my way of life   作:桜舞

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205話『私との思い出』

バタバタと後ろから階段を上がってくる音がして、みんながここに来た事がわかった。

 

「ユエちゃん!! グンジョウは…っ!」

 

シャナちゃんが座り込んでいる私を見て聞いてきたが、部屋の中を見て私と同じように動きを止める。

 

「シャナ、シンク…どうしたんだよ。てか、その女誰? 五月蝿いんだけど」

「おま…」

 

シンクも言葉を失ったかのように、唖然としているようだった。

 

「ユエちゃん、これ、どういう…」

「…私を、忘れちゃった…アオ、が…私を…」

 

涙がとめどなく溢れる。

シンクとシャナちゃんを覚えている。

本当に、私の存在だけがいない。

 

「ユエ、しっかりして!! グンちゃんがそう簡単にユエを忘れるわけないじゃん!!」

 

ユタカに肩を掴まれ、揺さぶられる。

でも、と私は姉に言った。

 

「アオの記憶、私との思い出…全部桃華が変えたって…っ!! ユタカ、どうしよう…どうしたら良いの?!」

「ほーん? んな芸当、簡単に出来るわけねぇよなぁ?」

 

シンクがニヤリと笑い、桃華を見る。

桃華は不機嫌そうに眉を吊り上げるだけで何も言わなかった。

彼は私の肩を掴み、言い聞かせるように告げる。

 

「ユエ、グンジョウを戻せるのはお前だけだ。弱気になるな、桃華に負けんな。不可能を可能にしてやるよ。あいつは俺で俺はあいつだからな…ショック療法だ!! ツルギ、ユタカ!! グンジョウを抑えろ!! シャナ、ユエ!! 桃華を殺せ!!」

 

私は涙を拭い、立ち上がる。

シンクの指示で、ユタカとツルギはアオと戦闘に入った。

桃華の所に行かせないように、上手く立ち回っている。

 

「シャナちゃん、サポートお願い」

「任せて。よくも、うちの弟の精神破壊してくれたな…万死に値するぞ、この野郎っ!!」

 

シャナちゃんが私とリンクを繋いでくれた。

私はそれを使って桃華の横に転移し、銃弾を撃ちまくる。

 

「桃華ぁっ!! くそっ…邪魔だ!! どけぇっ!!」

 

アオが叫ぶ。

その声に心が痛くなるが、私はそれに構っている暇などなかった。

 

魔力を総動員して、桃華に銃弾の雨を降らせる。

跡形も無くなるように。

 

「グンジョウ…助け…」

「桃華!! 桃華ぁっ!!」

 

桃華は反撃する事も出来ず、血の海に沈む。

そこへシャナちゃんが炎魔法で桃華を消し炭にした。

 

ツルギ達に拘束されたアオは、私達を睨みつけ怨嗟の籠った声を上げる。

 

「シャナ、シンク…お前ら気が狂ったのか…? なんで桃華を殺した!! 桃華を返せ!! 絶対、お前ら許さないからな!! 桃華と同じ目に合わせてやる!! 俺の、俺の…大切な桃華を…!! 返せ…返せよっ!!」

「狂ってんのはお前だよ、グンジョウ。お前、本当に耐魔力値高いのか? 一回調べて貰えよ」

 

シンクがコツンと、アオの頭に魔武器を当てた。

途端、アオは意識を失ったようでガクンと頭を垂れる。

 

「シンク…」

「眠らせただけだよ。あーもー!! 本当に手のかかる兄ちゃんだな、こいつ!!」

 

シンクはアオの横に座り、その頭に手を置く。

そしてもう片方の手を私に差し出してきた。

 

「仲介して、お前をグンジョウの精神に送る。あとはお前次第だ、ユエ。グンジョウをこのままにするか、元に戻ってもらうために、努力するかは」

 

私はシンクの手を握った。

答えなんて、もう決まってる。

 

「お願い、シンク」

「あいよ。ったく、早死にしたらグンジョウのせいだからな!」

 

シンクのそんな言葉が聞こえてきたが、私は意識が遠退いていき、目の前が暗転した。

 

◆◆◆

 

次に目を開けるとリヒト城の中で、私は辺りを見回す。

人は全くいない。

アオの精神の中って話だったから、誰もいないのは頷けるのだけど。

 

「……本が、浮いてる…」

 

所々、本が浮遊している。

私はその一つを取って、中を開いてみた。

それはアオの記憶のようで、開いたそれは幼等部の出来事を綴っているようだ。

 

ツェリちゃんに会った事。

可愛い子だなと思った事。

たまに見せる笑顔が好きだな、と思った事が書いてある。

 

ツェリはとても大人しいけど、でも周りを見ていてさりげなく助けてくれる。

僕の大切な幼馴染。

シャナが迷惑かけてごめんね、ツェリ。

 

ページをめくっていくと、そんな一文を見つけて、私は苦笑した。

 

「…アオらしいなぁ…」

 

特別な感情を持たなくても、その人の良い所を見つける。

あまり、人の悪口を言っている所を見た事がない。

私の、大切な人。

 

私は本を離し、廊下を進む。

色々な本が浮遊していて、それを少しずつ読んでいった。

 

本が浮遊している中で、一つ気になるものを見つける。

全てが赤い表紙で、真ん中に一つ、大きく見覚えのある宝石がはまっていたのだ。

 

「…ペリドット…」

 

アオが、私の誕生石だと言ってノンホールのピアスをくれた。

二つあったそれを、私は一つアオに渡してお揃いにした事を思い出し、その本を手に取って中を見る。

中は全て塗りつぶされていて…でも、端々に見える文章は、私との思い出のようだった。

 

告白して、それを受け入れてくれた時…とても嬉しかった。

泣かせてしまったけど、それでも僕が好きだと言ってくれる君が、僕も大好きだ。

⬛︎⬛︎、愛してる。

 

私の名前も、あった出来事も、ほぼ塗りつぶされていたけど…これは、私との記憶だ。

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