my way of life   作:桜舞

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177話『一体何があったっていうんです?』

一応要件だけ聞いて、無理な時は本当に無理と断っているのだが…今回は何なのだろうか。

 

僕は通話ボタンを押し、携帯を耳に当てた。

 

「はい、もしも」

『グッさぁぁぁあん!! 助けてぇぇぇぇえ!!』

 

あまりの大音量に、思わず耳から離してしまう。

セットからかなり離れたので、撮影の邪魔にはなっていないはずだ。

 

「…耳痛ぇ…ちっ…一体何があったんですか、リリアさん」

『耳痛くさせてごめんだけど、舌打ちしないでよグッさん?!』

 

ちっ、聞こえてたか。

そのまま通話切ってくれたら有り難かったんだけどなぁ。

 

「で、何があったんですか。下らない要件なら切ります」

『下らなくないよ! 本の整理してたら本棚が倒れて来てグッチャグチャになっちゃって…助けて、本当に助けて…職員総出で棚を立て直しして、戻してるんだけど。これグッさん参加してくれないと何日かかるかわかんないよーっ!!』

 

僕は撮影してる場所を見る。

僕の出番はもうないから、帰ろうと思えば帰れるのだが。

 

正直な話行きたくない。

本が傷んでるのは凄く嫌だけど、それ以上に面倒すぎる。

僕は少し悩み、分かりました、とリリアさんに返事した。

 

シャナの出番はあと少し残っていたのだが、姉に声をかけ、王立図書館に飛ばしてもらうようお願いする。

 

「いや、その格好で行く気? せめて着替えてからにしなよ」

 

パチン、とシャナは指を鳴らし、僕の私服と衣装を変えてくれた。

パーカーと七分丈ズボンといった、いかにも若者ですといった感じの服で、シャナのセンスはこうなんだよなぁ、と思う。

まぁ、変えてくれたので文句は言えないのだが。

 

そのまま王立図書館の前に転移させてくれ、僕は職員用の扉から中に入った。

 

「おー、グンジョウ。お前が来たって事は…リリア司書長、よほど切羽詰まってんなぁ…」

 

茶髪で眼鏡をかけたお兄さんが、僕へ向けて手を振りながら挨拶してくれる。

 

「こんにちは、タイラーさん。一体何があったっていうんです? 本棚倒れたって聞きましたけど、地震でもありました?」

 

僕と同じ司書資格を持っている、タイラーさん。

結構気のいいお兄さんで、僕がどのジャンルを好んでいるか把握していて、新しい書籍が入ると薦めてくれるという有能さである。

今は表のカウンターで、司書の仕事をしているようだ。

 

僕は彼に言いながら、表にある本棚達を眺めた。

全く倒れていないのだが、何処が倒れたというのか。

 

「いやいや、地震なんざリューネで起こんねぇだろ。裏。裏の方」

「あー…」

 

僕は表のカウンターから、裏の職員だけしか入れない裏書庫の方を見る。

そちらの方には禁書や、表に出せない本とかが保管されており、王族でも書類を書かないと持ち出せないようなものばかりだ。

 

確か蔵書量は15万冊だったか。

どれだけ倒れたのか、僕はタイラーさんに尋ねる。

 

「一体どれくらい…」

「蔵書全部落ちたってよ。俺も、閉館したら手伝いに行くけど。残業代凄い事になりそうだよなぁ」

 

全部、の辺りで僕は自分の頭を押さえた。

カカカ、と笑うタイラーさんだったが、目が全く笑っていなくて怖い。

気持ちはよく分かるけれど。

 

「だから僕呼ばれたんですね…」

「おー。リリア司書長が、グッさん柄悪いー泣きたいー、って嘆いてたぞ、さっき」

 

柄悪くてすみませんね!

言いたくもなるだろ、こんな状況で呼ばれてんだから!!

 

「…まぁ、行ってきます」

「おう、頑張れや」

 

僕はため息をつきつつ、裏書庫に続く扉を開ける。

 

裏書庫は一種の封印式を施されており、だからこそ禁書やらを置いておけると言っても過言ではない。

床にぽっかり穴が開いており、そこを螺旋階段で下まで降りていくのだが…。

 

僕はそこから下を覗き込んで、うわぁ、と嫌そうな顔をする。

半分以上が本で埋め尽くされ、その少し上辺りで職員達が頑張って本を発掘してはどの棚に振り分けるという事をしていた。

 

「リリアさーん、来ましたよー」

「グッ、グッさぁぁん!! 待ってたよぉぉぉっ!!」

 

僕は螺旋階段を降り、リリアさんの所まで行く。

他の職員達も助かったという顔をしたので、僕は自分の頭をガシガシ掻いた。

 

「まさか、人埋まってませんよね?」

「その前にみんな退避したから大丈夫。でも、下の本も全部飛び出してきちゃったから…グッさん、お願い!!」

 

人が埋まっていないのなら良かった。

でなければ、圧死体を発掘する羽目になっていた。

 

「僕の魔力の続く限りですけど…良いですか?」

「それでも良い! ごめん、バイト代は弾むから!!」

 

リリアさんが僕に手を合わせ、頭を下げてくる。

他の職員達が上に上がっていくのを見つつ、ここにいたら本の波に飲まれるから、懸命な判断だなと思った。

 

「別にそれは良いんですけど。とりあえず、原因調査はしてください。次あったら僕手伝いませんので。今凄く忙しいんですよ」

「うんうん! 絶対やる! よろしく、グッさん!!」

 

リリアさんも他の職員同様退避する。

僕はため息を吐きつつ、自分の下に魔法陣を展開した。

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