my way of life   作:桜舞

208 / 408
208話『同一人物なんだね』

「シンク…ここ…」

「グンジョウの寝室。いやぁ、あの後大変だったぜ? 外の掃討を終えた母様達が、俺らんとこ来てさ。俺の術式に怒った母様が、お前とグンジョウの手をリボンで縛った後俺引き剥がして、お説教されたんだよ。その術式は寿命使う物だから、安易に使うなって」

 

自分も使ったくせにな、なんてケタケタ笑うシンクだったが、私は驚いて言葉を失う。

 

あれ、寿命使う物だったの?

ならユタカに悪い事をした。

むしろ、私のを使ってくれたら良かったのに。

 

私の表情を見てか、シンクは苦笑した。

 

「あれ、術者本人のを使うから対象の寿命貰うわけにはいかねぇんだよ」

「なら、今あげる。私は、ユタカを悲しませてまで、貴方を犠牲になんてしたくない。貴方が負った代償は、私が払います」

 

私はシンクに手を差し出す。

いやいや、と彼は首を横に振った。

 

「んな事したらグンジョウが…それに、寿命貰う方法なんて俺は知らな」

「私の伴侶を助ける為です。それに、それは嘘だよねシンク? 嘘をついた時の癖、アオと一緒とか。本当に、同一人物なんだね、貴方」

 

クスクス笑う私に、シンクは困ったような顔をする。

アオは嘘とかは言わないけど、誤魔化そうとした時に右下をよく見る癖がある。

それを今、シンクがやった。

 

なら、寿命を渡す方法を彼は知っているという事だ。

 

「…ユエ、お前さぁ…」

「シンク。お願い。それに、寿命を渡せば…それだけ、アオと一緒に逝ける可能性が高まるって事だから。私は、出来れば彼と同じ時に死にたい。置いていかれるのも、置いていくのも、私は嫌だ。私、結構我儘なんだよ、シンク?」

 

それは知ってるよ、と彼は言い、アオの方を見る。

なんでアオを見るのだろうと疑問に思うと、シンクはアオに問いかけた。

 

「お前、それで良いのかよ」

「…寝たフリは、君の前では無理か。いやぁ、ユエは騙せてたんだけどなぁ」

 

私はアオの方に顔を向ける。

目を開けたアオが、私に笑いかけた。

 

「おはよう、ユエ。あと…ただいま」

「アオ……アオ……っ!!」

 

私は起き上がり、彼に抱きつく。

涙がボロボロ溢れ、嗚咽を漏らした。

 

アオだ。

私の知ってるアオだ。

私の大好きな愛しいアオが…戻ってきてくれた。

 

彼は私の背を撫で、シンクへ困ったように言う。

 

「凄く泣かれてんだけど…どうしよう…」

「お前が原因だろうが、ばーか」

 

呆れた声で、シンクはアオを馬鹿にした。

いつもだったら、そう言ったシンクに私は噛み付くのだが、今はアオが帰って来てくれた事がとても嬉しくて、涙が止まらない。

 

「ユエ、泣かないで。僕の大好きなユエ。君に泣かれると正直困る」

「誰のせい、なのよ…っ!! アオの馬鹿ぁ…っ!!」

 

僕のせい、と彼は苦笑して、私を抱きしめてくれる。

そんな私達を見て、シンクは肩を竦めたようだった。

 

「で、さっきの質問。お前、ユエに寿命渡させていいのかよ?」

 

泣き止んだ私ごとアオは起き上がり、シンクの問いかけに私の頭へ顔をくっつけたまま答える。

 

「うーん…僕的には嫌だし、何なら僕の寿命を渡すんだけど…それは、ユエが望まない事だ……僕は、ユエの決めた事を尊重したい。僕と一緒に死にたいというのなら…僕は、その望みを叶えさせてあげたい」

 

私へ微笑みかけるアオに、私も笑い返す。

頭をガシガシ掻いたシンクは、掻いていない方の手を私に差し出してくる。

とても、寂しそうな微笑で。

 

「まったく…うちの義姉ちゃんも困った奴だよな」

「…そんな我儘を聞いてくれる義兄さんが、大好きだよ」

 

ユエ?

と、私を抱きしめてくる腕の力が強まったけど、自分に嫉妬しないで欲しい。

 

別に異性としてシンクが好きなわけじゃない。

ユタカの将来の夫として、そして私の義兄になる人として、人間的に好きなだけだ。

軽口を言い合える、友達として好きなだけだ。

 

アオに向けるものとは違う。

 

「お前さぁ…本当、自分の事棚上げしすぎじゃね?」

 

呆れた目を向けながら言うシンクに、アオは少し眉を寄せながら目を伏せる。

 

「…そこ突かれると痛い…っ!! うん、ユエに何か言える立場じゃなかったわ、僕…」

 

がくりと肩を落とし、私に頬擦りしてくるアオに、私は笑った。

シンクの手を取ると何か吸われる感覚がして、体が急に怠くなる。

これが、寿命を吸われるという感覚なのかと、私は頭の片隅で思った。

 

「…アオ…ごめん…眠い…」

「うん、良いよ。お眠り、ユエ。僕の愛しい君。君が起きるまで、隣にいるからね」

 

優しいアオの声を聞きながら、私は眠りに落ちる。

次に目覚めた時、絶望が目の前に現れないよう、願いながら。

 

◆◆◆

 

ユエが寝息を立て始めた時、僕はシンクに問う。

 

「寿命、吸い過ぎたんじゃないか?」

「削った分だけしか貰ってねぇよ。それよか、グンジョウ。お前大丈夫かよ」

 

ベッドに腰掛け、僕を心配してくれるシンクへ頷く。

 

「大丈夫、何も問題はない。ユエが僕を助けてくれたから。魔王の遺物も、僕の中で殺しきった。もう…本当に、僕の彼女最高じゃない?」

「へいへい。惚気乙。まぁ、精神的に成長出来たんじゃね? お前、後で謝罪行脚行けよ。ユタカ達、滅茶苦茶心配してたからな」

 

そうするよ、と答えると、シンクは立ち上がり僕の部屋を出て行った。

ユエと二人きりになり、僕は彼女の寝顔を見る。

 

とても安らかに眠っているが、瞼が赤くなって、頬にも涙の跡があった。

僕の事で、とても泣いて、とても心配させたのだろう。

 

「ユエ、ごめんね。助けに来てくれてありがとう。迎えに来てくれて、ありがとう。僕の愛しの君。本当に、君以上の女性なんて何処にもいないよ」

 

寝ているユエをベッドに寝かせ、その唇を奪う。

そして約束通り、彼女の首筋にキスマークをつけた。

 

後でカヅキおばさんに検査してもらわなきゃ…変な病気もらってたら嫌だし。

 

僕はそう思いつつ、キスマークを付け続ける。

起きたユエから、付け過ぎだと怒られてしまったが。




ユエ視点終了
次からはグンジョウ視点に戻ります
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。