「言い訳はいい。出来るか出来ないかだけ言って。イフリート達には無限の時間でも、あたし達にはそんな悠長に待ってる暇ないんだってば」
はっきり言うなぁ、流石精霊の愛し子。
我が姉ながら、四大狼狽えさせるとか正気とは思えないよ。
「グンジョウ、煩い」
「すみません姉君」
おっと、無意識の思念が行っていたようだ。
シャナに睨まれてしまったので、僕は両手を上げる。
「イフリート?」
僕からイフリートに目を向け、シャナは彼の名を呼ぶ。
わかった、とイフリートは言いその両手を叩いた。
〈これで、マグマの活動は止めた。まったく、愛し子は…本当に、あの娘の子よな…〉
「何、母様の悪口?」
ギロ、とシャナの眼光が鋭くなる。
母様から聞いた事があるが、初めてミラ様に会いに行った時、母様はシルフとイフリートと戦った事があるという。
半ば無理矢理だったけど、なんて母様は笑っていたが、四大と戦って勝ってる母様って…と、その当時は思ったものだ。
「シャナ、もうそろそろ昼だ。遅くても、訓練前に帰らねぇと」
「そうだね。ありがとう、イフリート。帰って良いよ」
扱いが、と少ししょんぼりしながらイフリートは消える。
イフリートにちょっとだけ同情しながら、僕らは溶岩地帯に足を踏み入れた。
「うわ…これで鎮静化してるってのか? 落ちたら一たまりもねぇじゃねぇか…」
人が通れる道ではあるが崖下はマグマの海で、シンクの言う通り、落ちたらなす術もなく即死な事は想像に難くない。
それに、鎮静化しているとはいえ熱風は凄まじく、長時間活動していたら全身火傷する事間違いなしである。
「流石に、これはねぇ…」
「ユタカちょっと魔力貸して」
ユエがユタカに手を差し出す。
何をする気なのかわからないが、ユタカは素直にユエの手を握った。
「仄白き氷結の王、眼下に猛る焔を鎮めたまえ。
氷結魔法をユエはマグマに撃つ。
その手があったか、とシンクは呟き、弟もマグマに氷結魔法を撃ち始めた。
「…これ、大丈夫なやつ?」
「さぁ…?」
僕の疑問に、ツルギが首を傾げる。
数分後マグマはすっかり冷えて固まってしまい、若干の寒さと、マグマの光源が無くなった事により暗くなってしまった洞窟内で、シャナが
「よし、これで落ちても平気になったな」
「…後でイフリートに元に戻してもらってね、シャナ。流石に、観光地潰すのは国にとっても痛手だろうから」
当たり前でしょ、と返す姉だったが、言わなかったら絶対忘れてるはずだ。
だってシャナだし。
「じゃあ、反応あったって辺りまで降りてみるか。というか、結構道分かれてるな…グンジョウ、スキルで分かったりしねぇ?」
「そんな万能ではないのは、お前も分かってるだろ。むしろお前がやれよ。僕と同じスキル持ってるんだから」
へーへー、とシンクは収納空間から、昨日見た人形を数体取り出し始めた。
どう見てもアンナの人形だ。
こいつ、パクってたのか…いつの間に。
「シンク…」
「あそこに放置されてた奴を持ってきただけだっての。そんな非難がましい目で見んなよ、グンジョウ。大体、これはアンナにとって消耗品扱いだ。それを有効的に使ってやろう、って話なだけだろ?」
それはそうなのだが。
そして、普通に見ていただけなのだが、僕そんな目つきになっていたのか。
気をつけないと。
眼鏡を外し、僕は目頭を押さえつつそこを揉む。
ユエが心配したのか、僕の腕に触れてきた。
眼鏡を掛け直し、僕は彼女に微笑む。
シンクはそんな様子の僕らに肩を竦め、人形にスキルを使った。
人形が、僕がスキルを使った時と同様青黒く染まっていき、1人でに動き出す。
「お前はあっち、お前はこっち。マッピングも兼ねてるから、行き止まりなら引き返して別の道を。良いか、危険があったらすぐに知らせろ。行け!」
シンクの支配下にある人形達が方々に散っていく。
僕はそれを見つつ、弟に聞いた。
「なぁ、シンク。僕らの能力って、無機物にしか効かないのかな?」
「
だよな。
もし、桃華が出した魔獣とか支配下に置けたら、戦闘も多少は楽になるんじゃないかと思ったんだけど、そう簡単な話ではないか。
そうシンクと話していると、ツルギが挙手する。
「あの、なんで魔王は遺物を集めているんでしょうか? そんな事をしなくても、魔獣とか色々呼び出して、総力戦をした方が…効率がいい気がして」
「確かに。何でだろう…桃華に聞いた方が早い気がするけど」
桃華の名前を言った瞬間、ユエが僕に抱きついてくる。
僕がその名前を口に出す事が嫌なのだろう。
抱きついてきた彼女の頭を、僕は優しく撫でた。
「ん? 反応が消えた…ここか。グンジョウ、場所わかったぞ。マッピングも終わった。最短距離で行くぞ」