my way of life   作:桜舞

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193話『愛しているの。アナタ』

「ハインリヒ卿、この後屋敷の捜索をさせて頂くが…その前に、ハインリヒの家宝とは何か聞いておこう」

「はっ。我が家の家宝は、札にございます。何故あの紙が家宝になるのか、私にはさっぱりでございますが…先祖代々受け継がれてきたものなので…」

 

札、魔符か。

僕の背中にくっついていたのも、紙だった。

 

僕はハインリヒ卿に尋ねる。

 

「その家宝を、最近、もしくは一年前に誰か触らなかったか?」

「…それは…はい。我が娘、ツェツィーリエが…。あれ以来、こう…自信に満ちた表情をする事が多くなりまして。親としては、周りに萎縮するよりはと…。殿下に婚約の打診をさせて頂いたのも、娘可愛さからでして…エミルから、立花卿の御息女と仲睦まじく過ごしている事は聞き及んでおりましたが…」

 

それ、ちゃんと親に言ってるんだエミル君。

だけど、それでもツェリの為に僕に婚約の打診してくるとか…親馬鹿にも程がないか?

少し常識考えろ、ドアホが。

 

「兄君、顔が険しくなっております」

 

シンクからの注意で、僕は一つ咳払いをした。

やはりツェリは、魔王の遺物に侵食されている。

その事が確認できた。

 

一年前…去年の学園祭辺りから様子がおかしかったけれど…。

 

訓練の際、引っかかっていたのはその事だった。

もっと早く気付けていれば、と後悔する。

 

「その件については王家からの回答があった通り、僕は立花家の息女、ユエ嬢以外を娶るつもりは毛頭ない」

「はい、それは理解しております殿下。娘にもよく言い聞かせたのですが…ご迷惑をおかけしているようで、大変申し訳ありません」

 

ツェリの行動が耳に入っているなら止めろよ。

そのせいなのかな、ツェリがここに戻ったのは?

僕に対して目に余ったから、連れ戻されたとか?

留年とかいうレベルではなく、退学させられるかもしれないな。

まぁ、自業自得としか思えないけど。

 

「兄として、妹を止められず申し訳ありませんでした殿下」

「良い、ハインリヒ子息」

 

僕はそう言い、チラリと目線をエミル君に向けた後元に戻した。

口を出せる立場なのかと、暗に語る。

それに気付き、エミル君は黙った。

 

「では、僕らはそろそろ…」

 

そう言って立ち上がった瞬間、大きな音と共に屋敷全体が揺れる。

一体何事だと思った途端、僕はハインリヒの屋敷の屋根上にいた。

 

やったのはシンクだろうが、その場には僕以外にエミル君とハインリヒ卿だけがおり、シンク自体いない。

何処にいったと辺りを見回すと、庭が一面真っ白になっていた。

 

その中心には…

 

「ツェリ…?」

 

彼女の、夕陽のようなオレンジの髪は真っ白になり、服も白く、眼孔も白目の部分が黒く、緑の瞳だったツェリの目が白になっていた。

彼女は僕を見上げ微笑む。

 

『「愛しているの。アナタ」』

 

そう、言いながら。

 

◆◆◆

 

アオ達と別れ、私達はツェリちゃんの私室に案内される。

コンコン、とシャナちゃんが扉をノックすると、中から微かに返事が上がった。

 

「ツェリ、あたし。大丈夫? 療養って聞いたけど」

「大丈夫…じゃないかな。そこにユエちゃんもいるんだよね、シャナちゃん。入っておいでよ」

 

ブワッと、嫌な気配がツェリちゃんの私室から漏れ出る。

私達が警戒したのを、ツルギはキョトンとした顔で見ていた。

 

「どう、したんだ?」

「では、ワタシはこれで」

 

そう言い、メイドさんが踵を返し歩いて行く。

なんでこの異様な気配に気付かないのだろう、と思いメイドさんを見る。

うっすらと、首筋辺りに肌色に擬態させている札を見つけ、私はシャナちゃんの名前を呼んだ。

 

「シャナちゃん…」

「…みんな、行くよ。まだこれだけじゃ、証拠とは言えない…グンジョウならそう言うはず。まぁ…ほぼ、確定だとは思うけどね…」

 

シャナちゃんはドアノブを回し、扉を開ける。

広い部屋の中、ツェリちゃんはベッドの縁に腰掛け、私達を笑いながら見ていた。

嫌な気配を、漂わせながら。

 

「いらっしゃい、皆さん。今日はどんなご用件かな?」

「ツェリ、これは…」

 

シャナちゃんが、ツェリちゃんに話しかける。

だけどツェリちゃんは、シャナちゃんから私の方へ目線を投げてきた。

 

「ユエちゃん。私ね、思ったの。グンジョウ君は、盲目になっているんじゃないかって」

 

王女であるシャナちゃんが話しかけたのに、無視した?

 

ここが学園の中ならまだ許される行為だ。

だって、二人は幼馴染なんだから。

友達の友達に話しかけるなんて、ざらにある事だ。

それで怒るなんて、有り得ない。

ナンセンスだ。

 

だけど此処は、ハインリヒ家で。

学園の外で。

シャナちゃんも、今は王族としてここに来ている。

そんなシャナちゃんを、無視するなんて。

 

「ツェリ、話を」

「シャナちゃんは黙ってて。ねぇ、ユエちゃん。貴女に恋をしたから、グンジョウ君は周りが見えないんじゃないかなって思うの。グンジョウ君は、知的で、聡明で、とても頼りになって格好良い。理想の王子様みたいな人なの。でも、今のグンジョウ君は…ただの男の人みたいになってる。ねぇ、ユエちゃん。グンジョウ君を解放してあげてよ」

 

アオに言われたからもあるけど、王女であるシャナちゃんを遮ってまで、ツェリちゃんと話すつもりはない。

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