「グレゴワール・セレンディバイト・ベルナール。貴様は重罪を犯した。よって、死刑を言い渡す」
「陛下?! 僕は何も罪など犯しておりません!! 何かの間違いではないでしょうか?!」
無自覚か、本当にそう思ってなかったか、もしくは記憶容量がなくて覚えてないか。
どちらにしろ証拠は上がりまくっているので、彼の処刑は免れないわけだが。
「貴様、王妃であるシャルロットのクローンを作っていたらしいな? それに加えて、王妃の物を自分の欲の為に集めていたとか。それは不敬罪に値するぞ。貴様の父の功績で少し目溢しをしてやっていただけで、お前の行動を許した覚えはないと俺は再三言ったな?」
父様の言葉に、ぐっ、とベルナール卿は黙る。
確かに、母様に馴れ馴れしく近寄ってくるベルナール卿に父様が何回か注意した事はあったが、それでも聞き入れなかったのは卿の方だった。
「それと、殿下達が集めて下さった貴様の家の使用人達の証言と、帳簿の推移。どちらも酷いものだな。よくここまで杜撰な管理で領が運営出来ていたものだと、感心する。まぁ、ベルナール老や貴様の奥方が裏で奔走してたのだろうが。それに、私もあの研究施設を見たが…貴様、魔王の研究を容認していたそうだな? このリューネにおいて魔王がどういう存在か理解した上でやったのだろう?」
カヅキおばさんが、僕らが集めた証言の一覧の紙をパラパラと捲りつつ、ベルナール卿に問う。
その言葉に、ベルナール卿は反論した。
「立花卿、それは違います!! 魔王の研究をしているなど、僕は知らなかった!! それはテレジア卿に聞いてもらえれば…っ!!」
「あのジジイを捕まえようとしたが、既に屋敷はもぬけの殻でな。何処ぞにトンズラしやがった。お前の所に捜査が入ると知って、逃げたんだろうさ。国内外に指名手配はしてあるがな」
それは初耳で、僕はカヅキおばさんの方を見る。
僕の動作で、ベルナール卿は僕やシンクがいる事に気付き、縋るように声をかけてきた。
「グンジョウ君も、僕が無実なのは分かるよね?! 魔王なんて知らなかったんだ!!」
「…陛下、発言の許可を頂けますか?」
許可する、と父様が言ったので、僕はベルナール卿に声をかける。
「魔王の事を知らなかったとしても、王妃殿下のクローンはやり過ぎだと思われます。それに、卿の発言はいささか目に余りました。僕に助けを求めるなど烏滸がましい事だと、理解出来ませんでしたか卿? 王妃殿下への不敬罪に加え、更に僕らに対しての不敬も加算しても良いのですよ?」
「……何を言われた、グンジョウ」
父様の声が少し低くなった。
僕は父様に一礼してから、言葉を紡ぐ。
「僕らを未来の息子、と。あと王族に対して馴れ馴れしすぎな所も、少し不愉快でしたかね。ヴァリエール卿ならともかく、ベルナール卿と僕らは何の接点もありませんし」
未来の息子、の辺りで、父様の眉間の皺が深くなった。
あと、ヴァリエール卿は母様と同じ転生者で、カヅキおばさん同様、母様と懇意にしている男性だ。
ツルギがこの世界に初めて来た時、最初に尋ねたのがヴァリエール卿だと聞いている。
後日、カヅキおばさんの所や、母様の所にツルギの件で謝罪に来たらしい。
自分の所に留まらせておけば、2人に迷惑をかける事もなかった、と。
しかも僕らが生まれた直後、乳母はいらんと突っぱねたおかげで、育児ノイローゼになりかけていた母様のサポートをヴァリエール卿夫妻がしていた、という話を聞かされた事がある。
父様は執務で忙しく、尚且つ戦争をふっかけてきた国の応戦もしなければならず、母様のサポートに入れなかったらしい。
レヴィとルティとヴァリエール卿夫妻で、僕らの育児を助けてくれていたのだ、と母様は今でも彼らに感謝をしているのだ。
「…グンジョウ達を、未来の息子、か…」
「言葉の綾だとしても、流石に看過出来ん発言だな」
父様とカヅキおばさんの眼光が鋭くなった。
二人とも、母様の子供である僕らを慈しんでくれているのは知っている。
父様は、愛する人と自分の子供だから。
カヅキおばさんは、自分が敬愛する主の子供だから。
そんな僕らを自分の子供と言ってのけたベルナール卿に、憤怒しているのだろう。
「王妃がもし俺と離婚する事があろうと、お前となど誰が認めるか」
「陛下…貴方様と、もう子供を六人も儲けているのに、離婚などするわけありませんよ…。脅しで使う事はありますが、本気ではありませんのよ?」
母様が呆れた目で父様を見るが、父様の肩が少しだけ震え出した。
嬉し過ぎて、抱きしめたいのを我慢してるんだろうな、と察する。
だが、母様が声を出したのはマズかった。
ベルナール卿の矛先が、母様に向いたからだ。
「シャルロットさん!! 僕は罪など何も犯していません!! 僕は貴女が隣にいてくれれば、何も要らなかっただけで…っ!!」
ベルナール卿の目が、母様を欲するような意味合いの目に変わる。
それを見た母様の顔が青ざめ、その身が揺らいで倒れかけた。