だからアオに聞いてみたら、少し思い出しながら話してくれた。
「あそこ、何代か前の魔王の居城だったんだって。魔物も結構湧いているらしくてね。掃討しようとしても、それ以上のスピードで湧くから手に負えないって話だったな。その城も無限に魔物が湧くわけではなくてね。一定数まで行くと増えなくなるらしいんだ。それに、その城に近づかなければ被害もないって事で、今も放置されてるって話だよ」
へー、と思って聞いていたのだが、まさかそこにアオが連れて行かれるとは。
今回は王太子が攫われたという事で、私達以外にも城の兵と、王妃様、ママが参戦している。
頭が痛そうにしながらも、陛下が許可して下さったとシャナちゃんが言ってた。
「露払いはしてやる。グンジョウはお前が何とかしろ、ユエ。大体、お前ら痴話喧嘩多過ぎだ。まぁグンジョウが原因なのが大半の様だが」
「いやぁ、それについては本当にナズナの血が濃いというか。精神が脆い所はあたしに似たんでしょうけど。ユエちゃん、ごめんなさいね。面倒かけるわ」
王妃様の言葉に、私は首を横に振る。
私の気の強いところは、ママに似たのだろうし。
いつも喧嘩している二人なのだから、その子供である私達も喧嘩するのが当たり前なのではないだろうか。
「では、外の掃討はこちらで引き受けます。ユエちゃん…グンジョウを宜しくね。あの子が変わってしまっても…」
「大丈夫です、王妃様。私はそれでも、彼を愛しています」
私の言葉を聞き、王妃様は申し訳なさそうな顔をしながら私達を城の中に飛ばしてくれた。
城の中には魔物は一切おらず、私達は拍子抜けしてしまう。
「シンク、アオはどこ」
「一番上だな。馬鹿と煙は何とかって言うだろ」
それは分かりやすくて良い。
私は魔武器である双銃を出し、一回目を閉じた。
アオ、アオ。
迎えに来たよ。
一緒に帰ろう?
私、ちゃんとアオと話すから。
思ってる事、ちゃんと言うから。
アオも、私にちゃんと気持ちを言ってくれたら嬉しいな。
「シンク」
「分かってる。先に行け、ユエ。いないと思ってたんだが…奴さん、ここで俺らを足止めするつもりらしい」
暗闇から、腐乱死体が現れる。
シャナちゃんが、ひぃっ、と引き攣った声を上げた。
私は目を開け全身強化をし、床を蹴って上にあったシャンデリアを掴む。
そのまま振り子の要領でシャンデリアの上に飛び乗り、それを蹴って上階の手すりに飛び移る。
「みんな、お願い!!」
「ユエ! グンちゃんと仲直りするんだよ!!」
グッと親指を立て、ユタカはニヤリと笑う。
笑い方シンクそっくりになってきたな、ユタカ。
まぁ、長い間連れ添っていると段々似てくるよね、ってアオも言ってたし。
私はコクリと頷き、手すりも蹴って壁を走った。
途中、魔物に出会しその眉間に弾丸を撃ち込む。
アオ…アオ…アオ…っ!!
お願い、無事でいて!!
最上階にある、大きな扉。
多分謁見の間であろうそこを、私は蹴破る。
そこには、大きなベッドと、二つの影。
桃華とキスをしている、アオの姿。
「っ?!」
私は声を無くし、二人を見つめる。
音に気付いたのか、唇を離した二人はこちらを見た。
「グンジョウとイチャついてる時に入ってくるとか。アンタ、マナーってもの知らないの?」
「あ、あんたに言われたくないんだけど?! そんな事より、アオに何したの?!」
アオは虚な目で私を見つつ、桃華を抱きしめている。
桃華はクックッと笑いながら、アオの背中に指を這わせた。
「アンタの事で傷ついていたから、アンタとの記憶を全部アタシに変えただけ。グンジョウ、すごく泣きながら謝ってきたから、全部許すよって言ってあげたの。アンタの代わりに、仲直りしてあげたの。感謝してよね」
「…っ!! 余計な事…すんなぁぁあっ!!」
私は銃弾を桃華に向けて放つ。
だがそれは、アオのノワールによって阻まれてしまった。
「桃華を傷つけるな。彼女は、俺の大事な人だ。桃華、怪我してないか?」
「うん、大丈夫だよグンジョウ。ありがとう、大好き」
アオが桃華の額にキスを落とし、愛おしそうに彼女を見つめている。
アオの一人称が、僕ではなく俺になってる。
桃華に向けている顔は、本来私に向けられていたものだったはずだ。
本当に、私を忘れてしまったの…アオ…?
私が、分からないの?
私は力が抜けたかのように、その場に座り込んでしまう。
そんな私を見て、桃華はクスクス笑い出した。
「惨めだね、ユエ。グンジョウから捨てられた気分はどう? アタシの気持ち、少しはわかった?」
「………」
アオは桃華の首に唇を埋め、キスマークを付けている。
それも、私にしてくれていた事だったのに。
我慢しようねって二人で誓ってから、それは無くなってしまったけど。
「アオ…アオ…やだよ、嫌だよっ!! お願い、思い出して!! 私を…立花月を思い出して!! アオ!!」
彼に手を伸ばし、懇願する。
だけどそれは、彼の冷たい声で遮られてしまった。
「…五月蝿いな…お前、誰だよ」
アオからの冷たい目に、私は息が止まりそうになる。