my way of life   作:桜舞

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166話『ユタカも前世を思い出した』

そもそも、カヅキおばさんの結界で悪意を持つ者は城の中に入れないし、僕らの居室とか執務室があるエリアなんかは、これまたおばさんが仕掛けた術式で正しい順路を行かないと来れないようになっている。

 

そっとドアを開けると室内は暗く、規則正しい寝息が聞こえてきたので、僕は声をかけながら室内に入ろうとした。

瞬間、枕が僕目掛けて飛んできたのでそれを片手で受け止める。

 

「…おい、グンジョウ…これって…」

「今日は寝起きが悪い日だったみたいだね…シャナー? もう朝…っていうか昼に近いけど、起きてくれない? シャナ以外みんな集まってるんだけど」

 

ううーん、という声と共に、更に室内にあるクッション類が飛んでくる。

それらは勢いはあるが、別に当たった所で痛くもないので、受け止めて足元へ置くという事を何回か繰り返す。

 

「寝起き悪いってレベルかよ、これ。なんでお前そんな平然と出来るわけ?」

「酷い時だと、ドアごと固定されて開かないからまだマシな方だよ。なんでって、シャナともう16年の付き合いだからね。こんなの日常茶飯事というか何というか。シャナ!! 起きろって言ってんだろ!!」

 

うーん、と言いながらシャナは起き上がり、目を擦りながらこちらを見た。

 

「おはよーグンジョウ…あれ…シンクもいる。おはよー…」

「おはよう。聞こえてなかったようだから、もう一度言うけど。もうシャナ以外集まってるから、早く身支度してくれない? ツルギも待ってるよ。二度寝すんなよ、馬鹿姉」

 

誰が馬鹿姉だ!

とシャナは怒鳴りながら、まだベッドにあった枕を投げつけてくる。

ベッドからここまで結構な距離があるが、魔法を駆使して僕に当てに来たようだ。

まぁ、受け止めて足元に置くのだが。

 

よし、シャナを少し怒らせて完全に目を覚まさせる作戦、上手くいったな。

これで二度寝しないだろう、多分。

 

部屋の扉を閉め、待つ事数分。

ドアが開いて、シャナが出てきた。

いつもの髪型に、白いワンピースと茶系のアウターを羽織っている。

どこかに遊びへ行くかのような格好だ。

 

「シャナ、今から火山行くんだよ?」

「魔法で防護すれば、服とか肌は焼けないはずだよ? 良いじゃん、オシャレしたって」

 

いや、そんな軽装で大丈夫? って言いたかっただけなんだけど。

まぁ、魔法の練度が高いシャナが言うんだから、大丈夫なんだろう。

 

「シャナ、寝起き悪いからってあれはないわ」

「え? 何の話?」

 

シンクの言葉に、シャナはキョトンとしながら問う。

無意識だから、自分が何をやっているかなど理解出来るわけがない。

 

「あの山見ても何も思わねぇのかよ…」

「……えーと、グンジョウ? あたし、またやらかした?」

 

クッションの山を見たシャナが、恐る恐る僕に尋ねる。

 

「アレよりはまだだいぶマシな方だけど…シャナ、ツルギと一緒に生活するってなった時は、これ説明しておいた方がいいとは思うよ? 流石に僕も最初は驚いたからね」

「アレってなんだよ?! まだこれより怖いのがあるっていうのか?!」

 

僕の肩を掴み、シンクが叫ぶ。

なんでこんなに錯乱してるんだ、こいつ。

 

「遅いから迎えに来たけど…グンちゃん? なんでシンク涙目になってるの?」

「ユタカーっ! ポルターガイスト初めて見た!! こえぇよ、あれ!!」

 

僕から手を離し、シンクはユタカに縋り付く。

あとポルターガイストって何だ?

何かの魔法名か?

 

「シンク…ポルターガイストなんて、この世界じゃ起こらないよ。幽霊じゃなくてスピリットだし、いるの。本当に、日本ホラーは平気なのに洋物のホラーは苦手なんだね。よしよし、怖かったねー。何があったかは知らないけど」

 

シンクの頭を撫でながら、ユタカがクスクス笑う。

その笑顔に少しの違和感を覚えた。

 

「ユタカ?」

「うん? 何、グンちゃん?」

 

ニコリと僕に微笑んでくるが、やっぱり違和感しかない。

ユタカなのに、ユタカじゃないような…。

 

「グンちゃん、私も前世を思い出しただけだよ。ただユエと違って、最期は老衰で死んだ遠李雪那。ずっと夕陽だけを想って、誰からの告白も求婚も断って、一人で死んだの。だから、同じ夕陽であるグンちゃんに執着しちゃってたんだ、ごめんね」

 

申し訳なさそうに笑うユタカに、桃華があの時言った事は本当だったのかと思った。

 

「ユタカ…」

 

シンクが悲しげな声を上げ、ユタカを見上げる。

そんな弟を見て、彼女は微笑んだ。

 

「うん、そんなに悲しまないでシンク。昨日も話し合ったでしょ? 私は、貴方と会えて幸せだった。貴方と出会って、付き合った数年は本当に幸せな日々だった。事故で死んでしまったのは悲しかったけど、それでも貴方にもう一度会いたかったから。貴方と添い遂げたかったから、一人でいたんだよ。シンク、私は今度こそ最期まで貴方と一緒にいたいんだよ?」

 

ユタカも前世を思い出したから、あんな風に雰囲気が変わったのか。

もしも、僕が完全に前の僕を思い出したら…ユエは、どう思うのだろう。

変わらないか、もしくは…。

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