my way of life   作:桜舞

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19話『呑気に思った』

あの体験のせいで、まだ身の内に気持ち悪さでも残っていたのだろうか?

 

なんて冷静に考えてしまったが、このままではまたどこかしら強打しそうだな、なんて呑気に思った。

 

「アオちゃん!」

 

ユエが後ろから、僕を支えるように抱きしめる。

僕とユエの身長差は約20センチくらい。

それに加えて体重の重さもあるだろうに、彼女は僕を抱き止めていた。

 

「…ユエ、ごめん。ありがとう。驚いた」

「だ、大丈夫。だけど…ビックリした…。アオちゃん、気分悪い? 座る?」

 

大丈夫、と僕はユエに少し押してもらって体勢を整える。

母様達も驚いていたようだったが、僕は苦笑だけ返した。

 

男として当然の感想かもしれないけど、ユエ柔らかかったなぁ…。

何がとは言わないけど、柔らかかった。

 

そんな僕に気付いたのか、シャナが僕の足を結構強い力で叩いてくる。

 

「いった! 何?!」

「すけべ」

 

そう言われるとグゥの音も出ない。

おばさんと父様も気付いたようで、僕を見てニヤニヤと笑っているし。

笑わないでいただきたい。

 

◆◆◆

 

シャナへの封印も施され、このまま学園に戻った所でやる事もなかったので、4人で学園都市にあるカフェに来ていた。

僕だけは寮の部屋に帰って本でも読みたかった所だったのだが、女性陣の圧が凄かったので逆らえるわけもなく。

各々飲み物と、女性陣だけデザートを頼んでいた。

 

「てか、ギルドどうしようね?」

「あとで行けってママ言ってたけど。行った所で、登録の仕方わかんないし」

「休みの日にカヅキおばさんに引率してもらうのは?」

 

良い考えー!

なんて、女性だけで盛り上がっている。

僕いる必要あったかなぁ…なんて、ブラックコーヒーを飲みながら思う。

 

物凄く居心地が悪い。

むしろ本当に僕帰って良いかな。

いや、シャナが許さないよな絶対。

 

内心でため息をついていると、僕の目の前にケーキが差し出された。

あまり甘くないことで有名なチーズケーキで、僕は差し出した人物を見る。

 

「…ユエさん? 何してるんですかね?」

「? アオちゃん、コーヒーだけだったら胃が痛くなるんじゃないかと思って。一口あげようかと。あ、口つけてないから、安心して」

 

その後それ食べるよね、君。

間接なんちゃらになるんじゃないの、それ。

 

ユタカが、その手があったかという顔でユエを見ている。

姉は姉で素知らぬふりをしているし。

 

ユエとユタカから好意を寄せられているのはわかっているし、それが損得抜きの純粋なものだとも理解している。

 

ユエを見るが、何か打算的にこの行動をしているつもりはないようだ。

本当に、本気で僕の胃を心配しているみたいで、これ指摘した方がいいのかと、シャナを横目で見てみるが、やっぱり助け舟は出してくれなさそうだった。

 

「ユエ、その…むぐっ!?」

 

口を開いて断ろうとして瞬間、口の中にケーキを突っ込まれる。

フォークだったのだが、危うく口に刺さるところだった。

 

「甘くないから、アオちゃんでも食べられるでしょ? アオちゃん、甘いの得意じゃないもんね」

「…だからって、許可しないで人の口にフォーク突っ込むの、どうかと思うよ。ユエ」

 

ごめんね、なんて彼女は謝ってくる。

ユタカが自分の妹を睨みつけているし、姉は知らぬ存ぜぬを貫き通しているし。

 

僕はシャナの脇腹をつつき、念話を飛ばした。

 

〈助けてくれても良くない?〉

〈恋する乙女の邪魔をする者は、馬に蹴られて死ぬって母様言ってたし。これくらい治めてみなさいよ。次期王でしょ、グンジョウは〉

 

こんな時に限ってそんな事言ってくるな、シャナの奴。

二人と付き合うつもりはない、とちゃんと断れば良いのに、なんか可哀想だと思って言えないでいる僕が悪いのは、よくわかっている。

優柔不断なのもよく理解している。

だから甘いだの言われるんだよ、僕。

 

目の前で姉妹喧嘩を始めた二人に、僕はため息をついた。

それについて、二人は肩を跳ね上げる。

 

「………あぁ、二人が悪いんじゃなくて、自分が情けないなぁ…と思っただけで」

 

少し自己嫌悪に陥りかけてため息をついただけなのだが、二人とも僕が呆れたと感じたようだ。

そんな事はないんだけど。

 

「いや、タイミング悪」

「そう思うんなら助けてってば。別に空気重くしたかったわけじゃないんだから」

 

うわぁ、という感じに見てくるシャナに、恨めしげな目を向けてコーヒーを飲む。

カヅキおばさんが来てから、リューネの食文化も変わった。

コーヒーという嗜好品も出てきたぐらいだし。

 

「ご、ごめんね、グンちゃん…」

「五月蝿くしてごめんなさい…」

 

いや、僕よりお店の人に謝った方がいいと思うけど。

 

窓際の席に僕らはいたのだが、青空が綺麗だなぁ、なんて思ってしまう。

現実逃避というやつだね。

 

「後で店員さんに謝りなね?」

「「はい…」」

 

二人がしょんぼりした声を出したが、僕はそれに目を向けず窓の外をずっと見ていた。

窓ガラスに反射して見えていたシャナの顔は、呆れていたけれどね。

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