my way of life   作:桜舞

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226話『本当に僕が好きなんだね』

これが次期王としての責務であるのは、重々承知してはいるのだが…。

 

「人が殺される所なんて…出来れば見たくないんだよなぁ…」

 

湯船の縁に頭を乗せ、目を閉じた。

 

一度、僕はその瞬間を見ている。

シャナの記憶を覗いた時…前世の母様が死んだ、その時だ。

 

あの時は、現実味を帯びてはいなかった。

シャナの魂の記憶だと、理解していたからかもしれない。

自分事では無いと、現実逃避をしていたからかもしれない。

 

それでも、率先して見たい事ではなかった。

頭では、理解している事だとしてもだ。

 

「はぁ…」

 

僕はまた、ため息を吐く。

そんな時、カタン、と浴室の外で音が鳴った。

目を開けて、僕はそちらを見る。

見知ったシルエットが見え、少し苦笑した。

 

「ユエ、どうしたの?」

「…あ…その…」

 

声が少し震えている。

いつからいたのか気が付かなかったが、僕の独白を聞いていたらしい。

僕は彼女に声をかけた。

 

「もしかして泣いてるの、ユエ?」

「…っ、泣いて、ない…っ!!」

 

シルエットが何かを拭くように動く。

本当に意地っ張りだな、ユエは。

強情だし、負けず嫌いだし、意地っ張りだし。

そういう所が羨ましいし、愛おしいとも思う。

僕の妃になってくれる人は、僕にないものを持っている。

それには、本当に助けられていて。

 

自分の責務の為に泣けない僕に代わって、泣いてくれる優しい人。

 

「ユエ、おいで」

 

そう声をかけると、ユエが浴室の扉を開ける。

泣いてないと言ってはいたが、未だに止まる事ない涙がその頬を濡らしていた。

 

ユエはペタペタと歩いてきて、浴槽の脇に座る。

僕は少し微笑みながら、彼女の涙を拭った。

 

「泣かなくていいよ、ユエ。ありがとう。僕の代わりに泣いてくれて。大丈夫、これは王太子の責務だから。耐えてみせるよ」

「アオ、が…傷付くのが、

私は、一番…嫌なの…っ!! その人の、人生を奪ったって…アオが、苦しむの…見たく、ない…っ!! お願い…その時が来たら…私も、呼んで…っ! 

私も、背負うから…

アオだけに、背負わせないから…っ!!」

 

嗚咽を漏らしながら、ユエはそう言う。

僕は嬉しくなって、彼女にキスをした。

段々深くしていくと、やはりユエからストップが入る。

まだ慣れないらしい。

 

「アオ…」

「…ユエ、ごめん。部屋に行ってくれる? ちょっと逆上せそうでさ」

 

そうお願いすると彼女はコクリと頷き、立ち上がって浴室から出て行った。

彼女の心遣いは、嬉しかったのだが。

あれ以上キスをしていたら、理性のタガが外れそうで危なかった。

 

ユエが止めてくれて助かった…。

僕が裸だったのも、一因ではあるが。

 

今が高等部2年生。

うちの両親とカヅキおばさん達が認めてくれるのなら、来年には婚姻可能年齢にはなる。

まぁ、早くて来年のシルフ1の月、遅くても3の月の高等部卒業後にはユエと結婚出来るのだ。

 

まだ我慢だ、僕。

 

少し深呼吸をして、浴槽から出る。

体をバスタオルで拭いて、代えの衣服を着てから部屋に戻った。

 

「ユエ?」

 

ベッドに横になっていた彼女の名を呼ぶが、規則正しい寝息が聞こえてきて、僕は苦笑する。

せめてベッドの中に入っていれば良かったのに、彼女は掛け布団もかけず、そのまま眠ってしまったようだ。

 

入る前に景色が凄かったから眼鏡つけたままで入ったんだよな…。

ユエのパジャマ可愛い。

 

モコモコのパジャマでフードに猫耳が付いているそれは青色で、僕は微笑した。

 

彼女を少し抱き上げてベッドの掛け布団を捲ると、ユエがちょっとだけぐずって、僕の首に腕を回してくる。

 

「アオ…好き…」

 

寝言なのだろうが、夢の中でも僕と一緒にいるのかと知って、声を出さずに笑った。

 

「本当に僕が好きなんだね、ユエ。僕も、君が大好きだよ」

 

ベッドに彼女を降ろし、腕を外した後掛け布団を掛けてあげる。

ふにゃ、と何とも可愛らしい寝顔になったユエの頬にキスを落とし、部屋の電気を消した。

 

カーテンから月光が差し込んでいて、電気を消したにも関わらず部屋の中が明るい。

このままではユエが起きてしまうと、僕は彼女側のカーテンを引いた。

もう片方は開けたままだが。

 

風呂から上がった直後だからだろうが、目が冴えてしまって眠れそうにもない。

僕は収納魔法から、本を一冊取り出して読み始める。

月光が太陽みたいに明るくて、文字を読むのも苦ではなかったから。

 

本を読み始めてから暫く経った頃、ん、という声とベッドの方で衣擦れの音が聞こえ、僕はそちらに目を向ける。

 

「アオ…何処…?」

 

僕が隣で寝ていない事に気付いて、ユエは自分が寝ているのとは反対方向の場所を触っているようだ。

そして唐突に起き上がり、辺りを見渡し始める。

 

窓際で本を読んでいた僕と目が合った彼女は、安堵の表情を浮かべた。

 

「そこに、いたんだ…良かった…」

「…怖い夢でも見たのかい、ユエ?」

 

僕は窓際に本を置いて立ち上がり、彼女の横に座る。

ユエは僕に抱きついてきて、コクリと頷いた。

 

「…桃華に、アオが連れて行かれる夢…見た。はは…まだ、あの時の事…引きずっているみたいで…嫌だなぁ…」

「ユエ…」

 

彼女が僕の服を握り締める。

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