確かに、母様の護衛兼補佐役で分身体…なのか?
城の中にカヅキおばさんはいるけれど。
「どっちも手間かからない?」
「手間か手間じゃないかではなく、お前がシャルの実力を見誤っている事が、俺には問題でしかないと思ってはいる」
父様がこう言うくらいだから、やっぱり母様は頭がいいのだろうか?
じゃあシャナの頭の悪さは自業自得?
「うーん?」
「シャナの勉学の心配をする前に、こっちの心配をしろグンジョウ。俺は生涯現役と思ってやってはいるが、人生何があるかわからん。ラゼッタはまだ小さい。お前が政務も出来ないようなら、次の候補はアンナだぞ」
父様の厳しい目が僕を捉える。
僕は目を伏せ少し深呼吸をした後、父様の目を真正面から見つめ返した。
「わかっています、陛下。戯言でお手を煩わせた事、謝罪致します」
「…お前、年々シャルに似てきたな。流石俺達の息子だ」
厳しい目から一転、父様は優しげな目に変わり苦笑する。
そうだろうか?
顔の作りは父様に似ている気がするけれど。
「母様にどこが似ているのでしょう?」
「すぐに公私を分けられる点、状況判断、相手を観察する点だな。後は、切り替える為に息を整える所もそっくりだ」
うわ、もしかして僕、母様侮りすぎ?
そしてそんな癖、母様にもあったのか。
くっくっ、と笑い始めた父様に僕は静かにため息をつく。
そんなに笑わなくても良いではないか、と少し拗ねてしまった。
「じゃあ、シャナはどうなるんです? どこか母様に似てる所でもありますか?」
「愛嬌か? シャナはどちらかと言えば、俺似だろう。カヅキだったか、シャルだったか。男は母親に、女は父親に似ると言われているらしいぞ」
そんな学説あるのだろうか。
後で暇になったら探してみようかな。
なんて考えながら、僕と父様は政務を片付けていった。
◆◆◆
「グンジョウ、貴方眼鏡の度合ってる?」
昼休憩、お茶とお昼ご飯を乗せたカートを押しながら母様が執務室に来る。
シャナの方はどうかと聞いたら、カヅキおばさんがみっちり教えているらしい。
自分の方はいいから、シャナについてやってと母様もお願いしたようだ。
「母様、いつも昼持ってきてるの? メイドとかにさせればいいのに」
「ナズナがねぇ、あたしに会えないのが寂しいのですって。朝と夜には一緒にご飯も食べているのに、それだけじゃ嫌だって言うから、メイドの仕事を奪ってまでしているだけよ。ねぇ、あなた?」
父様の方を見ると、こちらから顔を背けていた。
クスクスとテーブルに配膳していた母様が笑い出す。
どうやら本当の事らしい。
父様は愛妻家だと国の内外に知れ渡っているが、ここまでとは。
「というか、眼鏡の度? たしかに最近見えづらいとは思ってたけど」
「ルカさんの所に行って、直してもらってきたら? 別にあたしが行っても良いけど…」
父様が凄い勢いで首を横に振る。
そんな父様を見た事がなかった僕は、少し驚いた。
「もう、あなた。グンジョウが驚いてるわ。もう父親になって十年以上経つのに、子供っぽいんだから」
母様が口元を押さえ、笑いを堪えているのか父様から顔を背ける。
肩が震えている事から、僕の予想は当たっているだろう。
「だってな、シャル。あいつ、シャルが来るなり抱きついてくるだろう。シャルをいやらしい目で見る事もある。気に食わん」
「ふふ…っ…今は、ナツキが…いるじゃない…! 流石に、ルカさん…昔みたいに、は…しないわよ…くく…っ!」
どれだけ笑い転げるの我慢してるの、母様。
父様が立ち上がって、母様の肩を掴んだ。
僕は察して顔を俯かせる。
両親がイチャついている所は、出来れば見たくないのだ。
音も聞きたくはないが、午後からも政務があるので部屋を辞する事もできない。
僕は置物と念じる事ぐらいしか、僕に出来る事はないのだ。
「シャル、笑い過ぎだ。俺にはお前しかいないと言うのに、酷い女だ」
「あら、そんな酷い女を妻にしたのは貴方じゃないの。ふふ、そんなに拗ねないでちょうだいな、あなた。あたしだって、子供達が離れていったら貴方しかいないのに」
あー…居た堪れない…。
誰か助けて…。
そんな僕の思いが通じたのか、扉がノックされる。
父様が軽く舌打ちをして、扉の外にいたカナリアに用件を聞いた。
「立花卿のお嬢さん方が、殿下に面会を求めてますけど…どーしますか? 陛下」
「…グンジョウ、行ってきていいぞ。午後の政務も免除してやる」
父様の許可が出たので、僕はそそくさと扉の方へ向かう。
ただ、母様が少し慌てた様子だったけれど。
奥に仮眠室があるから、そこで続きでもするんだろう。
それ以上は想像しない。
ちょっと気持ち悪くなるから。
ただ、弟か妹が出来るのは早いだろうな、と思わないでもない。
扉の外に出るのと同時に、部屋に結界が張られる。
多分防音とか何かだろうな、とは察しがついた。
「ご機嫌よう、グンジョウ殿下。お呼びたてしてしまい、申し訳ありません」