my way of life   作:桜舞

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217話『篠原の侍従たるもの』

僕は少しため息をついて、身体強化をしシンクを担ぎ上げた。

 

「おまっ?!」

「大人しくしていろ。落ち着いたら降ろす。ユタカに見られたくないのなら、早々に回復して欲しいんだが。わかったな、シンク」

 

ちっ、と舌打ちしながらシンクは大人しく僕に運ばれる。

その状態で他の客室も見て回っていたのだが、ある一室だけ鍵がかかっている感覚がした。

ドアノブを回しても開かないのだ。

場所は客室エリアの一番奥。

この部屋に通されるのだとしたら、僕達みたいなベルナール卿より立場が上の者だろうが…。

 

「今僕達以外に、この屋敷を訪れている者はいたか? シンク」

「いや、いないはずだ。そこの予定は確認している。なんで鍵かかってんだ? 降ろせグンジョウ」

 

僕は言われた通り、シンクを床に降ろす。

弟は僕と同じようにドアノブを回し、ガチャガチャと音を鳴らした。

 

「いや、マジで鍵かかってんじゃん。部屋の中に人の気配はねぇし…どうするよ、グンジョウ?」

「どうもこうも、鍵借りて開けるしかなくないか? 王家から家宅捜索するって通達が来てるのに、鍵をかけておくなんて…やましい事があるって言っているようなものだろ?」

 

だよな、とシンクは鍵穴を見る。

少し唸った後、ポケットからおもむろにヘアピンを取り出した。

 

「…何でそんなもん持ってんだよ、お前…」

「あ? ユタカの髪セットする時に必要だろ?」

 

やってあげてんのか、お前…。

 

確かに、最近ユタカの髪型が可愛いものになってきてるな、とは見てたけど。

ユエがやってあげてるものだとばかり思っていた。

 

逆にユエは、ポニーテール一択だ。

 

前は下ろしていたけど、それで髪を切られた事があるせいなのだろうか?

掴まれたらすぐわかるように?

切られるなら一思いに、とか?

単に鬱陶しいからとか?

 

疑問が頭をよぎるが、まぁ彼女に似合う髪型ならどれも可愛いとは思う。

今度デートする際、髪型指定してみようかな。

服は僕からプレゼントするにしても。

着飾ったユエ、可愛いだろうなぁ…。

 

「手先器用だな、シンク…」

「お前だって出来るだろうよ。好きな女の髪いじるの楽しいぞ。シャナで練習させて貰えば? 二つ返事で練習台になってくれたし」

 

いつの間に。

そんな暇あったか?

…いや、シンクの事だ。

時とか止めて、その中でシャナに練習させて貰っていたのだろうか。

憶測ではあるけど、母様達と同じ事出来そうだしな、こいつ。

 

シンクはヘアピンを曲げたりして加工した後、鍵穴にそれを突っ込んだ。

 

「何やってんの」

「鍵開け。最近カヅキおばさんとこで覚えた。ベルナール卿も不用心だよな。こんな旧式の鍵、鍵なくたって開けようと思えば開けられるってのに。それか、魔法式の鍵。あれも暗号化されてはいるけど、解除コードなんてその手の魔法流せば一発でわかるしよ。これがディンプルキーじゃなくてマジ良かったわ。あれなら俺お手上げだもん」

 

鍵開け出来る時点で、お手上げも何もないだろうに。

あと、何でそんな技術持ってるんですか、おばさん…。

あれですか、篠原の侍従たるものそれくらい出来なくてどうします、とか言ってお祖母様に仕込まれたんですか…?

それ、うちの弟に教えてどうするんですか…。

 

何とも頭を抱えたくはなったが、今は目を瞑ろう。

ガチリ、と音が鳴り、シンクはヘアピンを鍵穴から引っこ抜いた。

 

「開いたぞ」

「うわー…うちの弟が詐欺師な上、泥棒の技術まで確立しちゃったぞー…」

 

何阿呆な事言ってんだ、と僕の肩を強めに叩き、シンクは扉を開ける。

程なくして閉めたが。

 

「なぁ、グンジョウ…俺もう帰りたい…」

「…アレより強烈なのがあったのかよ…僕だって帰りたい…ユエ達連れてくるか…?」

 

こんな部屋見せられるかよ、とシンクは言う。

僕も同意見ではあるが。

ちょっとここの部屋の捜索、僕ら二人だと精神的にきつい気がする。

 

「せめてシャナがいてくれたらなぁ…」

「そうだ、シャナ呼ぼう。死なば諸共だ」

 

言い方を考えろ、シンク。

 

姉を巻き込むのは非常に心苦しいのだが…やっぱり、こんな時頼りになるのはシャナ以外いない。

 

シンクが呼んでくれたのか、すぐさまシャナはツルギと共に転移してきてくれた。

 

「何、どうしたの? 男二人して、シャナいないと無理って。何事? グンジョウはともかく、シンクも無理って言ってくるって…」

「この部屋の中見て、シャナ…」

 

僕が指差した方向にあった扉を開けたシャナは、すぐさま閉め、僕らに何とも言えないような顔を向けてくる。

 

「何この部屋…」

「多分、ベルナール卿の趣味の部屋だと思う…。僕らが言った意味わかった?」

 

シャナはため息を吐きつつ、僕とシンクの頭を撫でてきた。

精神的にやられた僕らを慰めてくれているのだろう。

うちの姉優しい。

 

「シャナ…一体この部屋、何があるんだ?」

「見ればわかる」

 

そう一言だけ言ったシャナに、ツルギは首を傾げながらも扉をそっと開き、無言で閉めた。

僕らの心情がわかってくれたのか、彼は複雑そうな顔を向けてくる。

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