僕はユエの頭に頬擦りし、良いよ、と彼女に言った。
◆◆◆
次の日、僕らはベルナールの屋敷に足を運んだわけなのだが。
「うわ…」
外観の惨状を見たユエが、思わず声を上げた。
僕もそう言いたかったのだが、そこはグッと堪える。
以前、父様と一緒に来た時よりも様変わりしていて、僕を含め全員がその様相に引いていた。
ゴテゴテに装飾された門扉は金色に塗られているように見えたが、よく見れば本物の金を使っており、前に見た物から新しい物に取り替えられているのがわかる。
門扉の内側、屋敷へ続く道に青銅の像が立っていたはずなのだが、それも撤去されたようで代わりに金色のベルナール卿の像が立っていた。
それには宝石が所々散りばめられ、太陽の光を反射して眩さを増すというか、逆に眩しすぎて直視出来ない状態だ。
庭も前ベルナール卿の奥方が好んだ、可愛らしい花々が咲き誇っていたはずなのだが…何を血迷ったのか、これまた金色で塗りたくられており…更には白薔薇だろうか?
それも金に塗られていて、流石に僕は目が痛くなり始め、眼鏡を外して目頭を押さえた。
「…アオ、大丈夫?」
「うん…目が痛くなっただけだから…心配しないで、ユエ」
ユエが心配そうな声を上げ、僕の腕に触れる。
眼鏡を掛け直し、彼女へ安心させるように微笑んだ。
ベルナール卿は、金色が好みのようだ。
それか、権威を示すためにこうしたのか。
どちらにしろ、これは父様に報告しなきゃいけない案件じゃないか。
ベルナール領からの納税は変わっていなかったので、自分達の貯金を切り崩したか、もしくは民に重税を課して贅沢をしているか、のどちらかだろう。
面倒くさい…ふざけんなよ、あのおっさん。
前ベルナール卿の方が、まだ良識あったんだけど?
馬鹿じゃねぇの?
そんなんだから、母様に見向きもされねぇんだよ。
まぁ、母様は父様一筋だから可能性はゼロなのだが。
「はぁ…」
心の中で罵倒した後、ため息をついてしまう。
それも仕方ない事だと許して欲しい。
「心中お察しするぜ、兄貴。ってか、これ前から?」
「そんなわけないだろ。前ベルナール卿が統治してた時に何回か来た事はあったけど、ここまで酷くはなかった。むしろ落ち着いた雰囲気がある屋敷で、好感が持てるような感じだった…んだけど…」
見れば見るほど酷い。
前ベルナール卿である、カルデラ・クンツァイト・ベルナールも、多分息子の凶行を止めはしたんだろうが…あの我の強い男の事だ。
絶対聞き入れはしなかったんだろう。
「今の代でこうなったってか? うわ、前ベルナール卿可哀想に…」
「全くだよ…父様に処刑されてしまえ…」
後半は小声で言ったのだが、シャナが僕の肩に手を置いて、首を振ってきた。
「グンジョウ、心の声が漏れてる。それに、その判断をするのは父様でしょ?」
「…ごめん、気を付ける」
ここまで車で送ってくれたクロノスが、窓を開けて僕に言ってくる。
「…殿下…陛下に、ご報告…しておきましょうか?」
「良い。ここの事は、報告書を渡すついでに言っておく。余計な気を回させてすまない、クロノス」
ベルナールについて言うのが嫌だろうと、彼女は気を遣ってくれたのだが、僕は少し笑みながらその提案を断った。
ご武運を、とクロノスは言い、窓を閉めて車を発進させ走り去っていく。
次に彼女が迎えに来るのは、明日の夕方くらいだったか。
門番も鎧が金色で、僕はシャナを見た。
「シャナ、髪色変えられない?」
「金髪だから見るの嫌になってきたって? いや、分からなくもないけどさぁ…」
シャナは僕に呆れた目を向け、自分の髪に触れる。
みるみるその色が蒼に染まっていき、僕やシンクと同じ色になった。
「いや、待てシャナ。その色で女だと、お前ベルナール卿から求婚されんじゃねぇ? 母様そっくりだし」
途端シンクからストップが入り、それを聞いたシャナがとても嫌そうに顔を歪める。
いや、むしろ染めんの嫌だって断れば良いのに…うちの姉優しい。
弟のお願い聞いてくれる姉君、好き。
帰ったら何か好物でも奢ろう。
「うわ、やだ。えー…じゃあ、前のシンクと一緒で良いか…」
そう言うと、シャナの髪が紅に染まる。
ツルギが少し驚いて姉を見ていた。
「どうしたの、ツルギ」
「あ、いえ…魔法って、便利だなぁ…と、思いまして。俺がいた日本だと、こうやって髪を染めるって一瞬で出来なくて…」
髪染めた事あるんだろうか、ツルギは?
とてもそうは見えないんだけど。
「シンク、日本だと髪染めるってどうやんの?」
「あ? お前そこの記憶…いや、硬派な夕陽君はした事ないんでしたっけね。まぁ、シャナみたいに髪色入れるってやるんなら、赤の染色を髪に入れりゃあ良いんだけどよ。それだと色落ちすげぇらしいんだわ。だから一回ブリーチってやつやって、髪を脱色して色を入れるか、もしくは美容院で取り扱ってるカラー専用の整髪剤使って色を維持するか、らしい」
らしい、ってお前も髪染めた事ないんじゃないか。
又聞き感凄いぞ。
ちなみに、作者も一回だけしか髪染めてません
しかも美容院で色入りにくいと言われ
8時間座りっぱなしだったのは
良い思い出です