「わかった。ユエ、みんな。行こう」
全員が頷き、シンクの先導で僕らは最深部へと歩みを進めた。
◆◆◆
人形の反応が消えた場所に着き、僕らは辺りを見渡す。
ここまで氷結魔法は届かなかったようで、熱風とマグマの光量があった。
「魔棍無さそうだね…」
「でも、ここで人形の反応が消えたって事は、絶対何かあるはずなんでしょシンク?」
ガチリ、と魔武器の撃鉄を起こしながら、ユエがシンクに尋ねる。
彼女はまた、マグマに氷結魔法を撃とうとしているようだ。
「その筈なんだけどな。ちょっとお前ら、ここで待っとけ」
そう言いつつ、シンクが中に入っていく。
入り口から中を覗くと、中央の部分を残してあとは崖という、何とも不思議な空間になっていた。
そこまで続く道を歩き、逆すり鉢状になっている中央の部分に辿り着いたシンクは、おもむろに崖の縁まで歩いて行き下を覗き込んでいく。
「シンク!! 危ないよ!!」
ユタカが声を張り上げるが、大丈夫だとでも言うように、シンクはこちらを見ず手をヒラヒラと振った。
何回かその動作をしていった弟は動きを止め、こちらを見て手招きする。
どうやら、見つけたようだ。
歩きながら、ユエが氷結魔法をマグマに向けて撃ちまくり、マグマを固まらせる。
そんなに魔法使ったら、魔力切れを起こさないだろうかと、僕は見てて心配になってしまった。
「シンク!!」
ユタカが駆け寄り、シンクに抱きつく。
とても心配していたのは、隣で見てて分かっていたので彼女のこの行動も仕方ない。
少しよろめいた弟だったが何とか踏ん張り、ユタカの頭を撫でた。
「ユタカ、落ちるって」
「心配させたシンクが悪いんでしょ?! もう…危ないって言ったのに…聞かないんだもん。シンクの馬鹿…」
彼女の頭を撫でつつ、シンクは苦笑いを浮かべる。
別に落ちた所で飛行魔法を使えば良い、とか思っていそうだった。
まぁ、別に磁場が乱れて魔法が使えない、なんて事はなさそうなので、僕とツルギ以外は落ちても大丈夫そうだな、なんて頭の片隅で思う。
「良し…これでアオが落ちても大丈夫でしょ」
「その為にやってたの、君? 魔力とか大丈夫? あー…僕じゃどうにも出来ないから、無理そうならシャナとお願いしたいんだけど…」
僕が魔力回路を循環させる為には、相手とキスをしなければならない。
これはシャナで実証済みだから、ユエとでもそうなるだろう。
流石に今は身の危険を感じてはいないので、した瞬間ユエを襲う自信しかない。
最低だな、僕。
城に帰ったら母様に相談してみようかな…煩悩封じてくれないかって。
「まだ平気。シンク、魔棍どこ?」
「そこの崖下。マグマギリギリのとこに刺さってやがる」
シンクが指差した先、僕とユエは崖下を覗き込んで見る。
確かに、マグマ溜まりの近くに魔棍と思われる物が突き刺さっていた。
今はマグマが冷えて固まっているので、取りに行こうと思えば出来るけれど。
「取ってこようか」
「なら私が行くよ。アオ、浮遊魔法使えないでしょ?」
使えませんけども。
脚力強化で取りに行くでは厳しいですか、ユエさん。
ユエが浮遊魔法を使おうとした瞬間殺気を感じ、僕は彼女を抱えて飛び退った。
僕らがいた場所に槍が刺さり、ゲラゲラ笑いがその空間内に響き渡る。
「それ、アタシのダから! ダレにも、渡すもんカ!! あっハはハハは!!」
暗闇から桃華が現れた。
だが、その姿に僕らは唖然としてしまう。
最初に見た彼女の姿より肌が所々爛れ、髪はボサボサで艶はなく、服も破れている箇所が多く、そこも肌が爛れ落ちていた。
「桃華…」
ツルギが桃華の名前を呼ぶ。
変わり果てた姿を見て、思わずといった感じだった。
チラリと、桃華はツルギを見る。
「つる、ギ…? …ヒヒ…ヒャハ…ァハハはハハ!! それ、あたし、ノ?! フフ、ツル、ぎ!! だーいすき!!」
「?!」
手首から銃を出し、桃華はツルギに向けて撃つ。
桃華の言葉に驚いて反応が遅れたツルギを、シャナが物理防御魔法で守った。
「ツルギ君!!」
「わ、わかってる…! すまない、シャナ…!」
シャナの叱咤に、ツルギは謝る。
桃華が初恋だって言ってたっけ、ツルギの奴。
後でシャナに滅茶苦茶怒られるやつだな、あれ。
桃華は笑いながら銃を乱射し、僕は必然的に、防御魔法を使っているユエの影に隠れる形になった。
「近付けないな、あれじゃ…」
「…あの性悪女…っ!! あぁ、腹が立つ!!」
苛立たしさで、ユエが歯軋りをする。
僕は苦笑いを浮かべつつ、彼女の手を握った。
「アオ?」
「ごめん、ユエ。少しだけ魔力頂戴。本当なら、シンクかシャナとリンク繋ぎたいんだけど、あの攻撃で離されちゃったから。この状況を打開する。失敗したら、回復お願いして良い?」
にヘらと笑うと、ユエは僕が何をしようとしているかを理解したようで、フルフルと首を横に振る。
「ダメ、絶対にダメ。いくらアオの反射神経が優秀でも、賛成出来ない。アレの軌道を読むなんて、絶対に無理だよ!」