキおばさんが正しいから。

 

「………」

 

無言になってしまった父様に、僕は頭を下げる。

 

「母様が倒れたのは僕のせいです。本当にすみませんでした」

「そ、それなら原因作ったのあたしじゃん! ごめん、父様!!」

 

シャナも僕同様に頭を下げた。

そんな僕達を見て、父様はため息を吐く。

 

「こっちこそすまん…シャルが倒れた事で気が立っていた」

「精神的ショックが強すぎたんだ、暫くすれば起きる。で、グンジョウ、シャナ。そこの扉閉めろ…娘達が邪魔だな。ルル、レイラ、すまんが外に引っ張り出してくれ。私が良いと言うまで、誰も部屋に入れるな。ナツキもだぞ」

 

ルルとレイラが、苦笑しながらユエとユタカを引っ張って行った。

それを見届け、僕らは扉を閉める。

扉を閉めた直後、カヅキおばさんは片手を上げた。

魔法陣が展開され、何かの術式が発動される。

一体何が発動したのか、僕にはさっぱりだったが。

 

「さて。今朝の話をもう一度聞かせろ、シャナ」

 

カヅキおばさんの促しに、シャナは僕を見る。

僕は頷き、シャナの手を握った。

 

見た夢の内容を話すと、カヅキおばさんはシャナの前に来る。

そして僕を見て、

 

「グンジョウ、お前は頭が良い。今からラーニングさせる言語を覚えろ。それから、シャナの見た夢をお前に見せる。シャナがわからないと言った言語を、お前に解読してもらう」

 

なんて無茶苦茶な、とは思うが、それが出来てしまうのが転生者という者だ。

 

「拒否権はない、ですよね」

「なんだ、姉の為に体を張りたくないというのか?」

 

意地悪な聞き方をしてくるおばさんに、僕は肩を竦める。

分かっているくせに、そう言うのだこの人は。

 

「シャナは僕の姉です。いくらでも体を張りましょう?」

「よく言った、ではラーニングさせるぞ。壊れてくれるなよ?」

 

なんて怖い事を言うんだ、カヅキおばさん。

壊れたらどうしてくれると言うんだ。

いや、直せそうだなこの人なら。

 

カヅキおばさんが僕の額に触れる。

途端、リューネとは違う言語が頭に流れ込んで来た。

 

何だ、この言語…頭割れそう…。

 

意識が飛びそうになるが、シャナと手を繋いでいる感覚が、僕を引き留める。

 

「《さて、どうだ? 群青》」

 

おばさんが僕に覚えさせた言語、おばさんや母様の故郷の言語である日本語。

ちゃんと聞き取れる…。

 

「《ちゃんと発音出来てますか、夏月(かづき)おばさん》」

「《出来てるな。流石は(なずな)夏月(なつき)の息子だ》」

 

シャナと父様は首を傾げている。

これが日本語か…。

文字は…覚えないでおこう…なんか面倒くさい気配を感じるし。

 

「さて、じゃあシャナ。お前の記憶を読み取って、グンジョウに渡す。良いな?」

「う、うん…」

 

シャナの額にも触れ、カヅキおばさんの足元に魔法陣が展開される。

そこで僕の意識は途切れた。

 

◆◆◆

 

次に目を開けると、そこはどこかの部屋の中だった。

僕の目の前には何かがあり、目が暗闇に慣れるまでに時間がかかる。

カーテンは開け放たれている。

そのはずなのに、部屋は常闇に包まれていた。

 

「………っ!」

 

誰かが息を呑む声が聞こえる。

雲がかかっていて暗かったのか、雲の隙間から月明かりが入り込み、僕の目の前には天蓋付きのベッドが見え、その上に人影が見えた。

 

「みや、づか…?」

 

か細い、女の子の声が聞こえる。

宮塚、という名前には聞き覚えがあった。

カヅキおばさんが電話口で母様に言っていた名前だ。

 

それがどうしてここで出てくるのか?

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