いや、手を出したっていう部分に固まったわけではなく、告白してきてる女の子、の部分にだ。
「ユエ、知ってたの…?」
僕は冷や汗をかきつつ、彼女に尋ねる。
「なんで分かんないと思ったの、逆に。アオ、二学年に上がってから私の教室に来る頻度減ったじゃない。なんでと思ってたら、アオが他の女の子と連れ立って空き教室に行くの見えたから、後付けた事あったの。浮気かと思って」
うわ…どれだ?
結構呼び出される率が高かったから、どの事か分からない。
自分の誕生日のパーティでユエと婚約を発表したのだが、それでもツェリと同じく側妃にして欲しいと僕に告白してくる女生徒達が多かった。
最近になっても留まるところを知らなかったので、城の方へ正式に打診するよう言ってあったのだが…。
まさか、バレていたとは。
「ホワイトグリーンの髪の…誰だっけ、あれ」
「ミア・ウェントスさんかな。それ、五月辺りの話じゃん…。言ってよ、ユエ…。別に浮気したわけじゃないんだけど」
それは分かってる、と彼女から返答され僕は安堵する。
これで浮気扱いになってしまったのなら、僕は平身低頭、文字通り土下座をしてでもユエに許しを請わなければならない。
父様の気持ちがよくわかる…。
心から愛している人に嫌われたら、生きる希望なんてなくなるも同然なんだから。
「ちゃんと断ってくれてたもんね? 僕にはユエという婚約者がいる、彼女を心から愛している。だから、側妃なんていらない、って」
「なんで一言一句覚えてるんだよ…」
僕は恥ずかしくなって手で顔を覆う。
それを聞いてたユタカが苦笑いをしたようで、口調にそれらが混じった。
「いや、実はシンクもなんだよね。今月に入って…もう累計、30人には告白されてるかな」
「……うっそ……ユタカ知ってたのか……?」
転移して戻ってきたシンクが、僕と同じであろう表情を浮かべてユタカを見ている。
指折り数えていた彼女は、シンクに微笑んだ。
「なんでわからないと思ったのかな? まぁ、グンちゃんはどうか知らないけど、一回抱きつかれていたよね? すぐ引き剥がしてたけど」
「うわ…アオは抱きつかれそうになったら、すぐに肩掴んでたけど。シンク、運動神経鈍いんじゃない?」
シンクが明らかに冷や汗を流しまくっている。
そしてその場面も見てたんですか、ユエさん。
「グ、グンジョウ…あの…」
シンクが僕に助けを求めてきた。
いつもの余裕がある弟ではなく、本気でユタカに捨てられてしまうと怯えまくった男の姿だ。
僕は弟の手から眼鏡ケースを取り、そこから眼鏡を取り出してかけつつ、ユエとのリンクを切る。
「ユタカ、それ浮気に入るの?」
「うーん…キスまではいってないから、浮気には当たらないけど…でも、不愉快だよね。彼氏が他の女の子に抱きつかれてるの見ちゃったら」
うんうん、とユエが頷く。
ごめん、ユエ。
でも、抱きつくとか抱きつかれるとか、女性でするとしたら君か姉か、妹達くらいしかないんだけど。
それも浮気に入りますかね?
「すんませんでした!!」
シンクが公衆の面前にも関わらず、ユタカに土下座する。
彼女はニコニコしながら、シンクの目線に合わせるために屈んだ。
「私、何も言ってないよシンク? 恥ずかしいから土下座やめて欲しいんだけどなぁ」
「本当にごめんユタカ!! 償えるならなんでもするから許して頂けませんかっ?!」
なんだなんだと人が集まってきたので、ユエが見兼ねて僕らを屋上に転移させる。
直後彼女がふらついたので、背に手を当て支えた。
「ユエ、大丈夫? 気分悪くなってる? 少しベンチで休もうか?」
「ん…アオ…」
ユエの目がぼんやりと僕を見る。
一気に魔力消費した事で、魔力酔いを起こしかけてると思った。
僕はシンク達の方を見る。
ユタカがニコニコしながらシンクに何か言ってはいたけど、意識がこちらに向いていない事だけはわかったので、僕はユエを連れて隅の方に行った。
「アオ…?」
「ユエ、魔力を循環させるから回路繋ぐね」
僕は彼女にキスをし、魔力回路を繋いで循環させ始める。
すぐにユエの回路が活性化したのを感じ、僕は唇を離した。
「…気持ちい…シャナちゃんずるい…」
「ユエ、変な声出さないで…あと、あれは人命救助だから。それ以外で姉にしようなんて、本気で気持ち悪いだけだから」
ユエの意識がはっきりしてきたのは良いのだが、そんな事を言うものだから僕は少し顔が熱くなる。
僕、初夜でユエに優しく出来るかな…。
なんて事まで考えてしまって、首を思い切り横に振った。
何考えてんだ、自分。
「アオ?」
「…何でもない」
ちょっとユエの顔が見れず、僕は彼女から顔を背けた。
ユタカ達の話し合いも終わったようで、声をかけられる。
「グンちゃん、ユエ! ダブルデートしよう!!」
「はぁ? なんでそんな話になってるわけ? ユタカ、頭湧いた?」
そんな事ないもん、とユタカは頬をプクーっと膨れさせ、自分に近寄ってきたユエの肩をポカポカ叩きまくっていた。