ゴウッ、と音がしてユエが炎の魔法を僕ら目掛けて撃ってくる。
ユタカがそれを防御魔法で防いだが、彼女とシンク、両方からユエは怒鳴られた。
「ユエ何やってんの?! 攻撃魔法とか正気?!」
「ユエ!! ユタカに当たったらどうすんだ!! グンジョウは平気でも、ユタカは火傷負うだろ馬鹿か!!」
あぁ、うん。
炎属性だからね、僕。
それを理解してるから、ユエも炎の魔法使ったんだろうし。
ここ火山だから、炎を出した所で問題ないと思ったんだろうけど。
いや、流石に二人きりの時にしてもらいたかったかな、それ。
批判されるの当たり前だろうに。
僕擁護できないよ、ユエ。
「アオが桃華に会ってたなんて、私聞いてない!! アオの浮気者!! 私より妹の方がいいんでしょ?!」
「……シャナ、ユエ錯乱してるっぽい。眠らせてあげて」
確かに、皆に桃華と会ったことは言ってなかった。
だが、彼女にそこまで罵られる事だろうか。
いや、周りの視線から見れば罵られても仕方がないのか。
シャナはやれやれと肩を竦め、ユエにスリープの魔法をかけた。
ガクン、と眠りに落ちて体勢を崩した彼女を、シンクが抱き止める。
「後で事情話してよね、グンジョウ。ちゃんと、ユエちゃんにも説明しなさい。いい?」
「うん、分かってるよシャナ」
地上に降り、シンクはユエを渡してきた。
彼女を抱き抱えると、弟は僕の額にデコピンをしてくる。
「いって!」
「魔法ぶっ放したユエも悪いけど、今回はお前も悪いってわかってるか?」
それは勿論理解していた。
ユエに隠し事をしてるつもりは全くなかったが、結果的にそうなってしまったのだから。
僕は頷き、ユエの頭を撫でた。
僕の行動や、魔法を使用した事、桃華と対峙して精神的に疲弊してしまっていた事。
魔法に対して耐性があるユエが、ここまで深く眠ってしまったのは、僕のせいだ。
「…ちゃんと説明はするよ。みんなにも、彼女にも」
「そうしてくれや。あー、疲れた。魔棍も破壊したし、早く帰ろうや。ちょっと寝ねえと、夜の訓練勝てねぇわマジで」
大きな欠伸をしながら、シンクは歩いていたユタカの横に並ぶ。
僕はユエを抱きしめ、ごめん、と彼女に謝った。
◆◆◆
みんな少し仮眠してから、夜の訓練に挑む。
結果的に言えば、引き分けに持ち込めた。
昨日の訓練では勝てたのだが、やはりカヅキおばさんである。
前回はおばさんだけでなく、妹達も一緒だったからだろう。
手加減に手加減を加えられていた状態だったらしい。
まぁ、スパルタな母様がここにいたら、結果はまた違っていただろうが。
今日の事もあり、明日の早朝訓練は無しになり、僕らは寮へと引き上げる。
そして次の日、何も言わずとも皆早起きをし、僕とシャナの部屋に集まった。
皆の視線が僕に集まる中、あの別荘であった出来事を話す。
シャナやツルギ、ユタカは少し痛ましい顔で僕の話を聞いていたし、シンクは難しい顔をして腕を組み、ユエは少しムスッとしていた。
「…あの時にあった事は、これで全部だよ」
「で、お前どーすんの? 桃華を殺すのか?」
シンクが僕に問う。
僕は少し目を伏せ、わからない、と答えた。
「同情はしたくない。桃華は、僕から雪那を奪った。でも、あの様子を見ていると…どうしても憐憫を覚えてしまう。前の僕…夕陽の記憶を思い出すと、桃華が狂っていく前兆は、感じていたんだ。感じていて、見て見ぬふりをしていた。自分の妹がそうなるはずがない、きっと気のせいだって。ちゃんと、桃華と向き合っていたら…雪那は死なずに済んだ。全部、僕のせいだ。謝っても、謝りきれないと思っている」
僕はユエに頭を下げる。
ユエの前世である雪那を、僕が殺したと言っても過言ではなかった。
今、桃華をどうしたいのか、僕はハッキリとは答えられない。
桃華の、妹の心情を知ってしまった今、ただ憎いだけではなくなってしまったのだから。
「夕陽君のせいじゃない。桃華が自制出来なかったのが悪い。だいたい、かまってちゃんじゃないの桃華の奴。なぁにが、子供だった、だ。それで私を殺してるんだから、立派な犯罪者じゃない。あの時、桃華16でしょ? 何をしたらどうなるかなんて、思考出来てないわけないじゃない。アオ、私達は何も悪い事なんてしてなかった。ただ付き合って、幸せに過ごしてただけじゃない。それを壊したあいつを、私は絶対に許さない」
「…ユエ」
ユタカが少し落ち着けとでもいう風に、ユエの名前を呼ぶ。
ふん、と言いながら、彼女は顔を背けた。
「…まぁ、取り敢えずこの話は保留って事で。シャナ、腹減ったー。弟が腹すかしてるぞー。なんか作ってお姉ちゃーん」
「なんでそんな棒読みなのかなぁ?! 言っとくけど、あたし和食は作れても洋食はからっきしなんだからね! ユエちゃん、ユタカちゃん手伝って! 三人でやれば早く作れるから!」
シャナは立ち上がり、ユエとユタカとキッチンスペースに行く。
僕ら男性陣は料理が出来上がるまで、テーブルの隅で大人しく待つ事にした。