my way of life   作:桜舞

186 / 408
186話『アオを判別出来ない』

遅かれ早かれ、こうなっていたに違いなかった。

 

僕は苦笑しながら、彼女の頭を撫でる。

この状態なので、教室にかけられている時計を見ても何時かわからない。

 

「ユエ、ごめん。今何時? 少しお腹空いてきてさ」

「…11時…グスッ…アオ…」

 

ユエからリンクを繋がれたので、僕は彼女の魔力を使って視力を上げる。

確かに時計は11時を少し過ぎているし、僕の腕の中にいるユエは涙を流しながら僕を見上げていた。

 

「泣かないでよ僕のお姫様。泣き顔の君を、みんなには見せたくはないな。二人きりが良いっていうなら、このまま寮に帰ろう。僕も、君と二人の方が本当は良いし。デートなんて、家デート? っていうものがあるんだって。そうしようか?」

 

ユエの涙を拭いながら、僕は彼女へ微笑む。

またフルフルと首を横に振ったユエは、僕を見上げながら言った。

 

「キスして、アオ」

「仰せのままに、僕の姫」

 

唇を合わせ、暫くしてから離す。

目が合うとユエはフワリと笑った。

 

「…エスコート、していただけますか? グンジョウ殿下」

「勿論、喜んで。私の可愛い婚約者殿」

 

彼女から少し離れ跪き、その手を取ってキスを落とした。

 

◆◆◆

 

「ユエちゃん、シンク君とデートしてるの? え? ユタカちゃんは?」

 

僕の腕に抱きつき、校内にあるクレープを作っているクラスに行く途中、ユエのクラスメートが声をかけてくる。

それを聞いて、僕ではなくシンクに悪い噂が立ちそうだなぁ、なんて考えてしまった。

僕の婚約者にも手を出す、愚かな王子、的な?

 

「ん? アオだよ、この人」

「え? 眼鏡かけてないじゃん?! え、流石三つ子…全然どっちか分からない!」

 

お褒め頂いて有難いんだけど、眼鏡の有無で判別されても…。

まぁ、ユエがわかってくれてれば僕は別段どうだって良い。

 

口を開こうとしたが、それより前にユエが微笑んでクラスメートに言う。

 

「ふふん。眼鏡があろうがなかろうが、アオを判別出来ないとはまだまだですなぁ」

「ユエ…なんで君そんな誇らしげなの…。いや、良いんだけど」

 

僕の口調から、本当に僕がグンジョウである事を理解したユエのクラスメートは、ちょっと気まずそうに笑って僕らから離れていった。

 

「何あれ?」

 

クラスメートの様子に、ユエは首を傾げる。

 

「僕がシンクだったなら、結構な醜聞だからじゃない? 僕に隠れて、ユエがシンクと付き合ってるっていう。シンクもユタカに隠れて、ユエと付き合ってるんじゃないかって噂立ちそうだな、これ」

 

そんな事はないのだが。

僕らは、自分の彼女が可愛くて大切で本気で愛しているのだから。

 

「…うげ、勘弁してよ…」

 

ユエは本当に嫌そうな顔をする。

それ、どっちの表情なんだろうか。

ユエがシンクと付き合っているという噂に対してか、それともユタカに申し訳ないという感情に対してか。

 

「まぁ、多分今日だけだと思うから。シャナの魔力不安定なの。ごめんね、一日我慢してもらえると」

 

今日のシャナは動きが緩慢的に鈍く、早朝訓練でも一番に吹っ飛ばされていた。

朝ご飯もまともに取れなく、簡易栄養食を飲んで登校したくらいだ。

 

そんなに辛いなら休んだら、とは声をかけたのだが、ツルギと過ごしたいからと言って出て行った…のだが、眼鏡が割れたショックでその事を完璧に忘れ去っていた。

ごめん、シャナ。

 

「我慢なんてしてないよ。というか、私がシンクと付き合うわけないじゃん。全然タイプじゃないもん」

「あの、ユエさん。同じ顔なんですけど…」

 

更に言えば同一人物、異次元同位体の僕なのだが。

タイプじゃないってどういう事?

 

「同じ顔でも、アオはアオ。シンクはシンクじゃん。大体、あんな何考えてるか分かんない腹黒、私好きじゃないんだよね」

「そりゃ悪うござんしたね。俺もお前みたいな直情タイプ、趣味じゃねぇわ」

 

背後から声がかかり、僕らは振り向く。

ユタカの肩を抱き、眉を寄せて不機嫌そうなシンクが僕らを見ている。

 

「グンジョウ、お前なんで眼鏡かけてないわけ? おかげで、会う奴会う奴みんな、ユエを連れていないのかって聞いて来やがってよ」

「私は、瞳だけはユエと違うからみんな見ただけで分かってくれるけど…グンちゃんとシンクは、ねぇ…」

 

ユタカも苦笑して、僕らにそう言った。

それはまぁ、そうなのだが。

見た目だけなら、僕とシンクに相違は全くない。

 

「眼鏡壊しちゃってさ。悪かったと思ってるよ、シンク。予備の眼鏡、城に置いてきてて」

「お前馬鹿じゃねぇの? シャナに…って、そうか。シャナ今日、体調悪かったっけな……あぁ、くそっ! グンジョウ、城に帰ったら自分で片付けろよ! ユタカ少し預けるけど、変な事すんじゃねぇぞ!!」

 

シンクはそう言いつつ、転移していった。

ユタカに変な事…するわけないだろ。

ユエにならまだしも。

 

「シンク、心配性だなぁ。グンちゃんユエにしか興味ないのに」

「全くだよ。アオがユタカに手を出すなら、もうとっくの昔に手を出してるし。なんなら告白してきてる女の子達にだって、手を出してるでしょ」

 

彼女の言葉に僕は固まる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。