my way of life   作:桜舞

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206話『笑顔でさよならしよう』

ここで魔法が使えるかは分からなかったけど、持っている本を復元してみた。

文字がどんどん現れていき、やっぱり私との記憶だったと、確認出来て。

 

涙が出てきたがそれを拭い、本を片手に持ってアオを探す。

 

暫く歩いていると、リヒト城の中にはない場所に辿り着いた。

天井まで本棚で覆われたホールで、普通なら重力に従って落ちてくるであろう本も、キチンと本棚に納められ落ちる気配はない。

 

リヒト城の中は、隅々まで探した。

それでも、アオは見つからない。

 

私はホールに足を踏み入れる。

途端、真横から手が伸びてきて私の首を掴んだ。

 

「っ?!」

 

そのまま押し倒され、苦しくて少し暴れたけど、目に映った青色に、私は抵抗するのをやめる。

 

「よくも…よくも桃華を…っ!!」

 

私を憎しみの目で見てくるアオが、私の首を絞めていた。

 

あぁ、ここまでなのか。

ここまで、桃華に壊されてしまったのか。

 

そう思って、それを自分で否定する。

 

ううん。

壊したのは、私。

傷つけて、悲しませて、苦しませたのは、私。

 

アオ。

私の、大好きな人。

 

「アオ…ごめんね…ごめんなさい、アオ…そこまで、悲しかったんだね…苦しかった、んだね…辛かった、よね…私が、怒っ、て…殴らなけれ、ば…貴方は…そう、ならなかったのに…アオ……グンジョウ、殿下。私は…立花、月は…貴方を、心から、愛して、います…貴方に殺され、るなら…本望、です……大好き、アオ」

 

彼の頬に触れながら、私は言う。

 

意識が遠退いていく。

多分、これは本当に死ぬやつだ。

電車に轢かれた時は、衝撃と一緒に意識が無くなったから、痛かったというよりは、何が起こったか分からなかったけど。

 

私は、アオへ微笑んだ。

もしも彼が記憶を取り戻して、その時首を絞めた時の私の顔が、苦悶に染まっていたら。

今度こそ、心が壊れてしまう。

 

だから、笑顔でさよならしよう。

また、貴方に会えたら、良いな。

 

涙が一筋、目からこぼれ落ちる。

意識が暗転する直前、私の上から彼がいなくなった。

急激に肺へ空気が流れ込み、私はむせるように蹲りながら咳をする。

 

「ユエっ!! ユエっ!!」

 

私の背を撫でながら、私の名前を呼ぶ、大好きな声。

私は咳き込みつつ、声の方に顔を向ける。

 

心配そうな、泣きそうな顔のアオが、そこにいた。

 

「ア…オ…」

「喋るな、ユエ!! ごめん、僕がごめん…っ!! 君の首を絞めるなんて、どうかしてる…っ!!」

 

私を抱きしめ、安堵したアオが泣いている。

 

どういう事だろう?

アオに首を絞められたのに、アオに助けられるなんて。

 

「お前…そいつは桃華の仇だろう?! なんで殺さない!!」

 

私の首を絞めていたであろうアオが、私を指差しながら、私を抱きしめているアオに向かって叫ぶ。

アオの精神世界だから、分裂とかしてるのかな、なんて、ボンヤリした頭で思った。

 

「…筋違いも甚だしい。誰が桃華の仇だというんだ。むしろ、よくそこまで自我を持てたものだな、偽物の僕。桃華が持っている魔王の遺物の力なんだろうが…よくも、ユエを殺そうとしたな。それどころか、僕の体まで乗っ取りやがって。僕の顔で、僕の体で、僕の声で。僕の大切なユエを傷付けたんだ。簡単には殺さない。殺してくれと懇願するまで、何回でも生き返らせて殺してやる…っ!!」

 

それからのアオは、人が変わったようにもう一人のアオを切り刻み、治し、切り刻みを繰り返していく。

もう一人のアオの服が血に染まっていっても、構う事なく。

 

どこにそんな魔力があるのかと思ったが、ここはアオの精神世界。

彼が望めば、どのようにでもなるのだろう。

 

反撃もされたが、アオはそれを無視してもう一人のアオを殺して、また回復させて。

人が変わったようになったアオが、知らないアオのように思えて、私は彼に手を伸ばした。

 

「アオ…アオ…っ!!」

 

私の声に、もう一人のアオの声が重なった。

殺してくれと叫ぶ、もう一人のアオの脳天に、アオはブランシュを突き立て黙らせる。

 

ブランシュから手を離し、アオは私の傍に来ると少し屈んで私を抱きしめてきた。

 

「ユエ…ごめん…傷付けて、ごめん…っ!」

 

謝るアオへ、私は首を横に振る。

 

「違、う…傷付けたの、は…私…ごめん、なさい…アオ…」

「ユエ、まだ喋らない方が…」

 

私はアオを押して体を離してから、また首を横に振って彼に言った。

 

「アオ…ちゃんと、お話、しよう…? 私、ね…ツェリちゃんと、抱き合ってるアオ、想像して…悲しくなったの…でも、ね…アオは、優しいから。ちゃんと、お別れ、したかったんだよ、ね? だから、お別れの、ハグ、してただけ、だったんだよね?」

 

私の問いかけに、アオは一つ頷いた。

だから、と私は続けて言う。

 

「分かってたのに、怒って…殴って、ごめんなさい。誕生日の時、も。嫌がらせ、して…私、婚約者に、相応しく…ないね。アオ、私…」

「婚約破棄してくれなんて言うなよ、ユエ。誰がするものか。君が傷ついたのは、僕が悪いんだ。僕の軽率な行動が全て悪い…君を傷つけて泣かせて、幸せに出来ない僕なんて、死んだ方がマシだと思った。君には、一年喪に服させる事になるけど…それは、大変申し訳ないとは思った。死ぬ為に、迷いの森に行こうとして…」

 

私は彼の服を掴み、今日何回目になるかわからない涙を流しながら、アオに懇願した。

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