my way of life   作:桜舞

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201話『元気でね、ツェリ』

落ち着け、と言われたユエは僕を睨み続けていた。

 

「…アオのばーか…記憶容量小さすぎない?」

「いや、はい、あの、仰る通りで…申し訳ありませんでした…」

 

僕は誠心誠意、平身低頭でユエに謝り続ける。

城に着く頃には少しは許してもらえたが…これ、結婚してからも言われ続けるんだろうな、と内心で頭を抱えた。

 

◆◆◆

 

リューネ国際空港。

そこに僕とツェリ、数人の護衛と共に車から降りる。

 

ユエは付いてきていない。

城からツェリを迎えに行き、そのまま空港に向かう事になったと話した時、すごく不満そうな顔をしながらも、いってらっしゃいと送り出してくれたのだ。

 

ついてこないのか、と聞いたのだが、

 

「ユタカ見習う」

 

と一言だけ言われ、別にユタカはユタカだし、ユエはユエなのだから、見習う必要性はないんじゃないだろうか、と思ってしまった。

 

おばさんが用意してくれた航空艦で、一路オーシアに向かう。

ラウンジとかも併設されている豪華客船ではあるが、ツェリは護衛の人達に囲まれ、椅子に座って微動だにしていない。

 

自分が輸送対象なのは、自覚しているようだった。

 

「ツェリ、飲み物飲む?」

「…大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます…グンジョウ殿下」

 

ぎこちなく笑うツェリの向かいに座り、僕はラウンジから持ってきた飲み物を飲む。

萎縮し、目を伏せ顔を俯かせているツェリに、僕は言った。

 

「別に、今から行く場所は怖い人がいるわけじゃない。そんなに怯えなくて良いと思う。あと、そんな堅苦しくしなくて良いよ、ツェリ。一応君を送り届けるという名目でここにいるけど、君は僕の幼馴染だ。それとも…僕が怖い?」

 

フルフルとツェリは首を横に振り、ここに来て彼女らしい笑顔を浮かべてくれる。

 

「…ちゃんと、臣下として、接してるのに…グンジョウ君ったら…」

「そっちの方がいいよ、ツェリ。そっちの方が…君らしい。ユエには内緒にしてて欲しいんだけど…君の笑顔、結構好きだったよ。ツェリ」

 

僕の言葉に彼女はポッと頬を染め、目を逸らしながら困った顔をした。

 

「グンジョウ君…ユエちゃんから、女たらしって、言われた事ない…?」

「ある。でも、伝えておきたかったんだ。これをユエが知ったら…まぁ、怒られて殴られるだろうなぁ…」

 

二回ほど頬叩かれてるし。

この間は首絞められかけたし。

次は半殺しにされるのだろうか。

 

ユエになら何をされても構わないけれど。

 

「…先生経由で…知らされてるんじゃ、ない…?」

「うわぁ、あるー…過去形で話してるんだけどなぁ…。ユーリおじさんからも、説教という名の半殺しにされそー…。リューネ帰りたくなくなってきた…」

 

項垂れる僕を見て、ツェリはクスクス笑う。

 

本当に、その笑顔が大好きだった。

たまに見せてくれる、その表情が。

ごめんね、ツェリ。

僕の初恋の君。

ちゃんと、君の事が好きだったよ。

 

「リューネに、帰るんだよ…グンジョウ君?」

「うん、それは勿論。ユエに殺されるなら本望だしね」

 

それはちょっと、とツェリは苦笑する。

 

彼女と幼少期からの他愛無い話をしていると、オーシアの空港に着いたとアナウンスがかかった。

楽しい時間はとても早く過ぎると言うけど、本当にそうだなと実感する。

 

航空艦からタラップを降りると、ケーネ君と数人の護衛と共に、年若い女性が待っていた。

僕はその女性に頭を下げる。

 

「お久しぶりです、アオイさん。この度は、こちらの要望を聞き入れていただき、感謝します」

「久しぶり、グンジョウ君。その子がツェリちゃん? まぁ、お姉ちゃんお人好しだからね。私もだけど、人を拾ってくる癖があるみたいで。ツェリちゃん、私は要葵。こっちが息子の刑音。これからよろしくね」

 

手を差し出され、ツェリはその手を握った。

 

「…こちら、こそ。ご迷惑、おかけするかも…しれませんが、よろしくお願い、します…」

 

ぎこちなく笑うツェリの頭を撫でる。

シャナから、彼女の頭を許可なく撫でるんじゃないと言われた日が、とても遠く感じた。

 

「グンジョウ、君…?」

「ツェリ」

 

戸惑って僕を見上げるツェリを抱きしめる。

驚いて固まった彼女へ、僕は言う。

 

「体に気をつけて…元気でね、ツェリ。幼馴染として、君が健やかに過ごしていく事を願っているよ」

「…グンジョウ君…うん、ありがとう。貴方も、お元気で…。魔王討伐、頑張ってね」

 

僕の背に手を回し、抱き返してきたツェリが、最後の方は小声で呟いた。

彼女に声をかけようと口を開きかけるが、ケーネ君の声で口を噤む。

 

「なんだグンジョウ、ユエがいるのに浮気か?」

「……幼馴染として、別れの挨拶してただけだよ。これで浮気になるんだったら、異性との挨拶のハグ出来なくない?」

 

ツェリを僕から離し、ケーネ君に問う。

だが彼は、わからないといった感じで肩を竦めた。

 

「…まぁ、良いや。アオイさん、よろしくお願いします」

「うん。じゃあ、グンジョウ君。またね。行こうか、ツェリちゃん」

 

ツェリの手を引き、アオイさん達は車に乗り込んでいく。

手を引かれた彼女は少し振り向き、僕に手を振ってきた。

それに振り返し、車へと乗り込み発進するまで見送る。

 

見送った後、僕は航空艦に戻りリューネへ戻った。

まぁ、この事はケーネ君からユエへリークされており、戻った瞬間平手ではなく拳で殴られたのは…うん、僕が悪いです。

ごめん、ユエ。

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