my way of life   作:桜舞

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196話『なんとも言えない気持ち』

「グンちゃん、コアを露出させてツェリちゃんから引き離せば、ツェリちゃんは助かるかもしれない、ってシンクは言ってるんだよ」

「まぁ…それには、対象に接触しなきゃいけないわけだが…。お前、コアを露出させるための術式組める?」

 

シンクの問いかけに、僕は首を横に振る。

術式も何も、僕が使えるのは炎属性の自分の能力だけだ。

あとは身体強化のみ。

そんな高度なものは、しようと思っても出来ない。

それはシンクもわかっているだろうに。

 

だよな、とシンクは苦虫を噛み潰したかのように、眉間に皺を寄せた。

一体なんだと思っていると、弟はユタカを抱きしめる。

 

「ごめん、ユタカ。戻ったら、ちゃんと償うから。許してもらえるまで謝るから。悲しませて、苦しませてごめん。でも、グンジョウの気持ちもわかるんだ。ツェリを助けてやりたい。だから…一回だけ目を瞑ってほしい」

 

そう言うシンクヘ、ユタカは微笑みながら弟の背を撫でた。

まるで、気にするな、とでもいうように。

 

「分かってるよ、シンク。でもね、これくらいでは傷つかないよ。私は貴方ともう一度出会う為にずっと、ずーっと貴方を待っていたんだから。貴方を一途に想っていた女を、信じて欲しいな」

 

ありがとう、とユタカに言ったシンクは彼女から離れ、僕から眼鏡を剥ぎ取る。

 

「ちょ、何…?!」

「上着も脱げ、グンジョウ」

 

一体何をするんだと抗議の声を上げかけたが、ユエが僕とリンクを繋いだ。

彼女の魔力を借り、視力を良くする。

僕の目の前には、僕の眼鏡をかけたシンクが立っていた。

 

「…シンク、ごめん。私が代わりに行ければ良いんだけど…」

 

僕の上着を脱がし、ユエはシンクへ申し訳なさそうにしながら、それを渡す。

訳がわからず二人を見つめた僕に、シンクは苦笑を返した。

 

「まぁ、ツェリはグンジョウを御所望だからな。ユエが行った所で、殺されて終わりだ。その点俺は、魔力も顔も、何もかもがグンジョウだ。対魔力でも物理でも、攻撃されたって何とか出来る」

 

ユエから受け取った上着を羽織り、シンクはニヤリと笑う。

 

「それに、今編み込んだコアを露出させる術式も、ツェリに近付ければ確実に発動出来る。ってなわけで…グンジョウ、悪いけどブランシュとノワール貸してくれや」

 

シンクがやろうとしている事は、確かに僕には出来ないものだ。

だからと、弟が行くのは違う気がして口を開きかけるが、それをユエとユタカが止めてくる。

 

「アオ。シンク以外これが出来る人がいないの、アオもわかってるでしょ?」

「グンちゃん、シンクを信じてあげて。シンクはグンちゃんと一緒で、ツェリちゃんを殺す方法以外で助けたいだけなんだよ」

 

二人にそう言われてしまい、僕は諦める他なかった。

確かに、僕はツェリを殺す事で彼女を救おうと考えていた。

それ以外の方法があるのなら、それが出来るというのなら、任せようと思う。

 

親友であるエミル君の妹で、僕らの友達で…僕の初恋の人。

助けられるなら、助けたい。

 

「…シンク、頼んだ」

 

僕はブランシュとノワールを呼び出し、シンクに渡す。

弟は一つ頷き、目を閉じた。

しばらくして目を開けると、フワッと笑う。

 

僕とそっくりの笑顔で。

 

「じゃあ、行ってくる」

「いってらっしゃい、気を付けてね」

 

ユタカからの言葉に、シンクは頷く。

弟は助走を付けて、階下へ向けて走り出した。

そのまま、ツェリに向けて飛び降りていく。

 

途中、ブランシュとノワールを手放したので、それは回収した。

 

『「グンジョウ君…っ!!」』

 

手を伸ばしてシンクを抱き止めたツェリは、とても嬉しそうに、幸せそうに微笑んでいる。

屋根の上にいる僕はシンクだと、彼女は思ってくれているようだった。

 

「ツェリ、僕が間違っていた。僕の伴侶に相応しいのは、ツェツィーリエ。君だけだ。今までごめんね? とても苦しかったよね? 気付かなくて、本当にごめん…」

 

彼女の頬に手を添え、申し訳なさそうな声をしながらシンクはツェリに謝るふりをする。

ツェリはフルフルと首を横に振り、嬉しそうに笑っていた。

 

シンクの奴、平然と僕を演じやがって。

しかもあの謝り方、僕そっくりだし。

流石僕。

見ててなんか、居た堪れないというかなんというか…っ!!

 

ツェリに見えないように後ろに下がり、僕は頭を抱えて蹲った。

 

「アオ、大丈夫?」

 

ユエが心配そうに、僕の横に屈んで尋ねてくる。

本当、シンクの演技とはいえ、ユエ以外を口説いてる自分を見るのは罪悪感が激しい。

 

「…大丈夫。見ててちょっと、なんとも言えない気持ちになっちゃってさ…」

 

ちゃんと見届けなければと立ち上がり、僕はまた階下を見る。

シンクがツェリの耳元で何かを囁き、顔を少し染めたツェリが頷いた。

まさか、と思った瞬間、シンクはツェリにキスをする。

 

僕は思わず、ユタカの方を見てしまった。

彼女は少し困ったような、寂しそうな笑顔を浮かべている。

ユタカがいる位置は、ツェリからもシンクからも見えない場所で、わざわざそこに移動しただろう事が見てとれた。

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