my way of life   作:桜舞

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229話『あの世界にも魔法とかがあれば』

普通に持ち上げられるくらい軽いのだけど、一瞬よぎった記憶に僕は地面に彼女を降ろしてから、その体を抱きしめた。

 

「アオ?」

「…君の首締めた時の記憶が…本当あの時の僕、馬鹿野郎じゃない…? 君がこんなに華奢なの分かってて、喧嘩売るとか…そんで首絞めるとか…あぁ、幼等部生の時に戻りたい…記憶持ったままやり直したい…罪悪感凄い…ごめんね、ユエ…」

 

嘆いていると、ユエが苦笑しながら僕の頭を撫でてくる。

 

「私は、嫌かな。ここまでの思い出が全部なくなっちゃうのは。確かに、小さい頃からアオには愛されたかったけど…それでも、あの時があったから今があるのかな、って思うもん」

「ユエさん大人ですね…」

 

そんな事ないと彼女は言うが、僕より精神年齢が上な気がした。

ユエを見ると、少し困った顔をして笑っている。

何故? と僕は首を傾げた。

 

「アオ、雪那が死んだ年齢は?」

 

ユエが僕に向けて指を突きつけてきたので、思い出しつつその問いに答える。

 

「…確か、16だったね。今は、それより越えたけれど。それが?」

 

だからだよ、と言われるがどういう事なのだろうか。

僕は彼女から体を離し、思考する。

 

雪那が亡くなったのが16の時。

今のユエは17歳だ。

前世の記憶を思い出したと、ユエは言っていたはずだから…。

 

「…ユエの精神年齢、30越えてる?」

 

ポツリと呟いた僕の腹に、彼女は蹴りを入れてきた。

思わず蹲るが、その行動が正解だと言っているようなもので。

 

「ユエ…痛い」

「ユタカよりは若いからね?!」

 

まぁ、あっちは老衰で亡くなったって言ってたから、それはそうなんだけど。

じゃあこのメンバーの中で一番幼いの、シャナなんじゃ無いのかな…阿呆だし馬鹿だし。

 

「アオ、実の姉に対してそれは…」

「心読むなって言ってんだろ…。まぁ、良いけど。ユエの精神年齢が高かろうが、僕には関係ない事だし。だから何って話。君が大人びていようと、僕の口説き文句に狼狽えるくらいなら、まだお子ちゃまじゃないかな」

 

更にユエの踵落としが降ってきたので、僕はそれを掴んで彼女を見ながら足へキスをする。

途端、ユエの顔が真っ赤になった。

 

「ほら、動揺してんじゃん。スカートの中も見えそうだし…見せつけてる?」

「そんなわけないでしょ?! アオのエッチ!! すけべ!!」

 

スカートの裾を掴み、彼女は僕へ見えないように押さえ付けている。

その動作は可愛らしいのだが、ちょっとしたお仕置きでもしようか。

お腹蹴られて、とても痛いから。

 

「君が魅力的すぎるのが悪い。僕がそうするのが嫌だって言うんなら、別の女に目を向けても良いんだけど?」

 

僕は立ち上がりながら、そう言う。

逆に、ユエがぺたりとその場に座り込んだ。

呆然と僕を見上げている。

 

「…捨て、られる? 私…もう、傍にいちゃ、いけない…?」

 

ポロポロと涙を溢し始めたユエに、僕は苦笑して彼女の前に屈むと、頬を覆って額を合わせた。

 

「冗談。誰が他の女に目を向けるんだよ。僕の妃は君だけだって言うのに。そんな軽薄な男に見えた? 僕がそんなに器用だと? ユエ、僕と何年の付き合いなんだよ君。今世では再会してから5年、前世では10年だろ? それに、器用ならツェリの申し出受けてるんだよ。しなかったのは、そうじゃなかったからに他ならないだろ?」

 

ユエの涙を拭いながら、僕は彼女に笑いかける。

だが、彼女は驚いたように僕を見つめていた。

 

「どうかした?」

「アオ…記憶思い出したの?」

 

ん?

あぁ、前世での付き合いの話か。

まぁ驚くよね。

 

「雪那との付き合いは小学校からだったよね。あの時は可愛い女の子だな、としか思ってなかったけどね。告白してOKもらったのは中学の時だったっけ」

「…あ、うん……いつから?」

 

そう問われて、徐々にかな、と答える。

夢で見たり、今のように瞬間的に思い出したりと様々だ。

 

夕陽は硬派だったけど、ちょっと馬鹿だったらしい。

記憶容量が極端すぎる。

覚えてたり覚えてなかったりするのは、多分彼が興味がある事だけしか覚えていられなかったから、だと思う。

 

要するに、シャナ以上の阿呆の子だったのだ、彼は。

 

ユエを抱き上げ、彼女の体を片腕で支える。

勿論身体強化をしなければ、こんな芸当は出来ない。

 

よく父様が母様にやっている事で、自分の背よりも高くなった視界に驚いたユエが、僕の頭に抱きついてきた。

 

「アオ、ちょ、怖いっ!」

「高所恐怖症だったっけ、ユエ? 大丈夫、落とすようなヘマしないから」

 

僕がそう言うと、ユエは恐る恐る僕の頭から手を離し、僕の肩に手を置いて目を開けたようだ。

わぁ…という感嘆の声が聞こえる。

 

「アオの視界、こうなってるんだ…」

「それよりは高いけどね。あの世界にも魔法とかがあれば、花火大会の時もこうやって見せてあげられたのにね」

 

その言葉に、ユエが僕の方を見て微笑んだ。

 

あれは中学生の頃で、初めて付き合い始めた時の花火大会だった。

人が多すぎて、今より少しだけ背が低かった雪那は、人の合間からしか花火が見えないと嘆いていたのだ。

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