my way of life   作:桜舞

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190話『気付かれたっぽい』

途端、その姿が母様になった。

どうやら、カヅキおばさん手製の認識阻害魔法がかけられていた物だったらしい。

 

「え、は?」

「王妃、様?」

 

僕らは驚きすぎて言葉を失うが、シンクとユタカは知っていたようで、平然としている。

母様は指を鳴らし、防音の結界を張ってくれたようだった。

 

「で、シンク? 何事なの?」

「それについてはユタカから」

「いやいや! 説明しろよ、なんでここに母様がいるんだよ?!」

 

シンクに掴み掛かると母様から、やめなさい、と声をかけられる。

 

「いや、だって母様?!」

「落ち着きなさい、グンジョウ。それでも次期国王ですか」

 

母様から叱責され、僕は口を噤む。

シンクから手を離し、少し俯いた。

 

「ナッちゃん。多分、ツェリちゃん魔王の遺物に侵されてると思う。ハインリヒ家も捜索対象に入ってたよね? あそこまで魔力も気配も消せるっておかしいと思う」

「それだけで? 少し訓練すれば、魔力だろうが気配だろうが消せます。確かにハインリヒ家は捜索対象に入っていますが、ただそれだけで、ツェリちゃんが魔王の遺物に関係しているとは限らないでしょう?」

 

確かに。

様子が少しおかしいからと、それと結びつけるのは僕もどうかとは思う。

だがユタカは首を横に振った。

 

「グンちゃんにぶつかって落ちた時、グンちゃんに抱きしめられながら、ツェリちゃん笑ってた。自分が落ちるという出来事を、優しいグンちゃんは絶対見過ごすはずはないと踏んで。ユエやシンクの場所からは、ツェリちゃんの表情見えなかったでしょ? グンちゃんの背に隠れてて。グンちゃんも、ツェリちゃん助けるのに必死で顔なんて見てる暇なかったはず。あれ…桃華そっくりの笑い顔だった」

 

桃華の名前を出され、ユエの眉が吊り上がる。

 

「でもね、ユタカちゃん。ツェリちゃんの策略だとしても、やっぱり…」

「グンちゃん、ちょっと失礼」

 

ユタカは僕に近づき、制服を掴んだ。

一体なんだと思っていると、一枚の紙が制服の上着の背面から出てくる。

 

なんだこれ?

誰かがイタズラで貼り付けた?

一体誰が?

シャナか?

 

紙を見ても、僕は首を傾げる他ない。

しかし、母様は違ったようだ。

 

「これ見ても同じ事言える、ナッちゃん?」

「………」

 

ユタカの問いかけに母様が押し黙り、その紙を見つめた。

一体これが何だというのか。

 

「……分かりました。貴女の言い分を信じましょうユタカちゃん。でも、行くのは来月ね。ハインリヒ家は文官の家だけれど…もし、ユタカちゃんの仮説が合っていたとしたら…ツェリちゃんは強敵だと思うわ。あの子、文官の家の子なのに対人、対魔物戦闘はターニャが認めるくらいの使い手ですもの。ユエちゃんとユタカちゃんを貴方が推薦しなければ、貴方かシャナの護衛はツェリちゃんにお願いする所だったのよ?」

 

母様は苦笑しながら、僕を見る。

それは寝耳に水の話なんだが。

あとその紙何?

 

「グンちゃん、これ魔王の遺物の式神みたいなものだよ」

「なんで分かるのユタカ」

 

ユタカはうーん、と少し困った顔をした。

ユエもユタカが持ってる紙を見て、心底嫌そうな顔をする。

僕は訳が分からず、シンクを見た。

 

「グンジョウは魔力探知低いから分かんねぇだろうけど、すっげぇ嫌な感じしてるわけ。それ。俺達は魔王の遺物自体と戦った事はないけど、母様はあるんだろ? その母様がユタカの言い分に納得したんだ。これがそうか、それに付随するものって考えに至るのは、まぁ当たり前だよな?」

 

成程。

魔力耐性はあるけど、探知能力に関して僕は確かに低い。

それにツェリを助ける時、確かに背中へ手を回された感覚はあった。

その時につけられたのだろう。

あとユタカも低かったはずなんだけど、魔力値上がったのだろうか。

 

「ユタカ、それ離せ。燃やすから」

「…ごめん、シンク。離れないや。気付かれたっぽい。あとで治癒魔法お願い」

 

そう言い、ユタカは自分の腕ごと紙を燃やした。

チリになった紙から彼女の手が離れたのと同時に、シンクが治癒魔法をユタカの腕にかける。

 

「くっそ、ツェリの奴…絶対許さねぇ」

「そういう事だからグンジョウ。文化祭は来年楽しみなさい。今日からみっちり貴方達を鍛え直します」

 

母様が僕を見つつ、そう言った。

 

え、マジで?

ユエとイチャイチャする暇ないんですか?

 

「あるわけないでしょう? 貴方そのままじゃ死ぬか、ユエちゃん殺されてツェリちゃんの傀儡になるか、どっちかしか無いわよ?」

「人の心読まないでもらって良いかなぁ?!」

 

本当にどいつもこいつも!!

なんで人の思考読むんだよ?!

 

そして学校を休んで、朝から晩まで狂化訓練をする。

剣術や体術の訓練の合間で、魔法の教練も行われた。

夜になるとみんな喋る元気もなくなり、充てがわれた部屋に行き泥のように眠る生活で、一番に根を上げたのはやっぱりシャナだった。

 

「少しは休み欲しいんだけど?! なんなの頭おかしいの?!」

「泣き言言うな、死にたいのか?」

 

来月まで後数日。

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