今度の休みの日にハインリヒ家に行くと、通達は出してあった。
「死にたくはないけど、これ精神的に死ぬでしょう?! 今! 確実に!!」
「しかも後で追試待ってるんだよねぇ…これ…学年一位の座譲り渡す時かなぁ…」
抗議するシャナと、諦念を抱く僕。
シンクはツルギとユエと、魔法の理論について話している。
ユタカはといえば、母様と斬り結んでその技を盗もうと努力していた。
僕はシャナと組んで、おばさんとの訓練で打ち倒された後であり、ほんの少しだけの休息をとっている最中だった。
あぁ、地面冷たくて気持ちいいなぁ…。
そして、ほんの少しだけ現実逃避をする。
文化祭一日目であんな事がなければ、二日目も三日目も、シンクやユタカと一緒にデートしてたんだろうなぁ。
去年は僕が精神的に参ってしまって、ユエには迷惑をかけてしまったし。
そういえばこの時期だったっけ、シンクがここに来たの。
わぁ…あとでケーキでも用意してもらおうかなぁ…。
食べられるかわかんないから、言わないけど。
後なんだっけ…なんか引っかかったの…。
「起きろグンジョウ。休憩時間は終わりだ」
「…はい」
起き上がった僕が見たのは、シャナがおばさんの魔法の影で口を塞がれぐるぐる巻きにされながら、高い高いをされている光景だった。
さっきから静かだと思ってたら、なんだこの状況。
あやされてるのかな、うちの姉?
「夕刻になるか、お前らが私から一本取れなければ終わらないからな」
「…はい。シャナ大丈夫?」
地面に降ろされ、その際勢いよく転がされた姉に僕は声をかける。
うぅ、と言いつつ、シャナも立ち上がった。
「…ちくしょー…」
「女の子がちくしょうとか言わない。シャナ、鬱憤溜まってるでしょ。僕を気にせず、魔法引っ切り無しに撃って良いよ。大技でも小技でも、魔力が続く限り撃ちまくれ」
僕は地面につけていた方の頬をシャツで拭う。
汗もかいていたからか、それに土がついた。
「え、グンジョウにも当たるよ?」
「だから気にすんなって言ってんだよ。というかアレ殺す気でやれ。僕もなりふり構ってられるか。行くぞ、シャナ」
僕は身を低くしつつ、全身強化を自分に施し地面を蹴る。
背後でシャナが初級から中級の魔法をおばさんに向けて撃ち始めた。
上級から超級は詠唱と魔力を練るのに時間がかかるから、撃ちつつ練っていると信じよう。
「ふむ。そんなもので私が」
「倒せるとは思ってない。シャナのは当たれば良い方だ、そうだろう立花卿」
シールドを張りつつ、シャナの魔法を鼻で笑っているおばさんへと、左手に持ったノワールで逆袈裟斬りをする。
しかしそれは、軽く上げた足によって阻まれた。
想定済みだったそれへ僕はノワールを手放し、右手に持っていたブランシュをおばさんへと突き入れる。
その間も、シャナの魔法攻撃は止む事なく、おばさんのシールドへ当たり続けていた。
「ふん、まだ甘いな」
指だけでブランシュが止められていて、だが僕はニヤリと笑う。
その表情におばさんは怪訝そうな顔をした。
「何が可笑しい」
「あんまり甘くみんじゃねぇよ、クソババア。シャナ! やれ!!」
シャナが魔法攻撃の合間合間で、カートリッジを浮遊魔法でこちらに投げてきていたのに気付いていた僕は、シャナの意図を理解し、姉に声をかける。
僕の合図でそれらが一気に爆発し、おばさんのシールドにヒビが入り始めた。
僕らの作戦へ、おばさんは面白そうに口の端を吊り上げる。
「ほう、中々やるじゃねぇかグンジョウ」
「まだ終わりじゃねぇぞ」
僕はシャツの袖から、投げナイフをおばさんに向けて何本も投げつけた。
それらをおばさんは片手で弾き飛ばしていたが、足元から意識が逸れていると思い、足を引っ掛ける。
左手でブランシュを掴み、右手で僕の投げナイフの対応をしていたおばさんは、少し体勢を崩し、そこへノワールを操っておばさんの足を切り落とした。
多少驚いた顔をするおばさんに向けて、シャナが更にカートリッジを投げてシールドを破壊する。
瞬時に僕はシャナとリンクを繋ぎ、おばさんに向けて魔法を行使した。
「
強大な雷がおばさん目掛け落ち、その衝撃を間近にいた僕はまともに受けてしまって、吹っ飛ばされる。
受け身を取りつつ起き上がると、神雷の中心部にいたおばさんは黒焦げになっていた。
だが、徐々に皮膚や切り落とした足が治っていく。
「……クックックッ……グンジョウ、褒めてやる。よく私を殺せたな。あと、クソババアだ? はははっ!! ナツキ、お前の息子口悪いぞ!!」
褒めてもらえて嬉しい限りだが、そんなに爆笑する事なのだろうか。
母様は呆れて、ユタカの攻撃をいなしながらこちらを見ている。
「カヅキ、グンジョウが口汚く自分を罵ったからって笑わないでちょうだい。グンジョウ、後でお説教ですからね。目上の女性にクソババアとは何事ですか」
「…はい、母様」
母様からのお叱りの言葉で、シャナを除いたみんながマジかという目でこちらを見た。
特にユエからの視線が僕には刺さる。
そんな目で見ないで、ユエ…。