my way of life   作:桜舞

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167話『出来るの、出来ないの』

「あのさ、イチャイチャしてないで早く行かない? なんでみんなして、シャナちゃんの部屋の前にいるの?」

「ユエ」

 

ユタカが僕らを呼びに行ったのは良いが、いつまでも戻ってこないから痺れを切らしたのだろう。

ツルギも連れてきているのは、起こしたは良いもののシャナが二度寝をしているのでは、と危惧したからだろうな。

恋人直々に起こせば起きる、とでも思ったのかもしれなかった。

 

「…もうそろそろ、行こうと思ってた所だよ。さてザイクン火山だけど、普通の火山じゃない事はみんな知ってるよね?」

 

ツルギ以外が頷く。

僕は彼の為に、説明を始める。

 

「ザイクン火山は、その名前の通り火山なんだけど。麓に穴が開いていてね、中に入れるんだよ。普通の火山は頂上に火口があって、そこから噴火するだろ? ザイクン火山は噴火はせずとも、マグマが揺蕩う山でね。一部は観光スポットにもなっているんだけど…何分熱い。熱波を浴びて火傷、なんてのはザラらしい」

 

へー、という顔をするツルギと、シャナの格好を見て、そんな服装で大丈夫なのというユエとユタカの視線を気にしていない姉を見ながら、僕は苦笑した。

 

「そういう注意書きが書いてあるって聞いた事があるけど…まぁ、魔王の遺物がそんな観光スポットの付近にあるわけないから、関係者以外立ち入り禁止、みたいな札がかけられてる危険地帯にあるんだろうね」

「じゃあ、さっさと行こうよ。明日からまた学校だし。シャナちゃん、はい栄養補給」

 

ユエが収納空間からゼリー状の栄養補給剤を取り出し、シャナに渡す。

受け取った姉は、微妙そうな表情をしていたが。

 

「えー…ご飯…」

「食べたかったなら早く起きるべきだったね。はい、出発! 時間は有限だってママいつも言ってるからね!」

 

シャナを後ろから押しながら、ユエは歩き出す。

押されてる姉はパッキングを外し、チューチュー音をさせながら栄養補給剤を飲み始めた。

 

お腹空いてたんだね、シャナ…。

そしてなんでそんな物持ってるの、ユエ?

常時持ち歩いてるの?

確かに収納空間の中は時が止まってて、中に入れたものは腐らないとはいえ。

流石の僕も驚きなんだけど。

 

◆◆◆

 

ザイクン火山の管理事務所に行き、王城からの書状と事情を説明して、その危険地帯に入山させて貰える許可を取った後、関係者以外立ち入り禁止のテープが張られている場所へ行く。

 

「これさぁ…係員とかの目を盗んで入る奴、絶対いるよね」

 

ユエがテープを見つつ呟いた。

それは僕も思うけど、そんなあっちの世界じゃあるまいし、何かしらの対策はされているはずだ。

だってこの世界は、魔法があるんだから。

 

「ちゃんと結界張ってあるよ。そんな杜撰な管理してたら、事故ばっか起こって国の管理になってるよここ」

 

シャナがテープの張られている空間を触る。

パン、と軽めの音がして結界が解除されたようだった。

みんなテープを跨いだりして、中に入っていく。

 

「だよねぇ。ユエ、あっちの常識持ち込むのやめなよ。日本というか、地球では魔法じゃなく化学が発達してたけど、こっちは魔道科学っていうものが…」

「いや、知ってるし。仕方ないじゃん、そう思ったんだから」

 

軽い姉妹喧嘩を始めた二人を眺め、僕は苦笑する。

ユタカの方がユエより人生経験が長い分、少し口喧しくなってしまっているようだ。

僕らの中で、一番精神年齢が高いのはユタカなのかもしれない。

 

「やらねーぞ」

 

僕と共に後ろで歩いていたシンクが、ボソッと僕にだけ聞こえる声で言う。

 

「誰が、ユタカが欲しいって言ったよ。まぁ、正直な話。ユタカが最初からあの状態だったら、ユエではなく彼女を選んでいた可能性はある。でも、そう心配するなよシンク。僕は今、ユエに溺れているんだから。彼女以外の女なんていらない。それはお前もだろ?」

 

僕もシンクに小声で返しながら、そう問う。

まぁな、と弟はユタカを見つめながら笑った。

 

「はい、ストーップ。ここから溶岩地帯だから、一回止まって。イフリート!」

 

先頭を歩いていたシャナが立ち止まり、僕らにも止まるよう告げてくる。

そして姉はあろう事か四大の一精霊であるイフリートを呼び出した。

 

ゴォッと音がし、炎が現れ人を形作っていく。

 

〈呼んだか、愛し子〉

 

筋骨隆々のイフリートが、腕組みしながらシャナに問いかけた。

 

「少し溶岩の勢い抑えてよ。熱いんだけど」

 

こんな生意気な口が聞けるの、シャナだけだろうなぁ。

父様なんて、ミラ様が口を開く度に威圧で意識が飛びそうになるとか言ってたのに。

僕も、流石に四大と一対一なら気絶するかもしれない。

 

〈ふん、この熱さが分からぬとは〉

「そういうの良いから。出来るの、出来ないのどっち? 出来ないなら、別の人呼んで何とかしてもらうだけだから」

 

シャナが腰に手を当て、ジト目でイフリートを見ている。

そんな目で見られ、彼は少し狼狽え始めた。

 

〈し、しかしだな、愛し子よ…〉

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