「「ママ! ごめんなさいぃぃぃっ!!」」
半べそをかいて、二人は母親であるカヅキおばさんに許しを乞うていた。
シャナが僕の横に来て、小声で僕だけに聞こえるように言う。
「自業自得ってやつだよね」
「言ってあげるなよ…可哀想だろ…」
でも正直、眠気がすごいので早く退出してくれないかと、思ってはいた。
しかも、お風呂に入る為に眼鏡を自室に置いていってたので、正直あまり見えていないのもあり、多分僕の目つきは睨むようなものになっていただろう。
それも彼女らの悲鳴に一役買っていたのかもしれない。
「グンジョウ、お前は優しいな。こいつらに慈悲はいらん。と、睡眠時間を妨害するのはこのくらいにしておこう。おやすみ、二人とも」
そう言って、カヅキおばさんとユエ達は陰に沈んでいった。
「…グンジョウ、どんまい。というか、本を読んで寝不足になるのは程々にしておいた方が良いと思うよー? あんまり思考回ってないでしょ?」
「…うん。明日寝坊しないか、それが心配…」
早く寝なよ、とシャナに言われ、姉は自分の部屋に帰る。
僕も自室のドアを閉めて、ベッドにダイブした。
あぁ、眠い…。
そんな感想と共に、僕の意識は落ちていった。
◆◆◆
「…うわぁ…昨日の事、夢だったら良かったのに…。ユエとユタカには悪い事した…」
「あれはあの二人が悪いんだって。じゃなかったら、カヅキおばさんがあそこまで怒るなんて事ないでしょ? おばさん、誰に対してだって平等な判断しかしないんだから。おばさんも言ってたけど、グンジョウは優しすぎると思うよ?」
学園に登校している最中、昨夜の事を思い出して軽く自己嫌悪に陥る。
カヅキおばさんを呼ぶ前に、いくらか対処も出来たのではないだろうか、と考えてしまうのだ。
一昨日読んだ本が面白すぎて、夜遅くまで読んでしまっていたのが原因なのだが。
「でもさ…」
「お、おはよう、グンジョウ君、シャナちゃん」
声のした方へ振り向くと、オレンジの髪を肩辺りで切り揃えた女生徒が目に入る。
「ツェリ、おはよう」
「おはよー、ツェリ。あれ、今日エミルいないの?」
シャナがツェリに尋ねた。
彼女は、ツェツィーリエ・パパラチア・ハインリヒ。
21貴族、ハインリヒ家のご令嬢だ。
内気なのか少し吃音が目立つが、幼等部の頃から一緒の幼馴染である。
とても良い子なのは、クラスメートの皆知ってるしね。
「ふ、二人共、お、おはよう。お、お兄ちゃんは、に、日直で…先に、行っちゃったの…」
「そっか。じゃあ、あたし達と一緒に行こう」
シャナがツェリの手を握る。
彼女は嬉しそうに、シャナの手を握り返した。
そしてツェリは僕と目が合うと、恥ずかしそうに目を逸らす。
中等部の頃からそんな風に目を逸らされる事が多くなったが、まぁツェリは内気な子だからなと自分を納得させた。
ハインリヒ兄妹も双子なのだが、うちのクラスの双子率が高いと思うのは気のせいだろうか?
「き、今日は、ユエちゃんと、ユタカちゃん…い、いないの?」
「あー…あの二人、昨日やらかしてね。おばさんに説教食らってるんじゃないかな」
内容を言わないであげるのは、シャナの優しさ故か、もしくは醜聞を他に漏らさない為か。
多分どっちもだろう。
「そ、そっか…よし…っ」
ぐっと握り拳を作り、ツェリは何か気合いを入れたようだ。
その何かはわからないけれど。
僕は後ろから、二人の様子を眺める。
進行方向、十字路の右側から初等部に通う妹達が見え、シャナが大きく手を振った。
「おーい! リーゼ! アンナ! おはよー!」
その声が届いたのか、僕と同じ蒼い髪のリーゼが僕らに会釈し、シャナと同じ金の髪のアンナは少し眉を吊り上げ、腕組みをして僕らを睨む。
「アンナ? どうかした?」
「おはようございます、シャナお姉様。良いですか、お姉様。淑女たるものそんな大声で相手の名前を呼ぶなんて、はしたない事なのですよ。お祖母様に習ったはずでしょう?」
首を傾げて尋ねるシャナに、アンナはつらつらと説教をしてくる。
その隣でリーゼはニコニコ笑っているだけだった。
「ちゃんとオンオフは切り替えるようにしてるよ? それじゃダメ?」
「ダメに決まっています。お姉様は王族としての自覚が…」
さらに続けようとしていたアンナの両肩に、リーゼともう一人、手を置いた人がいる。
彼女の背後にいて見えなかったが、アンナの専属護衛として常に傍にいる、立花家長男。
アンナと同い年の、立花水夏が妹を止めていた。
「まぁまぁ、アンナちゃん。早くしないと学校に遅れると思うよ」
「それもそうね。シャナお姉様、この事はお母様に報告しますから。まぁ、お母様も少しぼんやりなさっている方だから、通じないかもしれませんが」
そう言い、アンナは初等部への道を歩き始める。
その後をスイカ君が追って行った。
「…あそこまで言い切れるあの子が凄いと思うわ」
「アンナちゃんはまだ幼いから、お母様の武勇伝もホラ話だと思っている節がありますしね。では、私もこれで」
いや、ネタバレ注意となっちゃんのとこに貼ったけど
これ、ヘンリのとこ見てる人いたら
あっちの方がネタバレなのではと思う
あっちの方が年代的にはあとなわけで…