「王族に刃を向けるのは重罪だ。それはお前も理解しているだろう」
「重々、承知しています。承知した上で申し上げているのです。ツェツィーリエの今回の行動は、魔王の遺物に操られての事。彼女自身に罪を償わせるのは、些か早計とは思いませんか陛下」
父様と睨み合っていると、パンパン、と手を叩く音がして、僕と父様はそちらに顔を向けた。
ツェリの治療を終えた母様が立ち上がり、僕らを苦笑しながら見ている。
「シャル…」
「グンジョウの言い分も一理あるとは思わない? あなた。確かに、ツェリちゃんだけが悪いわけではない。でも、王族に刃を向けたのも事実。本来なら死刑が確実ではあるけど…グンジョウ。貴方はどう考えているの?」
母様が僕に、判断を委ねてきた。
僕は二人を見つめ、自分の考えを告げる。
「僕は…私は、王太子としてお二方に進言致します。ツェツィーリエ・パパラチア・ハインリヒは、国外追放処分が妥当である、と」
「そう…あなた達も同じ意見なのね?」
母様がシャナやシンク、他のメンバーの顔を見ながら尋ねた。
最初に声を上げたのは、シャナだ。
「あたしは、グンジョウの意見に賛成。最初あたしは、ツェリを殺すつもりだったけど…グンジョウやシンクが助けるって判断した。なら、弟達の意見を尊重する」
「俺は、兄君がツェリを助けたいって願ったから、そう動いただけだよ。それに、あの姿見ちゃあなぁ…あれ、完璧ツェリじゃなかったし。魔王の異物に完全に乗っ取られてたって、あれ」
母様は二人から今度はユエとユタカ、ツルギを見る。
「私は…グンジョウ殿下の判断は正しいと、進言致します王妃殿下。ツェツィーリエ様は、正気を失っておいででした」
「殿下が先程も仰ったように、ツェツィーリエ様はこのような暴挙が出来る方ではありません。妹も言いましたが、正気であのような行動は出来ません」
ユエとユタカが、母様にそう言う。
少し遅れて、ツルギも母様へ意見を述べた。
「俺も…そう思います。殿下の判断は、妥当だと、思います。死刑にするには…その、罪を贖わせるには…重すぎる、かと」
皆の意見を聞き、母様は父様に微笑む。
これを聞いて、貴方はどう判断するの、とでも言いたげだ。
「…グンジョウ、国外追放処分にするのは良いだろう。だが、何処にツェツィーリエを流すというのだ。魔王の遺物は取り除かれたとはいえ、危険人物をおいそれと国外に渡して良いものなのか?」
「それは…」
そこまで、考えていなかった。
正直な話、ツェリが生きてさえいてくれればとしか、思っていなかったのだ。
自分の思考の甘さに歯噛みする。
「カヅキ、ちょっと来て」
そんな僕に助け舟を出そうと、母様が自分の影に向けてカヅキおばさんを呼ぶ。
スッと影が伸び、そこからおばさんが現れた。
「私は忙しいんだが。何の用だ、ナツキ」
「アオイちゃんの所に、ツェリちゃんを預けられないかっていう相談をしたいの。どうせ影を使ってこの状況も見ていたのでしょう?」
まぁな、とおばさんは返答しつつ、チラリとツェリを見る。
エミル君に支えられている彼女は、申し訳なさそうに目を伏せていた。
「…まぁ、あちらにツェリを置いた所で、どうにか出来る連中ばかりだ。私がそう育てた。それに、幼いとはいえ龍種である刑音もいる。だが、それでアオイに何の利益があると言うんだ、ナツキ。ただ、厄介事を押し付けられるだけではないのか? それなら、私は了承出来ん」
「アオイちゃん、書類仕事が出来る秘書が欲しいって言ってなかった? ツェリちゃん、貴女そういう仕事出来るわよね?」
話を振られたツェリは目を上げ、はい、と答える。
「…お兄ちゃんや、お父さんの…お手伝いが、したくて…それに、もし…グンジョウ殿下の、伴侶になれたのなら…そういうお仕事も、しなければならないと、思って…勉強してて…」
「ね、カヅキ?」
母様がカヅキおばさんに微笑む。
それに対して、おばさんは舌打ちを返した。
「あなた、良いわよね?」
「…まったく…これではどちらが王かわからんぞ、シャル」
父様へ微笑む母様に、苦笑しながら父様は母様を抱き寄せる。
ハインリヒ卿は父様の元へ跪き、頭を下げた。
「ありがとうございます…っ!! ありがとうございます、陛下、王妃殿下…っ!! 寛大な御慈悲…誠に、誠に…っ!!」
声が震えている。
ツェリが死刑にならず、ホッとしたのだろう。
そして国外追放とはいえ、娘がこれからも生きていけるのがとても嬉しいのだろう、と推測できた。
「グンジョウ、ツェリちゃんを送っていってあげてね。貴方の判断ですもの。そこまで責任持ちなさい」
「…はい、王妃殿下」
その後、カヅキおばさんは妹のアオイさんに連絡を取り、了承を貰えたと僕らに告げてくる。
そして僕は帰りの車の中、ユエに胸ぐらを掴まれていた。
「アオ、ツェリちゃんが初恋ってどういう事?! 私って言ってなかった?!」
「いや、あの…3歳!! 3歳の時の話だから!! 冬夏さんと同じで、淡い恋心ってやつ!! 本当に今まで忘れてたんだって!! ごめん、ユエ!! だから首絞めようとしないで?! 今愛してるの君だけだから!!」
眉を吊り上げて、僕の首を絞めようとしてくるユエをユタカが抑える。
200話いきましたー
いつも読んでくれている皆様
ありがとうございます