my way of life   作:桜舞

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199話『ツェツィーリエ』

僕はユエの手からツェリをゆっくり離した。

ツェリの方はエミル君が支えてくれたのを見て、口を開こうとしたが…嗚咽混じりで、ユエがツェリに言う。

 

「アオを…っ…これ以上、傷つけないで…っ! アオは…優しい人なの…っ! 本当は泣きたいくらい、辛いはずなのに…っ! 周りに気を遣って、笑ってて…っ!!」

「…ユエ、もう良いよ…ありがとう。君の気持ちだけで、僕は救われるから」

 

ユエを後ろから抱きしめ、彼女の頭に口付けを落とす。

そして、僕はツェリを見て困ったように笑った。

 

「まずは感謝を。ありがとう、ツェツィーリエ…こんな僕を好きになってくれて。僕の…初恋の君。でも…君の気持ちには応えられない。僕の愛は一人にしか捧げられないんだ。だから、ごめんという言葉以外言えない」

「…グンジョウ、君…」

 

ツェリは少し驚いて目を見開くが、やがて諦めたように微笑んだ。

 

「…私も、ありがとう…グンジョウ君…ずっと、大好きでした…」

「ツェリ…」

 

妹を心配して名前を呼ぶエミル君へ、そして自分の父親を見て、彼女は言う。

 

「お父さん…お兄ちゃん…私を…ツェツィーリエ・パパラチア・ハインリヒを…この家から、追放してください」

 

◆◆◆

 

ツェリの言葉に、その場にいた全員が驚く。

 

「ツェツィーリエ…! それは…!!」

 

ハインリヒ卿も驚き、ツェリに考えを改めるようにと彼女の肩を掴んだ。

だが、ツェリはゆっくりと首を横に振る。

 

「私がここにいても、ハインリヒ家に迷惑になるだけ、だよ…お父さん。王族に、牙を向いた…その罪は、死で贖わなけば…ならない。私がここに、いたら…一族、分家、みんな死んでしまう。だから、その前に…私を、追放して。お父さん達は、何も知らなかったんだから…。グンジョウ殿下…どうか、ハインリヒ家には、処罰を、下さないでください…」

 

悪いのは私一人だけだから。

ツェリはそう言い、僕に頭を下げた。

 

僕はユエから離れ、腕を組んで俯く。

 

この件は、父様達に相談しなければならない事だ。

だがそうした場合、ツェリは確実に死刑だろう。

減刑を願い出た所で、僕やシャナに攻撃をした段階で、却下されるに決まっている。

 

死刑にしたくて、助けたわけではない。

彼女に生きてて欲しかったから、シンクに頼んでまでツェリを助けたのに。

 

シャナやシンクにも、頼る事は出来ない。

これは、王太子であり、次期王である僕が判断しなければならない。

 

僕の腕にそっと触れる手があり、顔を上げるとユエが心配そうに僕を見つめていた。

安心させるように、僕は彼女に微笑む。

 

「グンジョウ殿下…」

「グンジョウ…」

 

ハインリヒ卿と、エミル君から名を呼ばれる。

僕は二人に向かって、考えを告げようとした。

その瞬間。

 

「待て、グンジョウ」

 

この時間、城で執務をしている父様がハインリヒ家に現れた。

僕は驚いて父様を見つめてしまう。

傍らには母様がおり、多分星読みでこの状況を知った母様が、父様を転移で連れてきたのだろうと推測出来た。

 

「久しいな、ニコライ。前に会ったのは、子供達の誕生祭の時だったか」

「はっ。陛下もお変わりないようで安心致しました」

 

ハインリヒ卿や、エミル君、ユエやユタカ、ツルギが臣下の礼を取り、頭を垂れる。

 

母様がツェリの傍へ行き、治癒魔法をかけた。

瞬時に、彼女の黒焦げた腕が元の綺麗な腕へと治っていく。

 

流石母様。

リューネのヒーラーオブバーサーカーの名は伊達ではない。

ちなみに、何故バーサーカーと付くのかと言えば、僕らが生まれて少ししてから起こった戦争で、キレた母様が父様の制止も聞かず一人で戦場に突っ込み、敵陣を壊滅させたから、らしい。

その際、負傷した味方の兵を一気に治癒魔法で治したので、そんな異名がついたと母様自身が嘆いていた。

自業自得だと、おばさんからは言われていたが。

 

「王妃、様…ごめんなさい…魔力…使わせてしまって…」

 

申し訳なさそうに言うツェリへ、父様が問いかけた。

 

「ツェツィーリエ。お前に問わねばならん。グンジョウやシャナを攻撃したのは、お前の意思か? それとも、魔王の意思か? 正直に答えろ」

 

厳しい目をツェリへ向ける父様の言葉に、彼女は口を開きかけるが、僕はそれを制止する。

 

「待ってツェリ。陛下、王妃殿下からこの状況を聞いて、いらっしゃったのは見て分かります。ですが、僕の見解を聞いていただけないでしょうか。一年前から、ツェツィーリエは魔王の遺物に意識を乗っ取られているような、そんな言動や行動が多く見受けられました。普段の彼女は大人しく、このような行動を起こす女性ではない事は、陛下も王妃殿下もご存知のはずです」

「だからなんだと言うのだ、グンジョウ」

 

父様がツェリに向けていた目を、こちらに向けた。

厳しく、威圧するような目に怯みかけるが、こんな事で怯んでいたら王位なんて継げないと自分に言い聞かせ、父様の目を真っ向から見据える。

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