my way of life   作:桜舞

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180話『大丈夫じゃないけど、大丈夫』

「…本当に心配性だなぁ。待ってるよ。ママから、今日の訓練は無しにしてやるって。アオと一緒に帰って来いってメッセージ来たから」

 

自分の携帯のメッセージを表示させながら、ユエは微笑む。

本当にその通りに書いてあったので、僕は更に苦笑した。

 

「じゃあ、行ってきます。リリアさん、変な事ユエに吹き込まないで下さいよ」

「なんで私だけ注意されなきゃいけないのかな、グッさん?!」

 

貴女が面倒な仕事振ってきたからですよ、とは言わず、僕はニコリと笑むだけに留めた。

 

◆◆◆

 

ユエが持ってきてくれたものは全て食べやすい物ばかりで、本当に彼女に感謝の念しか湧かない。

炭酸も入っていたが無糖の炭酸水で、食べながら僕の好み把握してる彼女マジ天使、と思ってしまう。

 

「…いや、疲れてるな、これ」

 

ユエは女神だとか思っている僕だが、流石にこの思考はマズい気がする。

椅子に深く腰掛け、背もたれに頭を乗せてそのまま目を閉じる。

 

「あと何冊だよ…その前に僕の魔力尽きるぞ、これ…」

 

体調不良のユエに、リンクを繋いでもらうなんて愚かだし。

むしろ、明日もう一回来てやってから、終わらなかったらリリアさん達に投げてもいいんじゃないか、という思考に至る。

非常勤だし、僕。

 

そうしようと目を開けた所で、携帯に着信が入った。

 

「誰…母様?」

 

携帯の着信画面には、母様の文字。

僕は通話ボタンを押して、耳に当てる。

 

「はい、どうしたの母様。何か緊急事態でも起きたの?」

『ごめんなさいね、仕事中に。グンジョウ、貴方…ツェリちゃんからの求婚断ったのよね?』

 

ツェリの名を聞き、僕は二ヶ月前の事を思い出す。

ユエとユタカの誕生パーティーの最中、ユエを連れて廊下を歩いていた僕に、ツェリは言ったのだ。

 

[後でもう一度、陛下と王妃様に打診してみようと思うの。私、側妃でも良いからグンジョウ君のお嫁さんに]

 

まさか、あれを母様逹に言ったのかツェリの奴。

いつの間に母様達に接触してたんだ、あいつ。

 

「…断ったよ。僕は、ユエ以外と婚姻するつもりはないってハッキリ言った。それが何」

 

あれを思い出して、声が低くなる。

そんな僕の声を聞き、母様がため息をついた。

 

『…ハインリヒ家から、正式にグンジョウへ婚約の打診があったの。でも、そう…貴方が断ったのなら、こちらもそう回答しましょう。ごめんなさいね、煩わせてしまって』

「いや、教えてくれてありがとう」

 

またね、と言って母様は通話を切る。

僕はポケットに携帯をしまい、つい大声を出してしまった。

 

「あーっ!! くっそ!! 良い加減にしろよあいつーっ!!」

 

髪を掻きむしり、頭を抱える。

どんだけ僕に執着しているっていうんだ、ツェリの奴。

もうそろそろ良い加減にして貰わないと、此方だって考えがあるからな。

 

「…荒ぶってるとこすまねぇが、グンジョウ。声、表にも聞こえてるぞ。立花の嬢ちゃんが心配してオロオロしてるんだが…」

 

頭上からタイラーさんの声が聞こえ、僕は見上げる。

 

「…すみません、タイラーさん。仮眠室貸してもらえません…?」

「貸すのは良いが、嬢ちゃんと致すなよ?」

 

しないし出来ないっていうのに。

精神的にも物理的にも。

 

しません、と言って、僕は螺旋階段に飛び移り、頂上を目指す。

裏書庫から出ると、ユエが心配そうに立ち上がって僕を出迎えてくれた。

 

「アオ、あの…」

「…ユエ、こっち」

 

彼女の手を引き、仮眠室に行く。

なんでこんな場所があるかと言えば、本の整理や区分けなどで徹夜になる事もあるそうで、リリアさん達が増設したらしい。

ちゃんと国に申請してからだけど。

 

僕は一つのベッドに入り、彼女へ手招きする。

動揺して中々動かなかったユエだったが、観念して僕の腕の中へ来た。

ギュッと彼女を抱きしめ癒される。

 

「アオ、大丈夫? なんか絶叫が聞こえたけど…」

「んー…うん。大丈夫じゃないけど、大丈夫…」

 

眼鏡を外し、サイドテーブルに置いた後ユエの頭に頬擦りした。

サラサラの黒髪と、彼女が使っているであろうシャンプーの香りがして、僕は更にユエを抱きしめる腕に力を込める。

 

「アオ、苦しい…」

「ごめん、少し我慢して…君とこう出来るの、久々でさ…あー…本当にユエ好き。癒される…」

 

僕がそう呟くと、仕方ないなと彼女は笑った。

そんなユエに、僕は先ほどあった事を伝えようと思い、口を開く。

 

「ユエ…ちゃんと断ったから、安心して欲しいんだけどさ」

「ん? うん、何?」

 

少し身動ぎし、ユエは僕を見上げてくる。

そんな彼女の額に、自分のをくっつけながら言った。

 

「さっき母様から電話があってね。ハインリヒ家が、正式に僕へツェリと婚約して欲しい、って打診があったんだって」

「…っ!!」

 

ユエは驚き、目を丸くする。

僕は目を閉じて眉を寄せた。

 

「本当、良い加減にして欲しいよね…僕はユエ以外、いらないっていうのに。僕の隣は、ユエだけのものなのに。母様にも、ツェリにはちゃんと断ったって伝えてあるから、これ以上には絶対にならない。あぁ、くそ…ツェリの奴…」

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