my way of life   作:桜舞

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221話『シャルロッテ』

「ベルナール老は関係なさそうだね。譲った後の日付から始まってるし。他の培養槽にも色んなモノが入ってたみたい。母様だけじゃない…あのジジイ、魔王の研究もしてる。グンジョウ」

 

シャナが真剣な目をこちらに向ける。

僕はそれへ、一つ頷いた。

 

「緊急事態だ。シャナ、それらを持って王宮へ。父様に判断を仰いでくれ。シンク、ユエにそのままベルナール卿の拘束を続けるよう通達。ユタカにも、周辺に異変があったら僕へすぐ知らせるように言ってくれ。ツルギ、悪いがシンクと共に宝物庫方面へ行ってくれないか。一応、僕らは遺物探しの為にここへ来た。その目的は達成されなければならない」

 

シャナに書類等を渡し、城へ転移してもらう。

ツルギも頷いた後、シンクを見た。

一切動こうとしない弟に、僕は少し首を傾げる。

 

「どうした、シンク」

「いや…お前はどうすんの?」

 

弟の問いかけに、僕はノワールを呼び出した。

それを振りかぶって、培養槽へ投げる。

魔武器の扱いとしては最低級だろうとは思ったが、割るならこれしか思いつかなかった。

 

バリンと培養槽に罅が入り、中の水圧で亀裂が大きくなった後、シャルロッテごと液体が外に飛び出してくる。

僕らの足元を濡らしたがそれを気にする事なく、僕はシャルロッテに近づいた。

 

「おま…やる事大胆だな…」

「良いから指示通りに動け、シンク。あるわけないとは思うが、この機に乗じてテレジアにベルナールの家宝を持って行かれたら、目も当てられん」

 

言いながらチラリとシンクを見る。

僕は更に言葉を重ねた。

 

「魔王の手先かどうかはこの際どちらでも良いが、これは重罪である。王妃殿下の許可なく、そのクローンを作ったベルナール卿も、魔王がどういう存在であるかを理解した上で、国に報告もあげず秘密裏に研究していたテレジア卿も。どちらも処刑対象だ。理解出来るな、シンク?」

 

そう言うと、弟は僕に一礼してくる。

 

「申し訳ありません、兄君。愚鈍な弟をお許し下さい。お言葉通りに行動致します。ツルギ、悪い待たせた。行くぞ」

 

ツルギを伴い、シンクは上階へ向かっていった。

ケホ、と咳をする声が聞こえ、次いで水を吐く音が聞こえる。

培養槽を満たしていた液体を吐いたのだろう、と推測出来た。

 

僕は着ていたジャケットを脱いで彼女にかける。

上体を起こしたシャルロッテは、不思議そうに僕を見上げた。

 

「こんにちは、初めましてシャルロッテ。僕はグンジョウ。僕が言ってる事がわかるかい?」

 

問いかけると、彼女は頷く。

怯えた様子も無い事から、一応意思疎通が出来るくらいには知能が発達しているらしい。

人間、わけがわからない場所にいたり、意思疎通が出来ないと怯えるらしいから。

 

「自分の状況は理解出来ている?」

 

コクリ、とシャルロッテはまた頷く。

今まで声を出さずにいたから喋れない、もしくは培養液等が入り込んでいてうまく話せないのか?

 

僕は、次の質問を彼女に投げる。

 

「シャルロッテ、君…言語は喋れる?」

 

それに初めて、彼女は首を横に振った。

まさか、と嫌な想像が頭をよぎる。

 

「…話せる?」

 

シャルロッテはもう一度首を横に振り、少し頭をのけぞらせた。

彼女の首には、横一文字に傷痕が走っている。

喉の辺りの傷で、明らかにそこを潰したか声帯を取ったかのような、そんな傷だった。

 

「なんて事を…」

 

やったのはベルナール卿ではなく、テレジア卿だろう。

母様の代わりに愛でようとしていた彼女に、ベルナール卿が傷をつけるとは思えない。

話されるとまずい事が起きるとでも思ったのか。

シャルロッテの存在自体、まずい事だろうに。

 

嫌な想像が当たってしまい、僕はギリッ、と歯を食いしばる。

そんな僕を見て、シャルロッテは僕に向けて手を伸ばしてきた。

その手を取ると、頭の中に声が聞こえてくる。

 

〈こんにちは、初めましてグンジョウさん。シャルロッテと言います。聞こえていますか?〉

〈聞こえているよ、シャルロッテ。君はどうして念話が使えるのかな?〉

 

僕の問いに、シャルロッテは首を傾げた。

 

〈わかりません。喋れない代わりに、そちらの方が発達したのかもしれません。声帯を取られたのは3年前でしたが、痛くなかったのでまぁいいかと思っていました〉

 

彼女の声は母様より少し高めである。

だが声質的に一緒なので、やはり母様のクローンなのだなと思った。

 

〈自分が、この国の王妃のクローンだって事は知っている?〉

〈はい、知っています。レフさんとグレゴワールさんが、そう話していたのは聞こえていましたし…それにグレゴワールさん、仰っていました。『愛しい僕のシャルロットさん、貴女が僕に振り向いてくれないのなら、代わりにこの子を愛するとしようじゃありませんか』って〉

 

あのおっさん、諦めるって事を知らねぇのか…?!

だから母様からも敬遠されるし、父様やカヅキおばさんがキレるんだろうが…!!

 

それに、レフという名前…。

レフ・スフェーン・テレジアがここに来ていたのは、やはり確定だろう。

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