my way of life   作:桜舞

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195話『ずっと、二人で生きていこう?』

卿を見ようと顔をそちらに向けた所で、ユエ達も屋根の上にいる事に気付き、そして彼女達はツェリの元へ行っていた事を、今更ながらに思い出した。

 

「…ユエ……ユエっ!! 無事?! 怪我してない?!」

 

彼女の元へ行き、抱きしめる。

この状況で強張っていたであろうユエの体は、僕に抱きしめられた事によってか力が抜けたようだった。

僕の背中に手を伸ばし、ユエは抱き返してくれる。

 

「アオ…うん、大丈夫。みんな、無事…だけど。ツェリちゃんが…」

 

ユエ達がいる場所からは、ツェリの姿は見えなかった。

だが、ここへ来る前にあの姿を見たのだろう。

彼女の表情が、若干暗くなっていた。

 

「一体何があったの。それに、ツェリのあの姿は…」

 

僕はユエに問いかける。

階下からはツェリの哄笑が聞こえ、建物を破壊する音も聞こえてきた。

 

あんなに笑う子ではなかったはずなんだけど。

それに建物が破壊される振動が凄く、徐々に立っているこの場所も傾いているようだった。

 

「魔王の遺物に侵食されてた。グンジョウ、もう手遅れかもしれない」

 

シャナが魔武器を取り出し、僕の横を通り過ぎて階下へ行こうと歩き出している。

僕は姉の腕を掴み、引き留めた。

 

「詳しく話せ、シャナ。なんであぁなっているんだ。ツェリは今、どういう状況なんだ」

「お願いします、シャナ殿下。娘は…ツェツィーリエは、どうしてしまったんでしょうか? 何故あのような異様な姿になっているのですか? 教えてください…っ!!」

 

ハインリヒ卿はシャナの足元に跪き、懇願する。

姉はため息をつき、ツェリの方を見つつ僕らに告げた。

 

「ツェリは、ハインリヒ家の家宝であった魔王の遺物をその身に宿していた。それを使って、あたしやユエちゃん達に攻撃を仕掛けてきたの……あれは、もうツェリじゃない。ツェリの真似事をしている、魔王だ」

 

シャナはツェリの方から、自分を見上げているハインリヒ卿に目をやる。

 

「ハインリヒ卿、残念だけど貴方の娘はもういない。例え、ツェリの意識が残っていたとしても…王族に害をなそうとした時点で死刑だ。それでも、貴方はツェリを庇いますか? 娘を庇ったせいで、一族郎党が死に絶えたとしても」

 

姉の言葉に、ハインリヒ卿は項垂れる。

なんという事だ、と一言呟いて。

 

「アオ、ごめん。トリガー引いたの、私かもしれない…」

 

僕の腕の中にいたユエが、ポツリと言った。

何を言ったんだ、と彼女を見る。

 

あれほど耐えろって言ったのに。

むしろツェリに何言われたんだよ、君は。

 

「グンジョウ、ユエちゃんに喋る許可を与えたのはあたし。責めるならユエちゃんじゃなく、あたしにしなさい」

「…何言われたの、ユエは」

 

僕は、ユエからシャナに顔を向ける。

シャナが彼女を庇うなんて、相当だ。

絶対、よくない事を言われたに違いない。

 

「グンジョウを解放しろってさ。ユエちゃんに恋をしてから、盲目になってしまったからって。理想の王子様がただの人になっているのは、耐えられないって感じだったかな」

「何だそれ…」

 

理想の王子様?

誰の事だ、それは。

僕の事なのか?

 

深いため息を吐きつつ、僕はユエに尋ねた。

 

「で、君は何て返したの」

「…アオを解放しろ、離れろって言われたから…アオをお前になんか絶対やるもんかって…」

 

それで神経逆撫でした結果、魔王の遺物がツェリと完全に結合したわけか。

僕は頭を少し押さえて首を横に振った後、ユエを僕から引き剥がした。

 

「…シャナ、僕がやる。何の為にカヅキおばさん達に鍛えられたか、わからないだろ…それに、今思い出した…僕の初恋は、ツェリだったよ。今まで忘れていたけどね」

 

僕は屋根の縁から、庭にいるツェリを見下ろす。

彼女は僕の姿を認め、嬉しそうに微笑んで僕へ手を伸ばした。

 

『「貴方がいれば、何もいらない。大好きなの、愛しているの。来て。一緒にいて。ずっと、二人で生きていこう? グンジョウ君…」』

「ツェリ…」

 

これがユエからの誘いなら、喜んでこの身を階下へ投げるのに。

 

僕は一度キツく目を閉じ、そして目を開ける。

庭に向けて落ちようと足を踏み出した瞬間、服を掴まれ引き戻された。

それをやったのはユエかシャナかと思ったのだが、引き戻したのはシンクで僕は驚く。

 

「シンク、なんで…」

「俺はお前で、お前は俺だ。お前の考えなんて分かるんだよ。事前情報もなしに、突っ込んで行こうとするんじゃねぇ。ツェリは、まだ助けられる可能性がある」

 

シンクの言葉に、この場にいた全員が驚く。

いや、ただ一人。

ユタカだけは驚いていなかった。

多分、シンクの考えがわかっていたからだろう。

 

「どうやって助けるっていうんだ、あんな状態だっていうのに」

「魔王の遺物にはコアっていうものがある。元の持ち主の魔力が結晶になって、遺物に埋め込まれているらしい。それが集まる事によって共鳴反応を起こし、今の魔王の力になる…ってカヅキおばさんが言ってた」

 

それと、今の状況が何か関係あるのだろうか?

 

怪訝そうな顔でシンクを見る僕へ、ユタカが言った。

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