そんな中、僕の携帯が鳴る。
一体誰だと思えば、クラスメートのルトルからだった。
「はい、もしもし?」
通話状態にしながら、僕は相手の応答を待つ。
『やぁ、元気にしているかねグンジョウ君! 私だよ、ルトル・トゥルーデさ!』
いや、それは着信があった時点で分かっているのだが。
あと、後程教室で会うのだが…何故今、早朝にかけてきたのか、僕は疑問と共に嫌な予感を覚える。
「何の用だよ、ルトル。下らない用なら、後で教室に行った時にでも聞いてあげるから、切っていい?」
『いやいや、下らない用なんかじゃないさ。今年の文化祭、隣のクラスと合同で映画を撮る事に決まってね。主演を是非グンジョウ君に』
そう言われた瞬間通話を切りたくなったが、我慢して彼女に言う。
「却下。どうせ、クズとかロクでもない役だろ。あのさぁ、君僕の事何だと思ってるわけ? 一応言っておくけど、王族だからね? 僕」
それは分かっているさ、とルトルは返すが、わかってたならなんで去年白雪姫の役を僕にさせたのか、問いたいくらいなんだけど。
『君の婚約者である、ユエ君のクラスとの合同なのだから少しは喜びたまえ』
「…あのさ、ルトル。配役、僕以外決まってるの?」
勿論さ、と彼女は僕以外の配役を言っていくが、パーティメンバー全員が役に入ってて、僕は頭を抱える。
「…ルトル、君何考えてんの? 僕ら結構忙しいんだけど…」
『なぁに、主演他を先撮りして、後は暇な時にちょこちょこ出てくれれば問題ないさ。編集君が少し大変かもしれないが、まぁそこは私のプロットと監督の腕の見せ所というやつさ! はっはっは!!』
笑い事では無いし、笑えないんだけどルトル。
味噌汁のいい匂いがしてきたが、僕は項垂れてしまう。
「グンジョウ、スピーカーにしろ。ユエ達気になってるみたいだから」
シンクが小声で僕に言ってくるが、ルトルとの会話、聞かせたくないんだよなぁ…。
ユエ達の方を見ると、作業しながらチラチラとこちらを見ているのが分かり、僕はため息をついてルトルにスピーカーにする事を伝え、携帯のモードをスピーカーにしてテーブルに置く。
『やぁやぁ! みんなおはよう! ルトル・トゥルーデだ! グンジョウ君には先に伝えてあるが、我がクラスと隣のクラス合同で文化祭で上映する為の映画を撮る事が決定した!』
「ルトル、お前朝っぱらだってのに元気だな。なんでそんなテンション高いわけ?」
シンクがルトルに尋ねる。
僕は聞きたくなくて耳を塞いでみたが、彼女のよく通る声には無駄な足掻きだったようだ。
『テンション高くもなろうというものじゃないだろうか、シンク君! なんて言ったって、グンジョウ君が主演を務めるのだからね!』
「…僕はまだ、了承してないからな」
ムスッとなりながらルトルに抗議するが、彼女は聞いていないようだった。
「グンジョウだけ?」
『いいや、シャナ君! 君やシンク君、ユエ君やユタカ君、ツルギ君も出てもらうからね!』
シャナの疑問にルトルは声高に宣言したが、ツルギや姉は固まり、ユエとユタカは目を細める。
ツルギとシャナの様子は予想がつくが、ユエとユタカはどうしたのだろうか。
「ねぇ、ルトル。アオが主演って事は、相手役もいるんだよね、勿論」
『うむ! 今回の話はサスペンスと愛憎劇がマッチした作品にしようと思っていてね! 相手役は君のクラスのドミノ君にしてもらおうと思っているよ!』
ドミノ、っていうと、あの金髪縦ロールの子か。
ドミノ・アグリッツァだったっけ、名前。
確か、母様のファンクラブ会長のアンさんの娘…だった筈。
「却下、私にして」
「ユエ?!」
ドミノさんの名前が出た瞬間、ユエが配役を自分にしろと言い始めて僕は驚く。
むしろ出ないって言ってるんだけど、僕は。
『勿論良いとも! だが良いのかね? 最後は恋人であるグンジョウ君を殺す役だけど』
「一体どういう話書いてるの君?!」
ルトルの話に、一気に僕らは消沈してしまう。
あらすじ的には、ある日街に出かけた貴族令嬢が見目の麗しい青年に出会う所から始まる。
その日は少し話しただけで別れてしまうが、次の日そのまた次の日と会う内、二人は恋に落ちる。
しかしその青年には秘密があり、金を持っている女性を食い物にした、マフィアの一人だった。
女性に貢がせ私服を肥やしつつ、マフィアのボスであり自分の双子の弟であるボスを撃ち殺し、頂点に上り詰める。
だが、散々貢がされて捨てられた貴族令嬢が復讐の為青年の前に現れ、青年を撃ち殺しハッピーエンド。
というものらしい。
ユタカは、ボスの恋人の役。
シンクは言わずもがなボスの役。
ツルギはボスの盾になって死ぬ、腹心役。
シャナはと言えば、僕の愛人役だそうだ。
「…いや、無理です。なんで姉と絡まなきゃいけないんですか、無理です。むしろそこをユエにしてください」
『だってシャナ君、体の線が出る服着せたら、結構ナイスバデーじゃないか。君と合わせたら絵になるからね、却下。それに、愛人役とはキスシーンないんだから良いじゃないか』