my way of life   作:桜舞

169 / 408
169話『心配させたシンクが悪い』

「わかった。ユエ、みんな。行こう」

 

全員が頷き、シンクの先導で僕らは最深部へと歩みを進めた。

 

◆◆◆

 

人形の反応が消えた場所に着き、僕らは辺りを見渡す。

ここまで氷結魔法は届かなかったようで、熱風とマグマの光量があった。

 

「魔棍無さそうだね…」

「でも、ここで人形の反応が消えたって事は、絶対何かあるはずなんでしょシンク?」

 

ガチリ、と魔武器の撃鉄を起こしながら、ユエがシンクに尋ねる。

彼女はまた、マグマに氷結魔法を撃とうとしているようだ。

 

「その筈なんだけどな。ちょっとお前ら、ここで待っとけ」

 

そう言いつつ、シンクが中に入っていく。

入り口から中を覗くと、中央の部分を残してあとは崖という、何とも不思議な空間になっていた。

そこまで続く道を歩き、逆すり鉢状になっている中央の部分に辿り着いたシンクは、おもむろに崖の縁まで歩いて行き下を覗き込んでいく。

 

「シンク!! 危ないよ!!」

 

ユタカが声を張り上げるが、大丈夫だとでも言うように、シンクはこちらを見ず手をヒラヒラと振った。

何回かその動作をしていった弟は動きを止め、こちらを見て手招きする。

どうやら、見つけたようだ。

 

歩きながら、ユエが氷結魔法をマグマに向けて撃ちまくり、マグマを固まらせる。

そんなに魔法使ったら、魔力切れを起こさないだろうかと、僕は見てて心配になってしまった。

 

「シンク!!」

 

ユタカが駆け寄り、シンクに抱きつく。

とても心配していたのは、隣で見てて分かっていたので彼女のこの行動も仕方ない。

少しよろめいた弟だったが何とか踏ん張り、ユタカの頭を撫でた。

 

「ユタカ、落ちるって」

「心配させたシンクが悪いんでしょ?! もう…危ないって言ったのに…聞かないんだもん。シンクの馬鹿…」

 

彼女の頭を撫でつつ、シンクは苦笑いを浮かべる。

別に落ちた所で飛行魔法を使えば良い、とか思っていそうだった。

まぁ、別に磁場が乱れて魔法が使えない、なんて事はなさそうなので、僕とツルギ以外は落ちても大丈夫そうだな、なんて頭の片隅で思う。

 

「良し…これでアオが落ちても大丈夫でしょ」

「その為にやってたの、君? 魔力とか大丈夫? あー…僕じゃどうにも出来ないから、無理そうならシャナとお願いしたいんだけど…」

 

僕が魔力回路を循環させる為には、相手とキスをしなければならない。

これはシャナで実証済みだから、ユエとでもそうなるだろう。

流石に今は身の危険を感じてはいないので、した瞬間ユエを襲う自信しかない。

 

最低だな、僕。

城に帰ったら母様に相談してみようかな…煩悩封じてくれないかって。

 

「まだ平気。シンク、魔棍どこ?」

「そこの崖下。マグマギリギリのとこに刺さってやがる」

 

シンクが指差した先、僕とユエは崖下を覗き込んで見る。

確かに、マグマ溜まりの近くに魔棍と思われる物が突き刺さっていた。

今はマグマが冷えて固まっているので、取りに行こうと思えば出来るけれど。

 

「取ってこようか」

「なら私が行くよ。アオ、浮遊魔法使えないでしょ?」

 

使えませんけども。

脚力強化で取りに行くでは厳しいですか、ユエさん。

 

ユエが浮遊魔法を使おうとした瞬間殺気を感じ、僕は彼女を抱えて飛び退った。

僕らがいた場所に槍が刺さり、ゲラゲラ笑いがその空間内に響き渡る。

 

「それ、アタシのダから! ダレにも、渡すもんカ!! あっハはハハは!!」

 

暗闇から桃華が現れた。

だが、その姿に僕らは唖然としてしまう。

 

最初に見た彼女の姿より肌が所々爛れ、髪はボサボサで艶はなく、服も破れている箇所が多く、そこも肌が爛れ落ちていた。

 

「桃華…」

 

ツルギが桃華の名前を呼ぶ。

変わり果てた姿を見て、思わずといった感じだった。

チラリと、桃華はツルギを見る。

 

「つる、ギ…? …ヒヒ…ヒャハ…ァハハはハハ!! それ、あたし、ノ?! フフ、ツル、ぎ!! だーいすき!!」

「?!」

 

手首から銃を出し、桃華はツルギに向けて撃つ。

桃華の言葉に驚いて反応が遅れたツルギを、シャナが物理防御魔法で守った。

 

「ツルギ君!!」

「わ、わかってる…! すまない、シャナ…!」

 

シャナの叱咤に、ツルギは謝る。

桃華が初恋だって言ってたっけ、ツルギの奴。

後でシャナに滅茶苦茶怒られるやつだな、あれ。

 

桃華は笑いながら銃を乱射し、僕は必然的に、防御魔法を使っているユエの影に隠れる形になった。

 

「近付けないな、あれじゃ…」

「…あの性悪女…っ!! あぁ、腹が立つ!!」

 

苛立たしさで、ユエが歯軋りをする。

僕は苦笑いを浮かべつつ、彼女の手を握った。

 

「アオ?」

「ごめん、ユエ。少しだけ魔力頂戴。本当なら、シンクかシャナとリンク繋ぎたいんだけど、あの攻撃で離されちゃったから。この状況を打開する。失敗したら、回復お願いして良い?」

 

にヘらと笑うと、ユエは僕が何をしようとしているかを理解したようで、フルフルと首を横に振る。

 

「ダメ、絶対にダメ。いくらアオの反射神経が優秀でも、賛成出来ない。アレの軌道を読むなんて、絶対に無理だよ!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。