my way of life   作:桜舞

222 / 408
222話『小さい子の味方』

「アオ、いる?」

 

階段を誰かが降りてくる音がし、次いで声がかけられた。

僕はそちらの方を見つつ、降りてきた彼女に尋ねる。

 

「ユエ、どうした。ベルナール卿の拘束を、と言っていたはずだが?」

「シャナちゃんが城へ報告に行ったでしょ? 今、陛下やママが直々に騎士団を連れて、ここに来たの。私は兵にベルナール卿を引き渡して此方に来たんだけど…」

 

早すぎる。

兵を動かすにしても、時間がかかるはずなのに…。

 

ふと、僕は一つの結論に辿り着き、ユエに尋ねた。

 

「…もしかして…母様、寝込んだんじゃないのか…?」

「…陛下達と一緒に、シャナちゃんも戻ってきたんだけど…私達がここへ来た直後くらいに、陛下達にそれを告げて倒れたって…。だから、騎士団を動かすのも早かったみたい」

 

やっぱり…。

倒れたのは躯体の方だろうけど、母様の精神的なショックで、操る事も出来なくなったんだろうな、と察せる。

星読みのスキルは、良くも悪くも母様の精神的な負担になっているのだろう。

 

僕らをキョトンと見ていたシャルロッテが、ユエに手を伸ばす。

彼女はそれに気付いて、その手を取った。

 

ユエがうんうん頷いている事から、彼女はシャルロッテと会話をしているのだろう。

僕はそっとシャルロッテから手を離し、背後に現れた気配に声をかける。

 

「お疲れ様です、カヅキおばさん。陛下のご判断はなんと?」

 

影から現れたカヅキおばさんは、少し睨むように僕を見た。

 

「…ナズナも甘いな。ナツキのクローンを殺すわけにはいかない、だがこちらで保護も出来ない。お前の判断に任す、とさ。ナツキがショックで倒れたからな、心配でまともな判断が出来ないんだろう」

「そうですか…」

 

さて、どうしようか。

父様がシャルロッテを殺すなと言っていたという。

だが、こちらで保護も出来ないとも言っていたと。

この提案を断られたら、出来る手など限られてくる。

まぁ、カヅキおばさんは小さい子の味方だから、僕の提案を断るなんてしないだろう、とは思うのだけど。

 

「…カヅキおばさん、葵さんの所で保護は出来ませんか? シャルロッテはまだ幼い。あそこなら、ツェリ同様暴走した所で抑え込める人材がいる。代価は…父様に請求して下さい」

「言うようになったな、グンジョウ。責任逃れか?」

 

くっくっ、とカヅキおばさんは笑う。

僕はそれに肩を竦めた。

 

「父様は僕に判断を委ねる、と言っただけで、責任まで持て、とは言ってませんので。僕はそう判断を下しました。立花卿、どうでしょうか?」

「…良い性格になったな、お前。良いだろう、葵には私から話をしておいてやる」

 

おばさんは指を鳴らし、シャルロッテに服を着せる。

ついでに濡れていた床も綺麗にしたようで、乾いた状態になった。

 

おばさんはシャルロッテの側に行き、身を屈めた後ニヤリと笑いかける。

普段なら、その顔を見た幼い子は泣き出すのだが…シャルロッテはニコリと笑い返した。

 

流石母様のクローン。

カヅキおばさんに対して怖がるという事がないらしい。

 

「あいつの心の整理がつけられたら、会わせてやるよ」

 

シャルロッテと話していたようで、おばさんはそう言いつつ彼女を抱き上げた。

僕とユエへ、顎を階段の方に一回傾け、上がれと指示してくる。

 

あの部屋もう一度見るのか、嫌だなぁ…。

 

僕とユエが先頭になって階上へ戻ると、そこには何もなかった。

いや、ガラスケースなどは置かれていたが、そこにあったベルナール卿のコレクションが全てなくなっている。

あの大きな母様の肖像画もだ。

 

え、と唖然としていたら、ユエが耳打ちしてくる。

 

「陛下が重罪の証拠だからって、全部押収していったよ。後は兵を少し残してベルナール家の使用人とかにも事情聞いてあるから、それまとめて持ってこいって言伝預かってる」

「あ、そう…」

 

上でそんな作業してたのか…全く気付かなかった。

あの施設、防音機能も兼ね備えてるのか。

 

早く行け、と後ろからカヅキおばさんからせっつかれたので、僕とユエは階段前から退いた。

おばさんがシャルロッテを抱えて上がって来た直後、指を一回鳴らす。

途端、地下施設が黒煙を上げて燃え始めた。

 

「ちょっと、おばさん?!」

「証拠はあらかた持って帰ってきてるだろ。あと、ここの押収品も含めてな。グレゴワール、あいつは極刑だ。あとはテレジアも捕まえねばならん。あぁ、クソ…面倒事が山積みだ…!!」

 

本当に面倒だと、その顔が物語っている。

ユエはそれを見つつ、首を傾げた。

 

「でも、当主がいなくなるって…家お取り潰しになるんじゃないの? ママ」

「私達みたいに称号化でもするんだろうよ。そんなもん知らん、気になるならナズナに聞け。私はシャルロッテを葵に預けてくる……ベルナール老には少し世話になっただけに、この結果は残念だと私は思うよ」

 

そう言って自身の影を広げ、おばさんは影渡りをしたようでその場から消える。

ユエがおばさんがいた所から僕に顔を向けてきたので、彼女の疑問に答える事にした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。