椅子に座り、メイドが持ってきてくれた軽食を二人で食べながら話す。
「というか、アオがキッパリ言ってくれて良かった。狼狽えたらどうしようかと…」
「え? あぁ、ツェリが側妃の話した時? 有り得ないでしょ、どう考えても。それに、僕は君との子供は欲しいとは思うけど、別に強制じゃなくても良いとは思ってるんだ。出来たら出来たでいいし、出来なかったら僕以外にも兄弟姉妹が多いんだから、その子供に継がせれば良い。僕はユエと、ずっと一生一緒に過ごせれば、それだけで良いんだよ」
彼女に笑いかけると、ポロポロとまたユエは泣き出した。
今日は涙腺弱いのかな?
ハンカチはもうないので、ワイシャツの袖で涙を拭ってやる。
「アオ、私…っ!」
「うん。周りから何か言われるかもしれないし、君に対して言ってくる連中もいるだろう。でもね、ユエ。出産って、すごく痛いらしいんだ。話を聞くところによると。そんな痛い事、君に経験させたくはないかなぁ、ってちょっと思うんだよね」
母様は痛覚遮断で、僕とシャナ以外を産んだって話してたし、僕らを産んだ時の話なんて、
「1人だって診断だったのに、全然激痛が治らないからなんだと思ったら2人目いるって言うのよ? 有り得なくない? すっっっっごく痛かったんだから!!」
と聞かされた事があるので、そんな苦しみをユエに味合わせたくない。
「そんな事いう連中、君に二度と近づけたくないから言われたら言ってね。王の権限で、すぐ地方に飛ばすから」
「アオ、それは暴君すぎるよ…ふふ…でも、ありがとう。大好き、アオ」
僕も、と言って彼女の手の甲に口付ける。
軽食を食べ終えた僕は立ち上がり、上着と軽食が乗っていた皿を持った。
もうそろそろ招待客達も帰っただろうし、誕生日だからと今日は訓練も免除されている。
と、誕生日で思い出したので、僕は皿をもう一度テーブルに置き、ポケットに手を入れた。
「アオ?」
「ユエ、17歳の誕生日おめでとう。これ、実はシルフ3の月のデートの時に渡そうと思ってたんだけど、渡せなくて。遅れちゃったけど、受け取ってくれる?」
ポケットから出した小さい小袋を、ユエに渡す。
何だろうと首を傾げた彼女は、僕に開けて良いか尋ねてきた。
頷くと、ユエは小袋を開けて手のひらに出す。
コロコロと彼女の手に落ちてきたのは、ペリドットのノンホールピアス。
ペリドットは、ユエの誕生石である。
「これ…」
「君の誕生石をノンホールピアスにした物。そんなに高価じゃないから、無くしても別に大丈夫だよ」
無くすわけないじゃん!
そう言って彼女は、一つを自分の右耳につけ、もう一つを僕に近寄って、同じく右耳につけた。
「ユエ?」
「お揃い。また増えたね、アオ。えへへ…嬉しい。でも、アオ…赤いやつ付けてるけど、これは?」
左につけてるノンホールピアスが気になったようで、ユエが尋ねてくる。
「あぁ、これ? 幼等部に入る時に泣いていた僕とシャナに、母様がくれたお守り。こういう、式典とかあった時につけるようにしてるんだよ」
「じゃあ、私もこれお守りにするね。アオが守ってくれてるって、感じられるから」
傍にいるんだけどなぁ…。
まぁ、心理的にって話ならそれは良いか。
「じゃあ、僕はそろそろ部屋に帰るね。おやすみ、ユエ」
皿を持ち、彼女の部屋を後にしようとする。
「おやすみなさい、アオ。また夢で逢えたらいいね?」
最近夢も見ないで寝てるから、ユエが夢渡り出来ないと嘆いていたっけ。
「そうだね。また夢で、ユエ」
今度はちゃんと部屋を退出し、通りかかったメイドに皿を返却した。
そのまま自室に帰り、ソファーに上着を投げ、ベッドに倒れ込む。
「やべぇ…くそねみぃ…」
これはまた夢見ないで寝そう。
ごめんユエ…明日の朝謝るから、許して欲しい…。
僕は掛け布団を羽織る事も出来ず、そのまま眠りに落ちた。
◆◆◆
目を開ける。
僕は、何処かのホームに立っていた。
周りが全て灰色で、人は誰もいなかったが。
「ここは…」
夕陽の記憶で見た、あの時の…。
僕はハッとなって、記憶を頼りに雪那がいるであろうホームに走る。
人がいないおかげで、すんなり辿り着く事が出来たが、雪那の背中を桃華が押そうとしている所だった。
「っ!! 雪那ぁっ!!」
僕の叫び声に、彼女が振り向いた。
そして呟く。
「アオ…?」
振り向いた彼女は、雪那ではなくユエで。
叫び声に振り向き、目の前で自分を押そうとしている桃華の腕を掴んで、スイングで来ていた電車の前へ、彼女を投げた。
反動で倒れかけるユエを、僕は抱き止める。
「ユエ?! なんで…」
「…多分、ここ私の方だ。アオの夢じゃない…」
ユエも驚いているようで、電車に轢かれたであろう桃華の方を見ていた。
「いつも、こんな夢見てるの?」
「いつもじゃないけど…たまに。びっくりして飛び起きる事あるんだけどね。でも、アオ…助けてくれてありがとう。声掛けられなかったら、多分また落ちてた…」
僕は、強く彼女を抱きしめる。
今度は、助けられて良かったと思いながら。
「何回でも、助けるよ。これは、僕の後悔でもあるから」
「アオ…うん。大好き」
僕らは口づけを交わす。
ユエが悪夢を見るなら、僕は何度だって彼女を救ってみせる。
僕の愛しい人が苦しむなんて、耐えられないから。
蛇足を書きすぎるなぁ…
勝手に喋るから、困るんだが