my way of life   作:桜舞

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224話『完璧荷物じゃん』

「年代物の杖なはずなのに、こんなとこに埋もれてたのか…杜撰すぎねぇ?」

「前はちゃんと管理されてたと思うけど。まぁ、杖もこんなとこに放り出されてたら、嫌になって魔力も抜け落ちるだろうね」

 

ケタケタと笑うシャナだったが、うん? と背後を振り返った瞬間、影が大きく伸びて姉に何かが覆い被さる。

 

「ふにゃ?!」

「シャナ!!」

 

それでバランスを崩した姉が、更にコインを踏んで倒れそうになった。

ツルギが咄嗟にシャナを抱き止めて、事なきを得たが。

 

「え? 何これ?」

「あ、僕のジャケットだ」

 

自分に覆い被さったものを取ってシャナは首を傾げるが、それはシャルロッテに渡したままだった僕のジャケットで。

多分カヅキおばさんが、シャルロッテにいらなくなったからと、影渡りで投げてきたのだろう。

なんで僕じゃなくて、シャナの座標なのかは分からないが。

 

シャナは僕にジャケットを投げて寄越してきたので、それを受け止めユエを降ろす。

 

「…もっとしてたかった」

「城に帰ったらしてあげるから」

 

ジャケットを羽織っているとユエがポツリと呟いたので、苦笑しながら彼女の頭を撫でた。

まぁ、これで当初の目的は達成されたわけだが、僕にはまだ仕事が残っている。

 

「じゃあ、ここで解散って事で」

「グンジョウはどうすんの?」

 

シャナが問いかけてくるので、僕はため息を吐きつつ父様からの仕事があるからと、姉に話した。

 

「でもさ、それ今日じゃなきゃダメなわけ? もう日が暮れかけてるんだけど」

 

窓の外を見ると確かにシャナの言う通りなのだが、父様…陛下からの仕事である。

今日はもう遅いから明日にしなさい、なんて誰が許すというのか。

 

「だから、シャナ達は先に戻ってて良いって…」

「はいはい、うだうだ言わない。シンク、グンジョウに拘束魔法。ツルギ君は拘束された後のグンジョウ持ってきて。こんだけ豪勢な家なんだから、ホテルもどれだけ豪華なとこなんだろうね? ユエちゃんユタカちゃん、楽しみだねぇ」

 

シャナが二人の手を引き、部屋の外に出ていった。

シンクがすかさず僕に拘束魔法を撃つが、それを僕は避ける。

足場が悪いのが難点ではあるが、避けられないわけじゃない。

 

「ちょこまか動くんじゃねぇよ!! シャナの言う通りにしやがれアホ!!」

「なんで言う事聞かなきゃいけないのかなぁ?! 仕事だっつってんだろボケ!!」

 

流れ弾に当たりたくなかったのか、ツルギは部屋の外に避難している。

しかし、自分同士だからどう動くかの予想が立てられて、裏の読み合いみたいな心理戦も始まり、お互いに疲労が見え始めた頃。

シャナと共にホテルに行っていたであろうユエが、顔を出した。

 

服も着替えたようで、黒一色だったスタイリッシュな服装から、部屋着なのだろうか。

ゆるふわ系のワンピースに、彼女は着替えていた。

髪も下ろしていて、とても可愛い。

 

「…アオ、寂しいんだけど…」

 

その一言で、僕は陥落する。

姉の言う事には反発するが、愛しい恋人のお願いをどうして無碍に出来ようか。

 

「……ユエが言えばよかったんじゃねぇ、これ? 俺魔法使う必要あったか…?」

 

肩で息をしながら、シンクが地を這うような声で呟いた。

ようやく僕を拘束出来たので、ツルギも役目を果たす為に捕まっている僕を抱え上げる。

 

そのままの状態で、ベルナール領にあるホテルに連れて行かれた。

奇異の目が集まったが、僕はそれを体をぐったりさせる事で何とか回避する。

ツルギは何とも思っていないようで、取っていた部屋へ僕を持って行った。

 

「あ、お帰りー」

 

テレビをユタカと見ていたシャナだったが、僕の状態を見て爆笑する。

僕を肩に担ぎ上げた細身のツルギという図なもので、姉にとっては面白いものなのだろう。

 

「グンジョウ、完璧荷物じゃん! ウケる!!」

「言ってろ馬鹿姉」

 

ツルギがゆっくりと僕をソファーに降ろしてくれた。

一緒に着いてきてたシンクが、拘束魔法を解く。

僕はため息をついて、ソファーの背もたれに頭を乗せた。

 

「まったく…」

「文句言われる筋合いないからね、グンジョウ。あのままあそこにいたら、使用人達の迷惑になってたし。連れて行かれたのはベルナール卿だけだから。それに、父様も卿の事情聴取とかあるからすぐじゃなくて良いって、絶対言うはずだよ?」

 

シャナが笑うのをやめ、そう言ってくる。

僕はシャナにごめんと謝った。

今回は、さっさと終わらせようと思って周りが見えていなかった、僕が悪い。

 

「ユエ、陛下はあれ以上何か言ってた?」

 

僕は少し首をのけぞらせ、部屋の鍵を閉めてきたであろうユエに尋ねる。

僕らの後ろを着いてきてたから、少しだけこちらに来るのが遅れたようだ。

うーん、と彼女は少し首を傾げながら唸り、何か思い出したのかポンと手を叩いた。

 

「兵を残して事情聞いてるから、まとめて持ってこいって話だよね? えっと、あの後ー…『うちの息子が迷惑をかけてすまないな。呆れず、離れないでいてくれて感謝する。グンジョウは真面目が故に、お前に苦労をかけるが宜しく頼む』だったかな」

 

僕は自分の顔を覆う。

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