たまに、修行僧なのかというくらい薄着になったり厚着になったりと、変な事をするツルギだし、シャナはそれを良しとしていて止めないしで、ため息をついた事が何回かあるのだ。
「ちょっとそれ見せろ、ツルギ。駄目なら、僕のジャケット貸すから」
「え、あ、はい…」
結論から言えば、薄手過ぎて僕はツルギを説教する羽目になった。
懇懇と説明をして、納得はして貰ったが…多分忘れた頃にまたやるんだろうな、と予感めいたものを感じる。
「格好いいのにー」
「だからって風邪引いたら元も子もないだろ馬鹿」
ツルギは転生者とはいえ、魔力量は僕とそんなに変わらないだろう。
なら、身体能力的にも病気に罹りやすいはずだ。
大体の病気や怪我などは治癒魔法で何とかなるが、風邪などの免疫機能低下系は、魔法でどうにかなるものじゃない。
だからこそ、薬っていうものがこの世界にもあるわけだし。
魔力量が多いとそういう事はないようで、僕が生まれてこの方、母様が何かの病気に罹った所を見た事がなかった。
妹や弟を産んだ時も、産気づいて一時間もしないうちに産んでたようだし。
翌日から赤ん坊を抱きながら、仕事してたっけな母様…。
学園から帰って来たら家族が増えてた、なんて多々あったし。
本当、アンナ辺りで慣れたよね、実際。
未だに新婚気分な両親なので、後もう一人か二人くらい産まれるんじゃないかと僕は思っている。
「朝食もルームサービスにする?」
「ビュッフェいこーぜー。好きなもんたらふく食いたいー」
そう言いつつ、シンクはユタカに抱きついた。
ユタカにしなだれかかるな、お前。
自分の体格考えろよ、可哀想に。
と、僕は思い出した事を彼女に尋ねる。
「ねぇ、ユタカ? 僕の目つきとシンクの目つき、違うの?」
「へ? あ、うん。シンクはツリ目で、グンちゃんタレ目だよね?」
そう言われて、シンクは僕を見た。
なんか違うか? とその顔は物語っている。
僕もそう思ったからユタカに聞いたのに。
「ね? 言った通りでしょ? シャナちゃんもわかるよね?」
「え? うーん? あたしは魔力の差で二人を見てるからなぁ…グンジョウは基本的に魔力量低いし、魔力のオーラっていうのかな。それが薄いんだよね。逆にシンクは濃いの。だからどっちかがどっちかの格好しても分かるんだよねぇ」
ケラケラと笑いながら言う姉を凝視する。
二人と違って、シャナは感覚で僕らを見ていたらしい。
え、長年一緒にいた弟普通に分かんないの、姉君?
これ親もだったら、ちょっと悲しいかなぁ…。
僕の心を読んだらしいシャナが、母様に電話をかけやがった。
まだ寝込んでると思っていたのだが案外早く回復したようで、母様は電話に出てくれる。
母様に事情を説明したシャナは、携帯をスピーカーにした。
『何を馬鹿な事言ってるのかしら、シャナ…。ちゃんと見れば二人の違いなんて分かるでしょ。というか、なんで姉の貴女が分からないの、このお馬鹿。シンクとグンジョウの違い? グンジョウは優しい顔付きをしてるし、シンクは凛々しいのよね。グンジョウはあたし似、シンクはナズナ似なんだろうなって見ていたのだけど…あ、グンジョウ? 今日中に証言とか集めててね。クロノスが迎えに行くまでがリミットだから』
「分かってるよ、母様」
あと、娘に対して馬鹿って二回言ったよ母様。
電話の向こうで、頭痛そうにしてそうだなと思った。
「父様は?」
『…シャル、なんで俺に携帯渡してくるんだ…は? グンジョウとシンクの違い? ……そうだな…グンジョウは戦闘時の動きが機敏ではある。逆にシンクは周囲を観察して動いてはいるな…あ、違う? 私生活で? ……分からん』
そう父様が言った瞬間、ゴッ、と鈍い音がスピーカーから聞こえる。
多分、母様が父様の頭を机に叩きつけたのだろうと推察出来た。
『グンジョウ、気にしないでね。この人本当に言葉が足らないし鈍いし、相手の地雷平気で踏み抜くような人だから。ナズナ、あんまり子供達傷つけるような発言すると離婚するわよ』
『ちょ、待ってくれシャル?! 少し考えさせて欲しいのだが?!』
そこでシャナは通話を切る。
何とも言えない空気が室内に流れた。
「…ご飯、食べに行こうか…」
僕の提案に、みんな無言で頷いた。
◆◆◆
ビュッフェで朝食を食べ、荷物はそのままに僕らはもう一度ベルナール家を訪れる。
クロノスが迎えに来る前に、ホテルに寄って荷物を回収してくれるはずなので、手ぶらで来れるのはありがたい。
あと何で皆付いて来たのかといえば、さっさと終わらせて観光しようという腹づもりらしかった。
「
「うっさいな。お姉ちゃんなりに弟を労ってんでしょうが……多分、来週辺りだと思うから。ベルナール卿の処刑」
後半部分、僕に耳打ちしてきた姉に対して苦笑いをする。
シャナも同席したいと言った所で、却下されるのが分かっているからだろう。
それなら、ユエが同席すると言った所で無駄な気がした。
僕らは兵達が集めてくれた証言の紙を貰い、ベルナール卿の執務室に入る。