my way of life   作:桜舞

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194話『アオをお前になんか絶対やるもんか!!』

私はツェリちゃんの言い分に、拳を握って耐える。

 

確かに、私も最初はそうだった。

アオに、そんな理想を抱いていた。

 

何でも知ってて、周りの動きを見ながら最も最適解の動きをし、頼られれば自分が出来る最善手で相手を助ける。

理想の王子様という感じで笑う、アオ。

私もユタカも、そんなアオが好きになった。

 

でも、それはアオが自分で作り上げた表の顔だ。

王太子という重責、周りからの目と、両親からの期待に応えようと、必死になって努力してきた結果だ。

 

本当のアオは年相応の男の子なんだよ、ツェリちゃん。

 

大人びた笑顔なんて絶対にしない。

私を大好きだと言ってくれる笑顔も、好きなものをあげて喜んでくれる顔も、何かに対して怒る顔も、そして、泣いている顔も。

 

全部、王子様っぽくはないけど。

でもそれが、アオがちゃんと1人の人として感情を出した時の顔なんだよ。

それを否定したら、誰がアオの拠り所になってあげられるの?

 

シャナちゃんやシンクだって、アオとずっと一緒にいられるわけじゃない。

私がアオから離れたところで、ツェリちゃんがそう言い続けるのならば、アオは王子様の仮面をずっと被り続ける。

それがアオにとって、期待された顔だって事だから。

 

そんなの、アオは休まらない。

いずれ精神を病んでしまう。

私は、そんなアオなんか絶対に見たくない。

だから…ツェリちゃんにこの座を渡すわけにはいかない。

アオを理想像としてしか見れない彼女になど、誰が安心して彼を譲れるというのか。

 

「ユエちゃん…落ち着いて」

 

シャナちゃんが私の肩に手を置く。

どうやら、ツェリちゃんを睨みつけていたようだ。

 

私は深呼吸をして、シャナちゃんに微笑んだ。

 

「大丈夫…私は大丈夫だよ、シャナちゃん。アオにも言われたから。私はいずれ、アオの妻になる。こんな事で揺らいでちゃ、王太子妃になんてなれないもん」

「ユエちゃん…」

 

シャナちゃんがツェリちゃんを見る。

とても厳しい目で。

 

「ツェリ。あたしはグンジョウやシンクみたいに腹芸は得意じゃないから、単刀直入に聞くよ? 魔王の遺物は知ってるよね。今、貴女はツェリなの? それとも…その嫌な気配を漂わせてる魔王なの?」

 

シャナちゃんの問いかけに、ツェリちゃんは俯く。

そして、その肩を震わせ始めた。

 

「ふふ…あは…っ! あっははははっ!! あー、可笑しい!! シャナちゃん、本当に腹芸得意じゃないんだね! ……私は私だよ、シャナちゃん。シャナちゃんだって、魔王の遺物を持ってるじゃない。でも、それだけじゃ弱いよ。遺物はこう使わないと」

 

そう言いつつ、ツェリちゃんは上半身の服をはだけさせる。

ツルギ見ちゃダメ、とユタカの声がして振り向くと、姉はツルギの目を手で覆い隠していた。

多分、シャナちゃんが怒るだろうと予想しての事だろうが、ツルギは見ても何も思わないんじゃないだろうか。

 

シャナちゃん以外眼中にないって感じだし。

むしろシャナちゃんになら、何をされても良いと思っていそうな節を感じるし。

 

「ツェリ…」

 

シャナちゃんが驚愕の声を上げる。

顔をツェリちゃんに戻すと、その胸には魔符が埋め込まれ、中心部から首下にかけて赤黒い何かが根を張っていた。

 

「魔王の遺物は、こう使うんだよシャナちゃん。自分に寄生させて、その力を引き出すの。ユエちゃん、最後の警告だよ。グンジョウ君から離れて。彼を解放してあげて」

 

シャナちゃんが私を見る。

ツェリちゃんに対して話しても良い、という事だと感じ取り、私は内心でアオに謝った。

 

ごめん、アオ。

一言だけだから、許してね。

 

「アオをお前になんか絶対やるもんか!!」

「っ!! 離れろぉぉぉおっ!!」

 

ツェリちゃんが激昂する。

彼女の姿が変貌していくのと同時に、大量の紙が私達を押し潰そうと迫ってきた。

紙が壁にも当たり、破壊して外へ雪崩れていく。

 

シャナちゃんがリブロを駆使してシールドを張ってくれてはいたが、それもミシミシと音がしてきていた。

 

「シンク!!」

「ユタカ! 無事か?!」

 

アオと一緒にいるはずのシンクがユタカを心配して転移してくる。

彼の姿を見た瞬間、私は思わずシンクに尋ねた。

 

「アオは?! 一緒じゃないの?!」

「あいつなら、ハインリヒ卿とエミルと一緒に屋根の上だよ。無事だから安心しろ、ユエ。というか、ここじゃ普通に話出来ねぇな…シャナ、いけるか?」

 

シンクの問いかけに、シャナちゃんは頷く。

二人は同時に転移術を使ったようで、景色が変わった。

そこはハインリヒの屋敷の屋根上で。

ハインリヒ卿と、エミルと、アオがいた。

 

アオは下の庭を見ているようで、その表情は驚愕に染まっている。

 

「ツェリ…?」

 

ツェリちゃんの名前をアオが呼んだのと同時に、庭からツェリちゃんの声が聞こえた。

誰かの声と重なるように。

 

『「愛しているの。アナタ」』

 

◆◆◆

 

「いったいこれはどういう状況なんだ?!」

 

呆然とツェリを見ていた僕は、ハインリヒ卿の絶叫でハッと我に返った。

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