my way of life   作:桜舞

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188話『そんな君も可愛いよ』

「…どういう話し合いになったんだよ」

「許す代わりに、お前らとダブルデートしたいって言い始めて…頼むよ兄ちゃん! ユタカに捨てられたら俺生きていけないんだよぉ!!」

 

手を合わせて、シンクは僕に拝み倒してくる。

その気持ちは充分わかるけれども。

僕もユエに溺れているから、もし嫌われたら生きてはいけないだろう。

 

だがしかし、だ。

 

「ユエが良いって言えばの話だろ、それ」

「良いって言わせてくれよ?!」

 

そんな無茶な。

ユエの意見を捻じ曲げるなんて、したく無いんだけど。

やむを得ない場合をおいて。

 

「ユエ、どうする?」

「アオはどうしたい?」

 

質問に質問を返すなって、おばさんに言われなかったのだろうか?

まぁ、裏を返せば僕の意見を尊重する、って事なんだろうけど。

 

僕は少し考えて、彼女に言った。

 

「シンクが可哀想だから、別に良いんじゃないかなとは思う。結構助けてもらう事も多いし。君が嫌だって言うんならしないけど」

「…ユタカ、今回だけだからね。あと、彼氏の交換なんてしないから」

 

ユエは僕の腕に抱きつき、ユタカを少し不満そうに見つめる。

何、彼氏の交換って。

どういう事?

 

「しないってば。私もう、グンちゃん好きじゃないもん。あとね、ユエ。私達がお互いの恋人交換して遊んでるみたいな噂あるけど、それ鵜呑みにしないでくんないかな。私、一人でグンちゃんと会ったりしてないから」

 

え、そんな噂あるの?

 

僕は思わず、ユエの方を見た。

 

「私はしてないからね?!」

「いや、それは信じてるし、シンクがユタカを溺愛してるの知ってるから疑ったりはしてないんだけど…何その噂。誰流してんの。名誉毀損で訴えても良いんじゃないか?」

 

そう言いつつ段々と目が据わってくる僕を、ユタカがまぁまぁと宥めてくる。

 

「それ払拭する為にも、ダブルデートしようって話なの。別々の場所で見られたって、グンちゃんのフリしてるシンクだの、シンクのフリしてるグンちゃんだの、言われるのウザったいもんね?」

「…あぁ、そういう事。わかった。ダブルデートしようか、ユエ。どれだけ僕らが、お互いの恋人を可愛がってるかって、見せ付けてやろうじゃないか。ねぇ?」

 

僕の迫力に、ユエはうんうんと頷いてくれた。

 

「よし、決まり! 行こう、シンク?」

「はい、何処へなりともお供させて頂きます…」

 

ユタカを先頭に、シンク、僕、ユエで階段を降りていく。

先程からシンクがしょんぼりとしているので、僕は思わず弟に尋ねた。

 

〈なんでそんなに意気消沈してるんだよ…〉

〈ユタカが不安にならないように、隠してたつもりだったんだけど…見られてたと思って…。カヅキおばさんみたいに分身出来たら良かったのに…はぁ…〉

 

心の内で深いため息をつく弟に、ドンマイ、と、声をかける。

階段を降り切った所でユエは僕に、ユタカはシンクの腕に抱きついてきた。

 

「ユエ、何処行く?」

「私、クレープ食べようと思ってアオと歩いてたんだけど」

 

じゃあクレープだー、とユタカは言い、シンクの腕を引っ張って歩いていく。

僕は腕を組んでいるユエの指に自分のを絡め、彼女に微笑んだ。

 

「じゃあ、僕らも行こうかユエ」

「…うん。アオ格好良い…好き…」

 

うん、僕も好きだよユエ。

 

◆◆◆

 

で、クレープをしているクラスに来たのだが。

 

「うん、分かってた。そうだよね、一般生徒がやってるやつだから、そうなるよね…」

「アオ、なんかごめんね?」

 

大丈夫とユエに返し、僕はコーヒーを一口飲む。

 

一般的に、クレープとは甘いものを指す事が多い。

惣菜系のもあるが、そんなのちゃんと専門でやっている所でなければ食べられない、と言っても過言ではない。

 

甘ったるい匂いが鼻腔をつき、僕は項垂れた。

唯一救いがあったとするならば、コーヒーがメニューにあった事だろうか。

 

「おま…これ想定してなかったわけじゃねぇだろ?」

「想定はしてたよ。してたとも。だからコーヒー頼んで飲んでるんだろ」

 

ただほんの少し、惣菜メニューもないだろうかと淡い期待をしていただけで。

まぁ、本当に想定通りではあったけど。

シンクは僕と違い、普通にクレープを食べられるようだった。

 

羨ましいとは思わないけど、こいつ苦手なものとかないんじゃないのか?

本当、これじゃどっちが上か下かわからない。

僕らの中で上下なんて、あってないようなものだけれど。

 

「アオ…」

 

クレープ片手に、僕へ申し訳なさそうにしているユエへ微笑む。

 

「ユエ、気にしないでお食べ。僕は、君が幸せそうにしているのを見るのが好きなんだ。君がしたい事、欲しいもの、全て叶えてあげる」

 

あの時から伸びた彼女の髪に口付ける。

それだけで、ユエは顔を真っ赤にした。

 

「うわ、キザー…」

「あのボス役、グンちゃんにピッタリだったよねぇ…」

 

目の前の席に座ってクレープを食べている二人を無視して、僕はニコニコとユエへ微笑み続ける。

 

「アオ、あの…恥ずかしい…」

「そんな君も可愛いよ、ユエ」

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